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おさえておきたい!人事・労務の基礎知識Vol.8 入社・退社手続きと個人情報扱いの注意点【必要書類一覧シートあり】

2020.08.12

 従業員の入社・退社は、年間を通して発生する可能性がある。それぞれの手続きは従業員の状況によって異なるため、必要な手続きや書類についてわかりにくいこともあるのではないだろうか。

 今回は、入社時・退社時それぞれに必要となる手続きと書類を紹介する。人事・労務担当者として情報を網羅し、スムーズな手続き・管理が行えるようにしよう。

目次

●入社時の手続き
●退社時の手続き
●個人情報の扱いについて
●まとめ

入社時の手続き

 新たに従業員が入社する際は、各種社会保険への加入手続きなどさまざまな手続きが発生する。ここでは、入社時に必要な各手続きの概要と書類について解説する。

雇用契約、労働条件の明示
 入社手続きでは、まず企業と従業員間で雇用契約が成立したことを示す「労働契約書」を取り交わすのが一般的だ。同じ書面を2部用意し、それぞれが署名・捺印を行う。

 また、労働基準法第15条と労働基準法施行規則第5条によると、企業には雇用契約の際、「労働条件通知書」によって労働条件を明示しなければならない義務がある。労働条件通知書に記載義務のある内容は以下の通りだ。

・契約期間、更新の基準
・就業場所
・業務内容
・始業時刻・終業時刻
・所定労働時間を超える労働の有無
・休憩時間・休日、休暇
・シフトやローテーションの基準
・賃金の計算方法、支払い方法・時期
・解雇・退職の基準

 雇用契約書には法律による交付義務がないため、企業によっては雇用契約書と労働条件通知書を同じ書面上にまとめている場合もある。

必要な書類など
□雇用契約書
□労働条件通知書
□印鑑

参考:「労働条件通知書の概要や雇用契約書との違いは?記載事項や運用方法も解説」
参考:「今月の人事・労務トレンドVol.5 2019年4月解禁!労働条件通知書の電子化を詳しく解説」


社会保険(健康保険・厚生年金保険)の手続き
 日本には「国民皆保険制度」があるため、「国民健康保険」「社会保険」のいずれかに加入しなければならない。株式会社や有限会社などの法人事業所、常時5人以上を雇用する個人事業所の従業員は、社会保険の加入対象となる。パートやアルバイトでも、1日または1週間の労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、通常の従業員の分の4分の3以上などの要件を満たしていれば加入が必要なので注意が必要だ。

 社会保険(健康保険・厚生年金保険)の手続きでは、企業が「被保険者資格取得届」を、従業員を雇用してから5日以内に日本年金機構へ提出(または事務センターへ郵送)しなければならない。従業員が配偶者や子どもなどを扶養している場合は、従業員が企業に「健康保険被扶養者(異動)届」を提出する。

 「被保険者資格取得届」には企業が従業員の氏名、生年月日、性別、住所、マイナンバーまたは基礎年金番号等を確認して記入するため、従業員から年金手帳(または基礎年金番号がわかる書類)やマイナンバーカード(またはマイナンバー通知カード)を提出してもらう必要がある。

必要な書類など
□健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
□【扶養家族がいる場合】健康保険被扶養者(異動)届
□基礎年金番号またはマイナンバーが確認できる書類

参考:厚生労働省・日本年金機構「お勤めの皆さまへ 社会保険の加入についてのご案内」
参考:厚生労働省「平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がっています!(社会保険の適用拡大)」
参考:日本年金機構「従業員を採用したときの手続き」

雇用保険の手続き
 雇用保険は、企業の規模に関わらず、「1週間の所定労働時間が20時間以上」かつ「31日以上の雇用見込がある人を雇い入れた場合」は適用対象となる。

 手続きでは「雇用保険被保険者資格取得届」を、対象となる従業員を雇用した月の翌月10日までに所轄のハローワークへ提出する。雇用保険被保険者資格取得届にはマイナンバーの記載が必要になるため、従業員に「マイナンバーが確認できる書類」の提出を求めよう。

 また、転職者などで雇用保険に加入したことがある場合は「雇用保険被保険者番号」の記入も必要になるため、従業員から「雇用保険被保険者証」を回収しよう。

必要な書類など
□雇用保険被保険者資格取得届
□マイナンバーを確認できる書類(マイナンバーカード、マイナンバー通知カード、マイナンバー記載の住民票)
□【雇用保険の加入歴がある場合】雇用保険被保険者証

参考:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「雇用保険の届出にマイナンバーの記載が必要です。」
参考:「雇用保険被保険者資格取得届」

所得税の手続き
 所得税の手続きでは、従業員が記入した「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」をその年の最初の給与が支払われる日の前日までに回収しておかなければならない。

 転職者の場合は、年末調整を行う際に前職の退職時に発行される「源泉徴収票」が必要となるため、あらかじめ預かっておくのも良いだろう。

必要な書類など
□給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
□【転職者の場合】前職の源泉徴収票

参考:国税庁「[手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」

住民税の手続き
 従業員の住民税を給与から天引き(特別徴収)する場合は、「特別徴収切替届出(依頼)書」を雇用した月の翌月10日までに従業員の住民票所在地の自治体へ提出する。転職者は「給与所得者異動届出書」を提出することで前職からの特別徴収の引き継ぎが可能だ。

