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テレワーク導入のメリット・デメリットは? 助成金制度や3種類の働き方も紹介!

2019.05.23

 導入する企業が増え、注目を集めている働き方「テレワーク」。総務省の調査「平成29年通信利用動向調査」によると、テレワークという言葉を聞いたことがあると答えた回答者は、69.2%にものぼった。

 「場所にとらわれず、自由に働きたい」と考えているビジネスマンや、「テレワークを導入しようか迷っている」と考えている総務・人事担当者も多いだろう。そこで、テレワークの概要や、テレワークのメリット・デメリットなどについて紹介していく。

テレワークとは?

 テレワークとは、「ICT(情報通信技術)」を使って実現する、場所や時間にとらわれない働き方のこと。離れた場所という意味を持つ「tele」と、働くという意味を持つ「work」を合わせて作られた造語だ。

 週2〜3日ほどテレワークを許可している企業もあれば、週5日テレワークを導入している企業もあり、取り入れ方は企業それぞれだ。なかには、繁忙期は出社し、閑散期はテレワークを許可している企業も。

 総務省が実施した調査「平成29年通信利用動向調査(http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd144310.html)」によると、日本企業のテレワーク導入率は、2017年で13.9%だったことがわかった。2015年には一度16.2%まで上がったが、2013年には9.3%、2014年には11.5%だったことを考えると、テレワークを導入している企業は徐々に増えていることがわかる。

 そんなテレワーク、働く場所によって「在宅勤務(自宅利用型テレワーク)」「モバイルワーク」「サテライトオフィス勤務(施設利用型勤務)」と3つに分けられる。それでは、ひとつずつ詳しく紹介していこう。

在宅勤務(自宅利用型テレワーク)

 在宅勤務(自宅利用型テレワーク)とは、その名からわかる通り、自宅で仕事を行うテレワークのこと。会社で決めた就業ルールに則っていれば、自宅で作業を進められる働き方だ。

 一般社員が在宅勤務を利用している場合もあるが、何らかの事情でオフィスに通えなくなってしまったときに利用する場合もある。妊娠や子育て、介護、病気、ケガなど、理由はさまざま。やむを得ない事情により利用される在宅勤務は、「通勤困難型テレワーク」と呼ばれることもある。

 また、在宅勤務は、外出が少なく、オフィス内で働いている職種が導入に向いている。例えば、総務や人事、プログラマーなど。基本は自宅で作業をこなし、ミーティングが必要な場合は、テレビ電話をしたりオフィスに出向いたりしていることが多い。

モバイルワーク

 モバイルワークとは、移動しているときや顧客先にいるときなどに、パソコンやスマートフォンを使って働くテレワークのこと。カフェやコワーキングスペースでの仕事も、モバイルワークに含まれる。

 モバイルワークの導入は、外出が多い職種に向いている。例えば、営業やディレクター、広報など。打ち合わせの合間にカフェでパソコンを開いたり、打ち合わせへ向かう移動中に電車内でスマートフォンをチェックしたりしている。

 総務省が実施した調査「平成29年通信利用動向調査」を見てみると、3種類のテレワークのうち、日本企業のモバイルワーク導入率が56.4%と、もっとも多い(在宅勤務の導入率は29.9%、サテライトオフィス勤務の導入率は12.1%)。モバイルワークは、今、日本でいちばんメジャーなテレワークといえる。

サテライトオフィス勤務(施設利用型勤務)

 サテライトオフィス勤務(施設利用型勤務)とは、オフィス(本社だけでなく支社も含む)以外のワークスペースを就業場所として定めているテレワークのこと。オフィス以外のワークスペースには、サテライトオフィスやスポットオフィス、テレワークセンターなどが挙げられる。

 「オフィスへの出社義務はないけれど、自宅にインターネットなどの作業環境が整っていない」「正式なオフィスはないけれど、決まった場所に出社する必要がある」「全国にメンバーがいるが、オフィスを構えていない」、このような場合に、企業がワークスペースと契約して、仮オフィスとして作業場所を確保している。

 また、外出が多いモバイルワーク利用者が、外出先でも落ち着いて作業できるようにと、サテライトオフィスを導入する企業も。

テレワーク制度を導入するメリットについて

テレワーク制度を導入するメリットについて

 「在宅勤務(自宅利用型テレワーク)」「モバイルワーク」「サテライトオフィス勤務(施設利用型勤務)」と、3種類に分けられるテレワーク。いずれの種類にしても、テレワークを導入することで、どのような影響があるのだろうか。

 そこで、テレワークのメリットとデメリットを解説していく。

・従業員側のメリット

 テレワークを導入することで従業員が得られるメリットとして、時間を有意義に使えるようになることが挙げられる。

 オフィスに出社するとなると、どうしても往復の通勤時間を確保しなければならない。通勤に片道1時間かかるとしたら、1日2時間も潰れてしまうことになるのだ。1日2時間の自由な時間が作れたら、リラックスのためにも、自己啓発のためにも、子どもとコミュニケーションを取るためにも時間を使える。仕事が溜まっていたら、通勤に使うはずだった時間で、仕事にも打ち込める。

 また、都心に近づくにつれて、通勤ラッシュ・帰宅ラッシュの時間に電車が混んでしまう。満員電車や着席できない電車に乗ることは、精神的なストレスがかかるうえ、体力も消費することになる。そこでテレワークを導入することで、満員電車に揺られるよりも、はるかにストレスフリーで有意義な時間が過ごせるだろう。

