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退職者の年末調整はどうする? 確定申告が必要なケースや退職者からの問い合わせ例と対応を紹介

2020.12.23

 その年の所得税を確定させるために企業が行う「年末調整」。12月に行うことが一般的だが、退職者に対してはどのように対応したらよいのかや、確定申告を行うケースにはどのようなものがあるのかを知りたいと考える担当者もいるのではないだろうか。

 今回は、退職者の年末調整の対応を、ケース別に紹介する。確定申告が必要な場合や、退職者からの問い合わせ例と対応も紹介しているので、対象者のケースに応じてスムーズな対応を行おう。

目次

●退職者の年末調整の対応
●確定申告が必要なケース
●退職者からの問い合わせ例と対応
●まとめ

退職者の年末調整の対応

 従業員が退職する場合の年末調整は、退職の時期や再就職の有無などによって対応が異なる。まずは年末調整の対象者と、ケース別の対応を見ていこう。

退職者は、年末調整の対象にならない
 年末調整とは、企業がその年(1月1日から12月31日まで)の給与から天引き(源泉徴収)した所得税と本来支払うべき所得税の金額を12月に計算し、従業員に還付または徴収することを指す。12月に行う年末調整の対象者が原則として「12月31日時点で在籍している者」であること、退職後に再就職予定の者はは再就職先で新たに給与を受ける可能性があることから、退職者は年末調整の対象にならない。

 よって、退職者への年末調整は基本的に不要だ。ただし、例外として次のいずれかに該当する人には年末調整を行う必要がある。

・死亡によって退職した場合
・著しい心身の不調のために退職し、再就職できないことが明確な場合
・12月に給与の支払いを受けた後に退職する場合

以下で、ケース別の対応を紹介する。

参考:国税庁「No.2665 年末調整の対象となる人」

自社を退職後に再就職し、給与を受ける見込みがある場合
 自社の退職者が別の企業に再就職し、その年中に新たに給与や報酬を受ける可能性がある場合、基本的には年末調整の対象とならず、退職者は再就職先において前の企業の給与を含めた年末調整を行う。消費税法の定めおよび再就職先での年末調整に必要となることから、企業は退職後1カ月以内に必ず源泉徴収票を交付しよう。

 ただし、退職・再就職の時期によって再就職先での年末調整が間に合わないなど、その年中に年末調整を行っていない場合は、自身で確定申告を行う必要がある。

参考:国税庁「No.2674 中途就職者の年末調整」

心身の不調や死亡により、再就職をしないことが明確な場合
 著しい心身の障害や死亡による退職で年内に再就職することがない場合は、年の途中であっても、最終給与で年末調整を行う。

 従業員が死亡により退職した場合でも、相続人が準確定申告を行う際に源泉徴収票が必要となるため忘れずに交付しよう。なお、通常の退職金は所得税の課税対象となるが、従業員が死亡した場合の退職金は相続財産とみなされるため、年末調整や源泉徴収も不要だ。

参考:国税庁「退職金と税」

12月に支給されるべき給与等の支払いを受けた後に退職する場合
 従業員が12月に支給される給与等の支払いを受けた後に退職する場合は、その年中に新たに給与を受ける見込みがないため、再就職の有無に関わらず、他の従業員と同様12月に年末調整を行おう。

 

確定申告が必要なケース

 確定申告とは、年末調整同様、その年の1月1日から12月31日までの収入を計算して納税額を確定することを指す。企業に務めていれば年末調整が行われるため基本的に確定申告の必要はないが、退職後のいくつかのケースにおいて確定申告が必要となる場合がある。それぞれのケースを紹介する。

年内に年末調整を行っていない場合
 年の途中で退職をし、以下の場合などで年内に年末調整を行っていない場合は、正確な所得税を計算するために確定申告を行わなくてはならない。

・12月31日時点で再就職をしていない
・再就職後に給与を受けたのち、再び退職をしたなど
・退職後に何らかの収入を得た
・前企業の源泉徴収票を紛失し、再就職先での年末調整に間に合わなかった

退職後フリーランスになった場合
 フリーランスで働く人は自身で確定申告を行う必要があるため、退職後フリーランスになった場合は、会社員の「給与所得」とフリーランスの「事業所得」の2つの所得の合計額を計算した上で確定申告を行う必要がある。

「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合
 従業員が「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合も、確定申告の対象だ。本来は退職金の支払いを受けるまでにこの申告書を提出することによって、通常の所得税より軽減された税率で退職金の源泉徴収が行われる。しかし、何らかの理由によって申告書が提出ができていない場合は、所得税などを多く収めているため、確定申告を行い還付してもらう必要がある。

参考:国税庁「退職金と税」

還付申告に該当するものがある
 還付申告とは、所得税などを納め過ぎている場合に、申告によって税金の還付を受けるものだ。前述の「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合や、生命保険料など年末調整を行っていない控除がある場合に行うことができる。還付申告の期限は申告の対象となる年から5年以内で、確定申告期間に限らずいつでも申告することが可能だ。

退職者からの問い合わせ例と対応

 年末調整について、退職者から問い合わせがくることもあるだろう。退職者からの問い合わせに対する対応例を紹介する。

源泉徴収票が届かない場合
 多くの企業では源泉徴収票の交付を退職後に郵送で行うが、何らかの理由によって届かないという問い合わせが来ることもあるようだ。その場合は以下の点を確認するとよいだろう。

・担当部署が退職者に対し確実に発行・郵送しているか
・退職者が転居した場合、転居先に郵送しているか
・退職者は転居したが元の住所に郵送した場合、退職者は転送届を出しているか

 また、消費税方法おいて、企業には従業員の退職後1カ月以内に源泉徴収票を交付する義務が定められているため、企業は確実に発行し、送付や受領の記録が残る方法で郵送しよう。

源泉徴収票の再交付依頼を受けた場合
 紛失してしまったなどの理由のために、源泉徴収票を再交付してほしいという場合もあるだろう。再就職先での年末調整や確定申告・還付申請では源泉徴収票の原本が必要となるため、場合によっては複数枚必要になることもあるかもしれない。源泉徴収票は再交付が可能な書類であるため、そのような問い合わせがあったら、再交付を行おう。

扶養控除等申告書の返却を求められた場合
 「扶養控除等申告書」はその年の年末調整を行うために必ず提出する必要がある書類で、年末調整よりも前に提出を促す企業もある。そのため、退職前に提出をしたが、年末調整をしていないために申告書を返却してほしいと考える退職者もいるだろう。扶養控除等申告書は企業に7年間の保存義務があるため、基本的に返却は不要だ。ただし、申告書に添付された保険控除などの証明書類と源泉徴収票は再就職先での年末調整や確定申告で必要になるため、退職者に必ず返却・交付しよう。

まとめ

 退職の理由や退職後の動きは従業員によって異なるため、退職者の年末調整の有無はケースに応じた対応が必要となる。それぞれのケースでスムーズに手続きが行えるよう、担当者は事前に面談を行うなどして、情報収集や必要書類の準備に努めよう。

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