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【2024年版】扶養控除の対象となる扶養親族とは誰のこと? わかりにくい条件を詳しく解説

2024.10.04

年末調整を行う際には、いろいろな所得控除の仕組みや条件について知っておく必要がある。控除制度の一つである扶養控除について調べようとしても、国税庁のホームページなどでは専門用語の意味がわからないということもあるだろう。この記事では、扶養控除の対象となる扶養親族とは具体的にどんな人のことを指すのか、用語を解説しながら具体的に説明していく。

目次

●扶養控除とは
●扶養控除にあたる人の条件
●扶養控除の金額
●「6親等内の血族および3親等内の姻族」とは
●「生計を一にしている」とは
●「青色・白色申告者の事業専従者」とは
●扶養控除と配偶者控除の違い
●年末調整における扶養控除の手続き

扶養控除とは

扶養控除は、所得控除の一種。所得控除とは、一定の条件を満たす場合に、課税の対象となる所得から金額を差し引くことを指す。また扶養控除は、納税者に子どもや高齢者などの扶養親族がいる場合に適用される所得控除で、所得税が軽減される仕組みだ。

社員の家族構成をきちんと把握できず、本来適用されるべき扶養控除を見落としてしまうと、必要以上に多く課税させる結果になってしまう。控除の対象をしっかり把握し、適切な処理を行うよう注意が必要だ。

扶養控除にあたる人の条件

扶養控除の対象となる扶養親族には、次のような条件がある。本記事では、条件について特にわかりにくいと思われるところを中心に解説していく。

【血族・姻族などの条件】
次のいずれかであること。

・配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)
・都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)
・市町村長から養護を委託された老人

【年齢の条件】
控除を受ける年の12月31日時点で16歳以上であること。ただし非居住者(日本に住所がなく、生活の本拠地を日本としていない人)である扶養親族については、次に掲げるいずれかに該当すること。

(1) その年12月31日現在の年齢が16歳以上30歳未満の人
(2) その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人
(3) その年12月31日現在の年齢が30歳以上70歳未満の人であって次に掲げるいずれかに該当する人
イ 留学により国内に住所および居所を有しなくなった人
ロ 障害者である人
ハ 納税者からその年において生活費または教育費に充てるための支払を38万円以上受けている人

【経済状況などの条件】
次の全てを満たすこと。

・納税者と生計を一にしていること
・年間の合計所得金額が48万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下であること)
・青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと
※参考元:No.1180 扶養控除(国税庁) / No.2875 居住者と非居住者の区分(国税庁)

扶養控除の金額

扶養控除の金額は、扶養親族の年齢(控除を受ける年の12月31日時点の年齢)や、同居しているかどうかで区分されている。区分は次の表の通り。

まず前提として、16歳未満の子供は扶養控除対象の扶養親族とはならない。かつては16歳未満の子供は扶養控除を受けることが可能だったが、子ども手当が導入された結果、2011年に廃止された(※1)。よって、一般の控除対象扶養親族(16歳以上)は38万円、特定扶養親族(19歳以上23歳未満)は63万円がそれぞれ控除される金額となる。

老人扶養親族(70歳以上)は次の2つに区分される。同居老親等(老人扶養親族のうち、納税者またはその配偶者の直系の父母・祖父母などで、納税者またはその配偶者と普段同居している人)は58万円が控除金額。同居老親等以外の人は48万円が控除金額となる。同居の定義については、長期入院している場合「同居」とみなされるが、老人ホームなどへ入居している場合は「同居」とはみなされないので注意したい。
※1 参考元:扶養控除の見直しについて(22年度改正)

「6親等内の血族および3親等内の姻族」とは

ここでは扶養親族の条件「6親等内の血族および3親等内の姻族」が、具体的にどのような人のことを指すのか説明する。

※画像元:6親等内の血族(厚生労働省)

まず大きく血族と姻族に分けられ、それぞれ親等に分けられている。血族とは、自分の血縁の親族を指す。

1親等:父母、子
2親等:祖父母、兄弟姉妹、孫
3親等:曽祖父母、曽孫、伯叔父母、甥姪
4親等:高祖父母、玄孫、伯叔祖父母、従兄弟姉妹、姪孫
5親等:高祖父母の父母、来孫、従甥姪など。6親等は高祖父母の祖父母、昆孫など

姻族とは、婚姻によってできた親戚のこと。大きくは、いわゆる義理の家族が姻族に当たる。

1親等:配偶者の父母、子の配偶者など
2親等:配偶者の祖父母、孫の配偶者、兄弟姉妹の配偶者など
3親等:配偶者の曽祖父母、配偶者の伯叔父母、曽孫の配偶者など

「生計を一にしている」とは

生計を一にしているとは、家計を共にしているということ。納税者の収入で生活をしている、生活費を負担し合っているといった間柄であれば該当する。また、単身赴任や留学などで別居している場合でも、休暇の際に帰宅したり、仕送りをしたりしているのであれば「生計を一にしている」に含まれる。

同居している人のみが「生計を一にしている」と考えがちだが、同居だけが条件ではない。特に、退職している親を扶養に入れ忘れるといったことがよくあるため、対象となる人がいないかどうか、確認するようにしたい。

「青色・白色申告者の事業専従者」とは

青色・白色申告者とは一言でいえば個人事業主のことを指す。確定申告の種類によって、青色・白色申告者と分けられている。

また事業専従者とは、納税者が営む事業に従事している人のこと。例えば、自分が経営するレストランで子どもをアルバイトとして雇って給与を支払っている場合などは、その子どもは事業専従者であるため扶養親族とみなされなくなる。

この場合、扶養控除を受けられなくなるが、専従者への給与を必要経費として計上したり、事業専従者控除という別の控除を受けたりできる場合も。受けられる控除がないか、納税者それぞれの状況に合わせた対応が重要だ。

扶養控除と配偶者控除の違い

扶養控除と配偶者控除は混同しやすいので注意が必要だ。

妻の年収を抑えて夫の「扶養に入れる」といった言い回しがされるため、扶養控除と配偶者控除を混同してしまっている人もいるかもしれない。しかし、扶養控除は先述の通り子どもや老人などの親族を対象とするものであり、配偶者を対象とする配偶者控除とは異なる。

したがって、妻を配偶者控除と扶養控除の両方の対象にはできない。なお事実婚のパートナーは法律上、配偶者でも扶養親族でもないため、扶養控除や配偶者控除の対象にはならないことも注意が必要だ。配偶者控除は段階的に控除額が減っていく複雑な仕組みなので、こちらも扶養控除とあわせて内容をしっかり把握しておきたい。
参考元:No.1191 配偶者控除(国税庁)

年末調整における扶養控除の手続き

事業所に勤める人は自分で確定申告を行う場合を除いて、基本的に年末調整の手続きを通して各種控除を受けることになる。年末調整の際に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は控除が適用されるかどうかに関わらず、全て従業員が提出しなければならない。

また年末調整で扶養控除の手続きを行う場合、マイナンバーの記載が必要なため対象者のマイナンバーを調べておこう。申告書へ記入を行う際、扶養親族の年齢によって控除額が変わるため、扶養親族の生年月日を間違えないよう注意したい。

なお、控除対象扶養親族が年の途中で亡くなってしまった場合も、死亡時点で控除要件に該当していれば、その年のぶんの扶養控除の対象となる。ただし、結婚や就職により控除要件から外れた場合は、その年の扶養控除の対象とはならない。
参考元:国税庁 令和6年分年末調整のしかた(手順などの説明)