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扶養控除の対象となる扶養親族とは誰のこと?わかりにくい条件を詳しく解説

2019.08.29

年末調整を行う際には、いろいろな所得控除の仕組みや条件について知っておく必要があります。控除制度の一つである扶養控除について調べようとしても、国税庁のホームページなどでは専門用語の意味がわからないということもあるかもしれません。この記事では、扶養控除の対象となる扶養親族とは具体的にどんな人のことを指すのか、用語を解説しながら具体的に説明していきます。

扶養控除とは

扶養とは税金の計算を行う際、個人のさまざまな事情に応じて金額を差し引く制度のことです。代表的な例が、所得控除です。収入を得た人はその所得に応じた所得税を納める必要がありますが、一定の条件を満たす場合は課税の対象となる所得から金額を差し引くことができます。これを所得控除といいます。扶養控除は、所得控除の一種です。扶養控除とは、納税者に子どもや老人などの扶養親族がいる場合に適用される制度で、所得税が軽減されます。この仕組みを理解していないと、必要以上に多く税金を支払うことになります。控除の対象をしっかり把握し、適切な処理を行うよう注意が必要です。

扶養親族にあたる人の条件

扶養控除の対象となる扶養親族には、次のような条件があります。配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)、都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)、市町村長から養護を委託された老人のいずれかであることが、まず条件です。納税者と生計を一にしていることも必要です。また、年間の合計所得金額が38万円以下(令和2年分以降は48万円以下)であることと、給与のみの場合は給与収入が103万円以下であることも条件になります。青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないことも条件です。そして、納税を行う年の12月31日時点で16歳以上であることも必要です。条件が細かく設定されているので、ひとつひとつの条件について内容をしっかり把握しておきましょう。

扶養控除の金額

扶養控除の金額は、扶養親族の年齢(納税を行う年の12月31日時点の年齢)や、同居しているかどうかで区分されています。まず前提として、16歳未満の子供は扶養控除対象の扶養親族とはなりません。かつては16歳未満の子供は扶養控除を受けることが可能でしたが、子ども手当が導入された結果2011年に廃止されました。一般の控除対象扶養親族(16歳以上)は38万円、特定扶養親族(19歳以上23歳未満)は63万円がそれぞれ控除される金額になります。

老人扶養親族(70歳以上)は次の2つに区分されます。同居老親等(老人扶養親族のうち、納税者またはその配偶者の直系の父母・祖父母などで、納税者またはその配偶者と普段同居している人)は58万円が控除金額です。同居老親等以外の人は48万円が控除金額となります。同居の定義についてですが、長期入院している場合は「同居」とみなされます。ただし、老人ホームへ入居している場合は「同居」とはみなされないので注意が必要です。

「6親等内の血族および3親等内の姻族」とは

ここでは扶養親族の条件「6親等内の血族および3親等内の姻族」が、具体的にどのような人のことを指すのか説明します。まず大きく血族と婚族に分けられ、それぞれ親等に分けられています。血族とは、自分の血縁の親族のことです。血族は、1親等が父母、子です。2親等は祖父母、兄弟姉妹、孫になります。3親等は曽祖父母、曽孫、伯叔父母、甥姪です。4親等は高祖父母、玄孫、伯叔祖父母、従兄弟姉妹、姪孫です。5親等は高祖父母の父母、来孫、従甥姪などで、6親等は高祖父母の祖父母、昆孫などになります。

 婚族とは、婚姻によってできた親戚のことです。いわゆる義理の家族が婚族に当たります。婚族については、1親等は配偶者の父母、子の配偶者などです。2親等は配偶者の祖父母、孫の配偶者、兄弟姉妹の配偶者などです。3親等は配偶者の曽祖父母、配偶者の伯叔父母、曽孫の配偶者などになります。

「生計を一にしている」とは

ここでは扶養親族の条件「生計を一にしている」という言葉の意味について説明します。生計を一にしているとは、家計を共にしているという意味です。納税者の収入で生活をしている、生活費を負担し合っているといった間柄であれば該当します。また、単身赴任や留学などで別居している場合でも、休暇の際に帰宅したり、仕送りをしたりしているのであれば該当します。同居している人のみが「生計を一にしている」と考えがちですが、同居だけが条件ではありません。特に、退職している親を扶養に入れ忘れるといったことがよくあります。対象となる人がいないかどうか、申請の際にしっかり確認するようにしましょう。

「青色・白色申告者の事業専従者」とは

ここでは、扶養親族の条件「青色・白色申告者の事業専従者でない」という言葉の意味について説明します。青色・白色申告者とは一言でいえば個人事業主のことです。青色申告、白色申告とはそれぞれ確定申告の種類を指します。事業専従者とは、納税者が営む事業に従事している人のことです。たとえば、自分が経営するレストランで子どもをアルバイトとして雇って給与を支払っている場合などは、その子どもは事業専従者であるため扶養親族とみなされなくなります。この場合、扶養控除を受けられなくなりますが、専従者への給与を必要経費として計上したり、事業専従者控除という別の控除を受けたりできる場合があります。受けられる控除がないか、納税者それぞれの状況に合わせた対応が重要です。

扶養控除と配偶者控除の違い

扶養控除と配偶者控除は混同しやすいので注意が必要です。妻の年収を抑えて夫の「扶養に入れる」といった言い回しがされるため、扶養控除と配偶者控除を混同してしまっている人もいるかもしれません。しかし、扶養控除は先述の通り子どもや老人などの親族を対象とするものであり、配偶者を対象とする配偶者控除とは異なります。したがって、妻を配偶者控除と扶養控除の両方の対象とするようなことはできません。なお事実婚のパートナーは法律上、配偶者でも扶養親族でもないため、扶養控除や配偶者控除の対象にはならないことも注意が必要です。配偶者控除は段階的に控除額が減っていく複雑な仕組みなので、こちらも扶養控除とあわせて内容をしっかり把握しておくことが重要になります。

年末調整における扶養控除の手続き

ここでは、年末調整で扶養控除の手続きを行う方法について説明します。事業所に勤める人は自分で確定申告を行う場合を除いて、基本的に年末調整の手続きを通して各種控除を受けることになります。年末調整を行って所得税を計算することは、確定申告と同じく納税者の義務です。扶養控除は、年末調整の際に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出することで申請します。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は控除が適用されるかどうかに関わらず、すべての従業員が提出しなければならないものです。年末調整で扶養控除の手続きを行う場合、マイナンバーの記載が必要なので対象者のマイナンバーを調べておきましょう。申告書へ記入を行う際、特に扶養親族の生年月日を間違えないよう注意が必要です。理由は先述の通り、扶養親族の年齢によって控除額が変わるためです。

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