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今さら聞けない働き方改革とは?実際に行われている具体例も含めて紹介

2020.08.21

2020年現在、「働き方改革」と銘打った労働環境の改善が国と産業が挙げたテーマとして進められている。民間企業はこの働き方改革と日々向き合いながら労働環境の改善に取り組んでいるわけだが、実際にはその中でも働き方改革がどのような目的のもと進められ、何を目指しているのかなど詳しい実情を知らない人は多いだろう。そこで今回は働き方改革に対して内容や目的、また具体例などについて詳しく紹介しよう。

1.働き方改革とは

働き方改革と聞いて実際にどのような内容を指し、どのような目的があるのかということを理解できている人は多いだろうか。実際どのように進められている取り組みなのか、知らない方は少なくないはずである。そこで、本段落は働き方改革の内容と目的、必要となる背景について紹介する。

1-1.内容
働き方改革とは、政府が目標として掲げる「一億総活躍社会」の実現に向けた最大のチャレンジとして取り組まれている事業である。現代日本ではより人々の働き方が多様化し、働きたい時間や労働内容も人それぞれ理想とするものが異なるようになってきた。そこで、これまで日本企業で導入されていたオフィスに社員を集め、決まった時間に出社させるなどの労働環境を大幅に見直す取り組みを行うこととなった。働き方改革の定義としては、働く人々が個々の事情や背景に応じて、多様で柔軟な働き方を自分で選択できるようにするための改革とされている。

2017年3月、内閣官房に設置された「働き方改革推進会議」によって処遇改善・労働生産性向上・長時間労働の是正、柔軟な働き方の環境整備、多様な人材の活躍に関する9つの分野に言及したロードマップが示され、働き方改革を政府主導で推し進めていくことが決定された。しかし、これらのロードマップで働き方改革の理念や到達目標が示されたものの、慣習として企業に根付く既存の働き方を変えることは、多くの企業において容易なことではなく、社内制度を変えていくことのわずらわしさばかりを感じる企業も少なくはない。法令を満たすための取り組みをとりあえず実施する、という企業も認められる。

1-2.目的
働き方改革を行う目的は一人一人の意思や能力、個々の事情や社会的背景に応じた、多様で柔軟な働き方を選択可能にすることである。その取り組みが社会全体に広がっていけば、働きやすい働き方を選ぶことが自然な社会となり「労働者にとっての働きやすさ」を実現することが出来るだろう。働き方改革の目標は、様々な事情や社会的背景を持つ人たちが自分の働きやすい働き方を選ぶことが出来て、能力を発揮しやすい社会にしていくことなのだ。

働く個人個人にとって働きやすい環境を構築することで、ライフステージに合った仕事の選択をしやすくすることが働き方改革の具体的な目標である。働き方改革の目的が達成されれば、国にとっては労働者の増加に伴う税収増を見込むことが出来る。また、企業にとっては社員がそれぞれ働きやすい環境を選ぶことが出来ることで、家庭の事情などを理由に退職することを防止することが出来て、長期的な労働力の確保と業務の経験者を手放さないことによる生産性向上が達成できるだろう。経済も企業戦略も、骨太に育てるための指針が働き方改革なのである。

1-3.社会的背景
少子高齢化が今後さらに深刻になることが予想され、労働人口が総人口に占める割合は減少すると見られている。経済的な視点から見ると、今後更なる労働力不足が見込まれ、一般的な消費が先細る一方で医療サービスなどの需要は高まることが予想されるのだ。そのために、様々な業種や分野で労働力の確保が急務となっている。働き方改革を通して労働生産性を高めて賃金を上げることで、社会全体の生産と消費を支える必要性が叫ばれているのだ。経済を活性化させるためにも、働き方改革は非常に重要な事業なのである。

また、今後は夫婦共働き世帯や単身世帯において家事を担いつつ、育児や介護などのケア労働に従事する労働者の増加が見込まれている。子供や高齢者などの家族や自分自身のケアに十分参加するためには、労働時間にある程度融通を利かせるなど、時間制約のハードルを乗り越えることが欠かせない。労働時間だけ改善すれば良いのではなく、短い時間でしか働くことの出来ない労働者に対する手厚い処遇を充実させるなど、賃金面の改善も含めて多様な働き方を社会全体で支持することが必要であると考えられているのだ。

2.働き方改革の3本柱

働き方改革は労働者の多様な働き方を支援する取り組みであるが、具体的には何を課題ととらえて改革を推進しているのだろうか。そこで本段落では、働き方改革が掲げる3本柱の指針について紹介する。働き方改革が改善しようとしている課題について、具体的に紹介する。

2-1.長時間労働を解消する
働き方改革が問題視している現行の労働環境における問題のひとつが長時間労働である。日本の労働者はこれまで労働時間が長いことが知られており、過労死や精神的なハラスメントによる自殺が職場で発生しているなど、労働者にストレスのかかる労働環境が是正勧告を受けている。そのため働き方改革の3本柱のひとつには「労働者にとっての働きやすさの実現」が掲げられ、そのためには具体的に「労働時間の適正化」を行うことで目標を達成することを目指している。長時間労働の是正は働き方改革が目指す、多様な働き方を認めて誰もが働きやすい社会を作る上で必要な事柄である。

