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所定時間外労働とは? 法定労働時間との違いや時間外労働の条件について詳しく解説

2020.11.13

 働き方改革関連法案により「時間外労働の上限」や「月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率引上」が規定されたこともあり、時間外労働について正しく理解したいと考える担当者もいるのではないだろうか。

 今回は、「所定時間外労働」の定義や、「法定時間外労働」との違い、時間外労働の上限について解説する。時間外労働の定義や算定方法についての知識を身につけ、適切に運用しよう。

目次

●所定時間外労働とは
●時間外労働とは
●時間外労働の上限
●まとめ

所定時間外労働とは

 所定時間外労働とは、企業が定める「所定労働時間」を超過して行う労働のことだ。所定時間外労働を理解する前提として、まずは「所定時間労働」の概要と、比較されることが多い「法定労働時間」について見ていこう。

所定労働時間・所定休日とは
 「所定労働時間」は、企業が就業規則に定めた就業時間(実労時間)を指す。例として、始業時刻が9:00、休憩時刻が12:00から13:00、終業時刻が17:00の場合、所定労働時間は7時間となる。また、企業が定める休日を「所定休日」と呼ぶ。所定労働時間は、後述する「法定労働時間」を超えて設定することはできない。

法定労働時間・法定休日とは
 労働基準法では、労働時間を原則「1日8時間・1週40時間以内」としており、これを「法定労働時間」という。この法定労働時間を超過した時間を「法定外労働時間」といい、法定外労働時間に行う労働を「法定時間外労働」を呼ぶ。また、同法では原則として、企業は従業員に対して毎週少なくとも1回休日を与えなければならないとしており、この1週間につき1日の休日を「法定休日」という。

所定時間外労働と法定時間外労働の違い
 所定時間外労働と法定時間外労働の違いは、所定時間外労働は「企業が定める所定労働時間を超過している」のに対し、法定時間外労働は「労働基準法が定める法定労働時間を超過している」ことだ。所定労働時間を超過していても、法定労働時間が超過していない場合も考えられる。

 所定労働時間を超えた時間外労働は、法定労働時間を超えているか否かによって以下のように「法定内時間外労働」と「法定外時間外労働」に分けられる。法定内時間外労働が割増賃金(いわゆる残業手当)の対象となるかは各企業の就業規則(賃金規定)ごとに異なるため、企業によっては割増賃金が発生しない場合がある。

時間外労働とは

 給与の計算等で用いられる「時間外労働」は、何を元に算出されるのだろうか。ここでは、法律上の時間外労働の扱いや、時間外労働の定義が例外になる働き方、従業員に時間外労働をさせる場合の注意点をを説明する。

時間外労働は法定時間外労働と同義
 時間外労働とは定められた労働時間を超過して行う労働のことで、法律上の扱いでは、「法定時間外労働」を指す。つまり、企業が従業員に割増賃金を支払う場合、割増賃金は「法定外労働時間」をもとに計算されることとなる。「所定外労働時間」を超えて労働することを「残業」と呼ぶことが一般的であるため、従業員の認識と実際の給与計算の方法とでは異なることに注意しよう。

時間外労働の定義が例外になる働き方
 企業によっては、以下のように1日8時間という法定労働時間の枠に捉われない働き方を採用している場合もある。採用している働き方によって、割増賃金が発生する対象時間が異なることに注意が必要だ。

・変形労働時間制:特定の日または週に、法定労働時間を超え、一定の限度で労働させることができる制度
・フレックスタイム制:始業時刻と終業時刻を従業員の裁量に委ね、労働時間を月単位制度で計算する制度
・裁量労働制:労働時間を実労働時間で算定せず、一定時間とみなして運用する制度

時間外労働を行うには「36(サブロク)協定」の締結が必要
 従業員に法定時間外や法定休日に労働させる場合には、労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定)の締結と、所轄労働基準監督署長への届出が必要となる。36協定では「時間外労働を行う業務の種類」や「時間外労働の上限」などを定める必要がある。

時間外労働の上限

 「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(いわゆる「働き方改革関連法」)により改正後の労働基準法が2019年4月から順次施行され、時間外労働に上限規制が設けられることとなった。法改正のポイントを正しく理解し、従業員が時間外労働を行った際の労務管理に役立てよう。

法改正の概要
 時間外労働の上限規制は改正労働基準法第36条に以下のように定められており、大企業には2019年4月、中小企業には1年の猶予期間を経て2020年4月から適用されている。

・時間外労働(休日労働を含まない)の上限は原則、月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることができない
・臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)であっても、時間外労働は年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計時間は月100時間未満かつ2~6カ月平均80時間以内とする
・原則である月45時間を超えることができるのは、年6カ月まで
・違反した場合は6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられることがある

法改正のポイント
 今回の法改正で注意すべき点は、時間外労働に関する法違反の有無は、「所定外労働時間」ではなく「法定外労働時間」の超過時間で判断されることだ。 また、以下の事業・業務については、上限規制の適用が5年間猶予される。

・建設事業
・自動車運転の業務
・医師
・鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業

月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率引上げ
 労働基準法の改正によって、2010年4月から大企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率を50%以上とする規定が、2023年4月以降から中小企業(現行は25%以上)にも適用されることとなった。ただし、臨時的な特別の事情等によってやむを得ず月60時間を超える時間外労働を行う場合は、法定割増賃金率の引き上げ分の割増賃金の支払いに代えて有給休暇(代替休暇)を与えることができるとされている。

 なお、50%以上の割増賃金率の適用を回避するため、休日振替によって休日労働の割増賃金率である35%以上を適用することは、法の趣旨に照らして望ましくないことに注意しよう。

参考:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
参考:厚生労働省「働き方改革関連法のあらまし(改正労働基準法編)」

まとめ

 従業員の健康を守り給与を正確に計算するためには、「所定時間外労働」と「法定時間外労働」との違いや法律上の取り扱いを理解し、適切に運用することが大切だ。不要な時間外労働が行われないよう、業務内容や体制、給与の計算方法を一度見直してみてはいかがだろうか。

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