 ただし、入社時期が1~5月の場合、その年の住民税については原則として特別徴収にできないので注意しよう。

必要な書類など
□特別徴収切替届出(依頼)書または給与所得者異動届出書

その他の手続き
 その他、通勤経路を確認し交通費を算出するための「通勤経路申請書」、給与を振り込むための「口座振替依頼書」や「振込口座が確認できる通帳などのコピー」、資格を確認するための「資格免許状のコピー」などの書類の提出を求めることがある。

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入・退社手続きで必要な書類一覧シート
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退社時の手続き

 入社時と同様に、従業員が退職する際にもさまざまな手続きが必要となる。ここでは、退社時に必要な手続きとやり取りをする書類について解説する。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の資格喪失手続き
 社会保険の手続きでは、資格の喪失手続きを行う。企業は「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を退職日から5日以内に所轄の年金事務所へ提出(または事務センターへ郵送)する。退職者と被扶養者分の「健康保険被保険者証」を添付する必要があるため、忘れずに回収しよう。

 基礎年金番号またはマイナンバーを記載する欄があるため、それらがわかる書類を持ち合わせていない場合は退職者に提出してもらう必要がある。

 退職者が国民健康保険へ切り替える場合には「健康保険脱退証明書」の作成が必要となるので、あらかじめ準備をしておこう。

必要な書類など
□健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届
□健康保険被保険者証(本人分・被扶養者分全て)
□基礎年金番号またはマイナンバーが確認できる書類
□【必要に応じて】健康保険脱退証明書

参考:日本年金機構「従業員が退職・死亡したときの手続き」

雇用保険の手続き
 雇用保険でも、社会保険と同様にの資格喪失の手続きを行う。企業は「雇用保険被保険者資格喪失届」を、従業員の退職の翌日から10日以内に、所轄のハローワークへ提出する。喪失届にはマイナンバーを記載する欄があることに注意しよう。

 また、退職者の希望があれば「離職票」を交付するための「雇用保険被保険者離職証明書」を作成しなければならない。離職票の作成には時間を要するため、退職者には早めに交付希望を確認するなどして、事務作業の軽減を図ることも大切だ。

必要な書類など
□雇用保険被保険者資格喪失届
□マイナンバーを確認できる書類(マイナンバーカード、マイナンバー通知カード、マイナンバー記載の住民票)
□【必要に応じて】雇用保険被保険者離職証明書

源泉所得税・年末調整の手続き
 企業には、退職者に対して「源泉徴収票」を退職日から1ヶ月以内に交付する義務がある。その年の1月1日から退職までに支払った給与の金額などを記載した源泉徴収票を用意し、最後の給与明細と合わせて渡すことが一般的だ。

 年末調整は12月31日に在籍している人について行うため、年の途中の退職者に対しては基本的に行う必要がない。ただし、以下に該当する場合は、年末でなくとも退職時に年末調整を行う。

・死亡によって退職した場合
・著しい心身の不調のために退職し、再就職できないことが明確な場合
・12月に給与の支払いを受けた後に退職する場合
・いわゆるパートタイマーとして働く人が退職した場合で、本年中に支払いを受ける給与総額が103万円以下である人(退職後、その年に他の勤務先から給与の支払を受ける見込みのある人は除く)

必要な書類など
□源泉徴収票
□給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

参考:国税庁「No.2665 年末調整の対象となる人」

住民税の手続き
 住民税を給与から天引き(特別徴収)している場合は、住民税の課税を止めるため、「給与所得者異動届出書」を退職月の翌月10日までに退職者の住民票がある自治体へ提出する。

 ただし、退職日が1月以降で再就職の見込みがない場合は、最後に支払う給与やボーナスから住民税の残額を一括して天引きする必要があるため注意が必要だ。

 なお、退職所得がある場合、退職所得控除を超える分には住民税が課税される。従業員の退職時には、特別徴収方法の確認だけでなく、退職所得の課税についても留意したい。

必要な書類など
□給与所得者異動届出書

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入・退社手続きで必要な書類一覧シート
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個人情報の扱いについて

 入社・退社時には、従業員の個人情報を取り扱う。担当者として、どのような点に留意すべきなのだろうか。ここでは、個人情報の取扱いについての注意点をまとめた。

個人情報の保管
 労働基準法では、入社や退職に関する書類の保管期間を「3年間」と定めている。また、厚生労働省では個人情報の取扱いに関する指針の中で、継続した個人情報の安全管理や利用目的以外の利用禁止などの留意点を示している。最低限の保管期間での破棄は業務に支障をきたすことが考えられ、反対に長期間保管すると情報を適正に管理できない可能性がある。

 個人情報の保管場所や保存期間については「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」などを参考にし、社内でルールを定めて運用しよう。

参考:厚生労働省「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針について」

従業員からマイナンバーの提供を拒否された場合
 入・退社時に必要な書類を作成するにあたり、従業員にマイナンバーがわかる書類の提出を求めることがある。企業には、番号法や雇用保険法に基づき、雇用保険手続の届出に併せてマイナンバーを届け出ることが義務づけられている。従業員からマイナンバーの提供を拒否された場合は、その旨を従業員に説明の上、マイナンバー記載書類の提供を依頼しよう。

まとめ

 従業員の入・退社時の手続きは多岐に渡る。漏れをなくすには、チェックリストを作成するなどして、必要な書類や提出期限などを管理することが大切だ。また、郵送や電子申請を活用すると、手続きをスムーズに行うことができる。これらの手続きを行う際は、個人情報の取り扱いにも注意しながら作業を進めよう。

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入・退社手続きで必要な書類一覧シート
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