・企業側のメリットについて

 テレワークを導入することで企業が得られるメリットとして、従業員の仕事でのパフォーマンス向上が挙げられる。

 先述した通り、テレワークを利用すれば、従業員は通勤に使うはずだった時間を自由に過ごせるのだ。体を十分に休めれば、頭も冴えて結果を出しやすくなる。自己啓発本を読んだり勉強をしたりすれば、仕事のやる気アップも期待できるだろう。

 また、テレワークは、働きやすい環境作りのひとつ。働きやすい環境が整えられれば、従業員の定着率が上がりやすくなるメリットもある。在宅勤務なら、子育て中の従業員や、ケガで外出できない従業員も働けるのだ。

テレワーク制度のデメリットについて

・従業員側のデメリットについて

 テレワークを導入することでの従業員のデメリットとして挙げられるのが、コミュニケーション量の減少と、コミュニケーションの質の低下だ。

 テレワークはオフィスに通わないため、直接顔を合わせられず、役員や従業員とのコミュニケーションの機会が少なくなる。コミュニケーションの機会が減った結果、意思疎通が取れにくくなり、仕事でミスが発生してしまうことが。また、普段取っているコミュニケーションの質が低いと、気軽な相談もしにくくなってしまう。

 そのため、顔を見ながらコミュニケーションを取る機会を増やすことが、テレワークを成功させる秘訣だと考えられる。定期的にオフィスに集まったり、テレビ電話での会議を開いたり。働きやすい環境作りだけにとらわれず、メンバー間の関係構築にも目を向けることがポイントだ。


・企業側のデメリットについて

 テレワークを導入することでの企業のデメリットとして挙げられるのが、従業員一人ひとりの状況を把握しにくいことだ。

 直接コミュニケーションを取る機会が少ないため、「今どのような案件を対応しているのか」「進めている仕事のなかでトラブルになりそうなものはあるか」など、従業員の抱えている仕事が見えにくくなってしまう。トラブルの種に気づけず、大きなクレームに発展してしまうことも。

 その日どんな業務をこなしたかを報告する「日報」や、仕事の進捗や悩みを話し合う「ミーティング」などは、テレワークを導入するのに必要不可欠だといえるだろう。

テレワークの歴史・導入推進の流れ

 日本のテレワークの歴史は、遡ること35年前。1984年に、とある企業が従業員の育児や介護をサポートするため、導入したことが始まりだった。

 その後、1991年に現在の総務省である郵政省が「日本テレワーク協会」を設立し、1997年に国家公務員の一部でテレワークを導入。

 そして、1998年にテレワークに関する大きな改革があった。労働省がテレワーク導入のためのガイドブックを作ったり、郵政省がテレワーク促進税制を導入したり。こうして、総務省(旧郵政省)を中心に、テレワークに関する取り組みが加速し、日本のテレワーク人口は増加してきた。

 現在は、政府が掲げる「働き方改革」のひとつの施策として、さらにテレワークの導入が推進されている。政府が定めた「世界最先端IT国家創造宣言」によると、「2020年までに、2012年度と比べてテレワーク導入企業を3倍に」「2020年までに、週1日以上で在宅勤務をする雇用型在宅型テレワーカーを全労働者の10%以上に」と掲げられている。

 今後も、政府が打ち出すテレワークに関する施策によって、テレワーク導入企業は増加していくだろう。

テレワーク導入企業をサポートする助成金も!

 テレワーク導入企業の増加を後押しすると考えられているのが「時間外労働等改善助成金」。テレワークを導入しようとしている中小企業事業主に対して、費用の一部をサポートする助成金だ。令和元年から新しく受付を開始した制度である。

 支給の対象となる企業は、成果目標の設定をする必要がある。その設定した目標の達成状況に応じて、助成金が支給される仕組みだ。助成額は「対象経費の合計額×補助率」。対象経費は、謝金や旅費、会議費、雑役務費などがあたる。

 目標を達成した場合、補助率は4分の3、1人当たりの上限額は20万円、1企業当たりの上限額は150万円。

 目標を達成できなかった場合、補助率は2分の1、1人当たりの上限額は10万円、1企業当たりの上限額は100万円。

 対象となる企業や詳しい条件については、厚生労働省のホームページに記載があるため、参考にしていただきたい(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/syokubaisikitelework.html)。

全国でテレワークを一斉実施する「テレワーク・デイズ」

全国でテレワークを一斉実施する「テレワーク・デイズ」

 テレワークの定着を目指す、政府が展開する働き方改革の国民運動「テレワーク・デイズ(https://teleworkdays.jp/)」。2017年からスタートしており、毎年7月24日(2020年東京オリンピックで開会式が行われる日)に実施している。

 2019年は、7月22日(月)~9月6日(金)の期間で「テレワーク・デイズ2019」を開催。2020年に行われる東京オリンピック大会前の本番テストとして、テレワークの一斉実施を推進している。

 2017年(7月24日だけで実施)の参加は、約950団体、6.3万人。2018年(7月23日から27日で実施)の参加は、1,682団体、30万人以上だった。参加する団体や人数は増えているため、2019年のテレワーク・デイズも、前年よりさらに増えることが予想される。

 テレワークを導入しようか考えているのであれば、「テレワーク・デイズ2019」に参加してみてはいかがだろうか。参加することによって、本格的に社内で導入するイメージができるはずだ。

まとめ

 今では全従業員がテレワークを実施している企業も出てきている。「働き方改革関連法案」の普及により、テレワークを導入する企業は今後更に増えていくだろう。しかし、導入するのが”善”というわけではないので、メリット・デメリットの両方をよく吟味した上で進める必要があるだろう。