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【2023年版】業務改善命令って何? 行政処分を受けないための対策について

2024.01.19

業務改善命令は、関係する行政から出される強制力を持った命令だ。
最近では2023年12月26日、金融庁が企業向け保険の保険料を事前に調整していた問題で、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社(本店:東京都渋谷区)、損害保険ジャパン株式会社(本店:東京都新宿区)、東京海上日動火災保険株式会社(本店:東京都千代田区)、三井住友海上火災保険株式会社(本店:東京都千代田区)という大手損害保険会社4社に業務改善命令を出したことが話題になっている。4社については独占禁止法が禁じるカルテルに触れる恐れのある不適切な取引が横行していたと指摘されているが、では業務改善命令はどのような時に、どのような内容が出されるのか。ここでは、業務改善命令の概要と対策についてみていく。

業務改善命令、大手損害保険会社4社のケースは?

金融庁が大手損害保険会社4社に対し、業務改善命令を出したことが話題だが、具体的に問題になったのは、複数の損保会社がリスクを分散して引き受ける「共同保険」をめぐる取引で、保険料の水準を、各社の担当者が事前に調整していたというもの。つまり、カルテルに触れる恐れのある不適切な取引が横行していたわけだが、金融庁では「独占禁止法に抵触すると考えられる行為および同法の趣旨に照らして不適切な行為、並びにその背景にある態勢上の問題が認められた」と指摘。

各社からの報告によれば、少なくとも1社の保険会社において不適切行為等があるとされた保険契約者が576先あった(2023年12月26日時点。1社から報告458先、2社以上から報告118先)。今後追加調査も行われる予定で、さらに増える可能性もある。

こうした結果を受け、金融庁は4社に対し、内部管理体制の不備の是正を求めている。また法令順守のための管理体制の構築や、役職員への教育体制の見直しも促すという。

業務改善命令の概要

ここで取り扱う業務改善命令は、行政から企業に向けて行われるものを取り扱う。しかし、どちらも重い処分であり、改善できなければ相応の罰が待っていることは変わらない。また、行政からの業務改善命令は行政処分の1つとして扱われる。

行政処分の分類を分けると、
 1.さまざまな許可の回復、解禁、認可、確認
 2.申請拒否(書類上の形式や審査を行ったうえで判断)
 3.禁止、命令、通知(営業停止や改善命令)
 4.権利はく奪(公務員の懲戒免職、営業許可の取り消し)

を含んでおり、場合によっては企業としての未来を失う可能性も含んでいるほど、重い罰則もある。ちなみに、行政処分を受けた場合、具体的な改善を行うとともに書類などを関係省庁などに提出しなければならない。

・企業内の業務改善命令
企業内の問題がある従業員に出すものも業務改善命令と呼ばれるものであり、こちらも行政と似たような処分を行うことがある。

例えば、企業内に業務改善命令を受けた従業員がいる場合、命令に従わなければ懲戒免職などといった処置を行うことができる。これは、企業内の規則を守るだけでなく、会社の信用や他の社員に対して悪影響を与えないためだ。

・行政処分と業務改善命令
行政処分は、管轄する行政機関が許可や免許などに基づき関係する企業に対して行うものであり、一定の強制力を持つ。

行政からの立法行為ではないと定義されているものの、業務改善命令は法令違反と同等と言えるほど罰則は重い。

そのため、企業は、その命令に従うか不服であれば取消訴訟を行うことが可能だ。

しかし、行政処分を受けるということは社会的な信用性が著しく低下することになる。さらに、行政機関も企業に対して調査を行った上で業務改善命令を行うことから、不服とする企業はほぼないといえる。

また、行政機関には、金融庁や都道府県知事、税務署長、建築主事などが含まれ、それそれが統括する事業内容について精査を行い、処分を決定する。強制処分かどうかの判断は以下の内容に沿って行う。

1.法令に基づいた処分や命令であるのかどうか
2.企業の違反行為が行政上の違反に該当したうえで取消権があるかどうか


関係法令を守ることで行政処分を避けることが可能となるものの、行政処分がどういったものか理解しておくことが非常に重要だといえるだろう。そのうえで、どういった対策を企業として行っていくのかを検討していこう。

業務改善命令(行政処分)に対する取り組み

ここでは、具体的に業務改善命令を避けるためにはどうしていけばいいのかについてみていこう。行政処分の対象は、ほぼ全ての産業であり、例外はない。そのため、社内の業務の管理と法令順守が鍵をにぎることになる。

1.管理体制の強化
コンプライアンス違反を「企業として許さない」といった強い姿勢が必要だ。管理体制を強化しつつ、業務に関する関係法令を順守しつつ業務を行っていく必要がある。また、利益をどうしても気にしてしまうものの、大企業であっても不正を隠すことはできないといえるだろう。コンプライアンスを守ることによって、企業の社会的な立場も守ることが可能だ。

2.専門の部門を作る
中小企業では、1人の人間があらゆる種類の業務を行っていることがある。例えば、総務などであっても業務に関する関係法令を調べて定期的にアップデートし書類にまとめるといった業務を行うこともあるだろう。しかし、そういった場合、専門家ではないため見落としがある可能性が非常に高い。そういった見落としが行政処分の対象になる可能性が非常に高く、営業停止や業務停止を招く可能性がある。

そのため、専門の部門がなければ部門を作ったうえで、担当者を雇う、弁護士に委託する、などの準備が必要だ。兼任も可能ではあるものの、業務不可が掛かりすぎない様、調整は必要だ。


3.規則の見直しと徹底したフォロー
コンプライアンスを遵守するためには、関係部署の設立だけではなく社内の規則や就業のルールなどあらゆるものを見直す必要がある。例えば、製品に関するデータの偽装、情報管理や顧客のデータ保護の不備、労働時間管理の不備などは行政処分の対象となる可能性が非常に高い。

そのため、就業に関するルールづくりが必要となり、そのルールも法令に基づいたものでなければならない。その上で、管理職だけでなくすべての従業員がコンプライアンス遵守を徹底するような環境が必要となる。そのため、学ぶ機会がないなどの場合はそういった機会を企業として設けていこう。

企業は利益だけではなく、法令を前提とした就業規則や業務のやり方を定める必要がある。場合によっては、新しい組織作りを行う場合と同様の時間を要する可能性もあるだろう。しかし、法令を守れなければ会社の社会的な立ち位置を守ることができず、信用は地に落ちることになる。そのため、コンプライアンスを意識した組織・体制を築いていくことが重要だ。

まとめ

業務改善命令は行政処分の一種であり、法令に基づいて関係省庁から企業に対してくだされるものだ。取消訴訟を行うこともできるものの、関係省庁は調査を重ねた上で業務改善命令を出していることから、ほとんどの企業はその命令に従うことになるだろう。

その上で行政処分を受けないためには、企業として法令を守る姿勢と管理体制を築く必要がある。内部を徹底的に管理しつつ、対策を行っていこう。