労働者の長時間労働が横行する、というこの現状を解消するために様々な取り組みがされている。政府の施策としては法改正によって時間外労働の上限規制の導入を行ったり、勤務間インターバル制度導入に向けた環境整備の導入を支援するなどの取り組みが行われているのだ。労働者のヘルスケアにも着目して、健康診断や人間ドックを職場で行う取り組みを支援したり、産業医の充足に取り組むなど労働者が健康で働きやすい職場環境の整備が施行されている。

2-2.正規・非正規の不合理格差を解消する
働き方改革の3本柱のひとつとして、「正規・非正規の不合理格差の解消」が掲げられている。一般的には日本の非正規社員の待遇は正社員の時給換算賃金の約6割程度であり、欧州でさえ8割ほどであるなど給与面での乖離があることから両者の格差が激しいのは日本に限った話ではない。しかし、育児や介護の負担を抱える女性や高齢者が正社員のような制限なしの働き方をするには体力的・時間的な限界があるため、そういった事情を抱えて非正規雇用で働くことを選ぶ労働者が少なくないことも事実である。

そこで、働き方改革では正規雇用と非正規雇用の待遇面の格差是正を目指している。同一労働同一賃金の実行性を確保する法制度やガイドラインの整備をすることで給与面の格差是正を目指している。同一労働同一賃金とは、労働によって同じ付加価値をもたらす人には同一の賃金を支払うべきという考え方であり、雇用形態ではなく能力や成果に応じて賃金を決定する取り組みである。各企業はこの対応を強く求められ、将来的に非正規という枠組みをなくし、従業員一人一人のライフステージに合わせた働き方を選べる社会の実現を目的としている。

また、労働者の待遇改善のために、キャリアアップの推進も働き方改革では行っている。非正規社員で働くことは生産性を発揮する機会を損失していると言えるため、非正規雇用労働者が望むのであれば正社員化を積極的に行っていくキャリアアップを推進する施策を実行している。非正規雇用者を出来る限り正規雇用していく、というのが具体的な短期的目標のひとつとして扱われているのだ。

2-3.働き方の選択肢を増やす
働き方改革の3本柱の最後のひとつは、「働き方の選択肢を増やす」ことである。働く人が柔軟に自分が働きやすい働き方を選べる社会が実現出来れば、その人の事情や背景に沿った働き方をして、前向きに働き続けることが出来るようになる。働き方改革が理想とする、労働者がそれぞれ自分らしく働ける社会を実現するためには不可欠な視点であり、働きやすさが確保されることで多様な人材が活躍できるようになれば個人の事情や背景を理由に仕事を辞める人が減り、人手不足が解消されるのだ。

働き方改革における柔軟な働き方の実現に向けた施策としては、出産や育児、介護等のライフステージに合わせた働き方の提案を行い、家庭と仕事の両立が出来るような労働環境を支援する取り組みを行っている。また、労働者のキャリアアップや現場における労働力の供給に寄与する副業・兼業を推進する取り組みを行っており、今後さらには増加する高齢者層の就労促進も施策としてさらに力を入れていく。

3.働き方改革の具体例

では実際に働き方改革の具体例としてどのような施策が行われているのだろうか。この段落では実際に企業などで導入され、労働者が働きやすい環境を選び、生き生きと働けるようになるための働き方改革の具体例を紹介する。

3-1.フレックスタイム
フレックスタイム制度も働き方改革が進む前に普及してきている制度だが、働き方改革においてはより一層期待される。フレックスタイムとは、時短勤務とは異なり総労働時間は変わらないものの、1か月の範囲内で始業の時刻と終業の時刻を柔軟に変更できる仕組みである。具体的には9~18時までが就業時間だった場合、1時間早く出社して1時間早く帰宅することが可能であり、家庭の事情などで働く時間に融通を利かせたい場合などに活用されている制度なのだ。

3-2.育児休暇
育児休暇は大部分の企業で取り組まれている制度であるが、働き方改革によって見直され、女性ではなく男性へ育児休暇取得を促進する企業が増加している。男性でも女性でも育児休暇の取得は可能であり、会社の上層部として働くスタッフですら、奥さんの出産に際して育児休暇の取得を奨励されることもある。

3-3.テレワーク
労働生産性を上げる方法の一つとしてテレワーク、在宅勤務の制度を導入する企業が増加傾向にあり、働き方改革でも柔軟に働く場所を自由に選んで働くことを推進している。働き方の柔軟性を上げるための施策として知られている施策であるが、最近ではオンラインで日報を作成して共有できるクラウド型のツールもあり、訪問先からオフィスに戻ることなく家で日報を作成することも可能となった。

3-4.短時間勤務制度
多くの企業で制度が導入されている産休や育休とともに注目された制度であるが、この制度も女性のための仕組みではなく男性社員も利用できる。制度としては育児や介護に携わる社員の勤務時間を通常より何時間か短縮するもので、通常は8時から17時までの就業規則であれば、8時から15時などに変更できる制度である。

どの企業も自分ゴト化して働き方改革を推進しよう

働き方改革について理解できただろうか。働き方改革は国全体として取り組もうとしている施策であるため、どこか一つの企業や大企業のみが頑張るのではなく、中小企業も含めて実施していく必要がある。どの企業でも一度、自社の労働環境や制度、取り組みを見返してみるといいだろう。大企業の話、ではなく自分の企業にも関わりのある話、と自分ゴト化して働き方改革を進めていこう。

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