いよいよ全ての企業に求められるカスハラ対策、その具体的なポイントを知ろう【今なら間に合う、現場で始めるカスハラ対策 Vol.3】
一口にカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)対策といっても、見るべきポイントや準備すべき内容は多岐に渡ります。また、業種・業界、企業やサービスの特性などによっても具体的な対策内容が異なってくる場合があります。また対策を立てるだけでなく、それをどうやって社内外に周知するのかや、実際に発生した場合にどのように対処するかなど、準備しておくべきポイントは様々です。今回は前回に続き、どんな企業にも求められるカスハラ対策について、その勘所に踏み込んでお伝えします。
自社としてのカスハラ定義、そして具体例の把握から改善や未然防止に取り組もう
まずご承知の通り、現在厚労省のホームぺージなどを参照すれば、一般的なカスハラの定義は誰でも確認することができます。加えて、自社の現場でどういったカスハラが起こっているのか、実際に過去の事例を調査したり、社員にヒアリングをすることで具体例を把握し、その内容を確認しておくべきでしょう。
これは単に実例を集めるという意味だけでなく、改めて自社でどういったカスハラが起こり得るのかということを想定しておくためにも有効です。具体的には一般的な定義だけでは判断できない、いわゆる「グレーゾーン」と呼ばれるケースが自社においてどの程度ありそうかを事前にイメージしておくことができます。
中には、比較的頻繁に起こっているにも関わらず、それが故、社員がある意味対処に慣れてしまっていたり、あるいは耐えしのいでしまっているために顕在化していないようなケースもあるかもしれません。日々顧客との接点を持つ現場に赴き、その声に耳を傾けてみてください。
ただし、カスハラが発生するそのきっかけには、自社のサービスや対応が起因であることも多いという点には注意が必要です。もちろんどんな理由であれ誹謗中傷などのカスハラ行為は許されるものではないものの、その要因には、サービスや対応の至らなさがあり得るということも、現場観察やヒアリング時に点検しておきましょう。それにより、無用なカスハラを発生させずに済む改善のヒントが得られます。
まずはカスハラの定義を知り、更に自社で想定される具体的な事例に落し込んでおくことが重要です。
社外への毅然とした意思表示、そして社内へは行動に移せるだけの実践的な教育を
もうひとつのポイントは、社外そして社内への周知と啓蒙です。自社で策定した定義や対策を内外にしっかりと認識してもらう必要があります。
企業として最も大きく打ち出すべきメッセージは、カスハラを認めず、従業員を守るという基本方針・姿勢の明確化です。最近では多くの企業が、自社のホームページなどでカスハラに関する基本方針を公表しているケースが増えているようです。また、店頭や窓口などで、顧客の目に入るところにカスハラ防止の旨のポスターなどを掲示している風景も多く見かけるようになりました。
当社のようなコールセンターであれば、ホームページやパンフレットなどで窓口の電話番号と並記してカスハラに関する注意を載せたり、オペレーターに繋がるまでのガイダンスで注意を促すなど、業種・業態によっても色々な工夫が考えられます。
そしてもうひとつが、社内、すなわち従業員への周知と浸透です。ここでは、会社としてカスハラから従業員を守ることで安心してもらうだけでなく、カスハラを受けた際の対応方針や手順などを策定しておき、それを理解し、実践できるようにしておいてもらうことが必要になります。
したがって社内・従業員への浸透は、単なる周知だけに終わることなく、対応方針やルール、手順を教育・研修するところまでが重要であり、実効性を担保するうえでも不可欠な要素になります。
企業規模を問わず重要な体制整備、対応時だけでなく事後のケアも忘れずに
最後に、体制の整備という観点についてもおさえておきましょう。特に社員数の少ない中小企業の方がは、体制整備と聞くと構えてしまうかもしれませんが、これは何も大人数の専門部隊を組成しなければならないということではありません。
ここでポイントになるのは2点。ひとつは、カスハラ発生時の二次対応や対応者の交代などのいわゆるエスカレーションの手順、もうひとつはカスハラを受けた社員の相談を受ける受け皿、この役割や担当を決めておく、という点です。
カスハラに該当する事案が発生した際、一次対応者に解決または対応終了まで任せず、上位者などに対応を交代するというのもひとつのやり方です。業態によって様々だとは思いますが、このとき「誰に・どこに」引き継ぐのかを決めておければ、一次対応者もある程度安心して業務に臨めます。
またエスカレートしたカスハラを受けてしまった場合、対応者に心理的に過度なストレスや後遺症が残ってしまうこともあり得ます。このような時にも、社内に相談窓口あるいは担当者がいることで一定の安心感を提供できます。前回コラムのQ&Aでもあったとおり、社外機関の利用も一つの方法です。
企業規模の大小に関わらず、平常時から発生時まで、企業全体でカスハラの取組み姿勢を具体化しましょう。
Q&A 企業のカスハラ対策においてよくある質問
ひとつの正解があるわけではないカスハラ対策、どの企業も悩みながら対応されています。ここではそんな企業の現場の皆さんからよくある質問について、当社のインストラクターで多くの企業へカスハラ対策の支援を行っている阿部がお答えします。
Q:「具体的にどのような研修内容が必要ですか?研修にかける時間や費用が限られている中小企業でもできることはありますか?」
A:研修の実施にも様々な選択肢がありますので、代表的なものをご紹介します。
①ワークショップ形式:洗い出した自社のカスハラ事例を共有し、「もし自分がこの状況に置かれたら、どう対応するか?」を皆で話し合う。
②ロールプレイング形式:具体的なカスハラ場面を想定し、実際に声に出して対応を練習します。例えば、「お客様が感情的になって大声を出したら、まず何を言うか」「不当な要求をされたら、どのように断るか」などです。「対応を中断するタイミング」「上司にエスカレーションする際の具体的な言葉」なども練習すると良いでしょう。
③オンライン学習ツール:短時間で学べる動画コンテンツなども活用し、全員で視聴後にディスカッションを行うだけでも、意識向上に繋がります。
さらに、最近ではAIを活用したロールプレイなどのサービスも出始めています。実際のカスハラ場面を想定した対話をAIと行うことで、現場での対応力をより実践的に高めることができます。研修は一度実施すれば終わりではありません。カスハラの形態は変化することもありますし、新しい社員も加わります。定期的な見直しと継続的な教育が、実効性のあるカスハラ対策には不可欠です。
Q:「社員数が少ない中小企業では、専門の部署を設けるのは難しいです。具体的に何をすれば良いですか?」
A:一次対応者が「もう無理だ」と感じた時に、すぐに助けを求められる担当者を決めておきましょう。(例:店長、マネージャー等)
担当者は、カスハラに関する一定の知識と対応スキルを身につけておく必要があります。併せて、エスカレーションの具体的な手順(電話、チャット、直接報告など)も決めておきましょう。
また、ワンオペ勤務などで現場に一人しかいない場合でも、迅速にフォローに入れる体制を構築することが重要です。例えば、近隣店舗や営業所、本部などへの即時連絡ルートを整備し、孤立した対応を防ぐ仕組みを作りましょう。
次回は、業種や業態の特性に応じたカスハラ対策について解説します。
※本記事に掲載されている図表は全て(株)TMJの研修テキストより抜粋しています







