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産業医とはどんな職業?産業医の仕事内容や必要性について詳しく解説

2020.09.09

職場で働くスタッフの健康を守るために、産業医は働いている。しかし、具体的に産業医とはどういう役割を担う職業で、なぜ産業医を設置しなければならないのかという理由を知っている人は少ないかもしれない。産業医は50人以上の従業員を持つ企業なら設置しなくてはならないものだが、この記事を読むことで産業医の仕事と役割が分かるはずだ。この記事は産業医という職業について、もっと深く知りたい人におすすめの記事である。

1.産業医の必要性

職場で働く人の健康を適切にケアすることは非常に重要だということは以前から叫ばれていたが、身体の健康だけでなく精神的な健康をケアすることが現代ではさらに重要視されるようになった。職場の環境や人間関係に思い悩むなど仕事に関わる問題でメンタル不調に陥って自殺するケースは多く、スタッフを雇用する企業は適切にメンタルヘルス対策をすることが求められている。どのようにメンタルのケアを実行していくかという点が労働者が生き生きと働いていくための重要な課題として世間に知られるようになっている。

メンタルヘルス対策を医療知識の乏しいスタッフが行うことは現実的ではなく、メンタル問題の解決に対して効果的でもない。メンタルケアはどのようなことで悩んでいるかということを明らかにすれば紐解けるものではなく、心身の状態を総合的に勘案し、精神状態を適切に評価することから始める必要があるからだ。そうした心身の健康の観察やケアを行う専門職として、産業医が必要となる。法的には50~999人の労働者による企業には産業医を設置することが求められており、1000~3000人の場合には1名以上の専属産業医が必要だ。それよりも大きな3000人以上の事業所の場合には、その事業所専属の産業医を2名以上確保する必要がある。

2.産業医の歴史

産業医の歴史は、軍医や工場医などの病気のリスクの高い職場に派遣された医師が始まりと言われている。この時は負傷した労働者や兵士に対する治療を行ったり、ストレスのかかる職場で精神的に疲弊してしまった職員に対するケアを行うことが主だった医師の役割とされていた。しかし、徐々にクリーンな労働環境で健康的に働くことに対する意識が高まり、職場に関わる医師には環境整備に関する点についても助言が求められるようになった。そして、化学物質が原因の疾患の予防なども盛り込み、職場の健康を管理する専門医としての産業医が1972年に法的に規定された。

現代でも産業医は職場環境中の有害物質や一酸化炭素濃度の測定、騒音の有無についての調査なども行う。近年の工場などの環境では環境の管理が適切にされているところが増え、そういった化学物質などによる疾病の発生は珍しいものになりつつあるが、その反面人間関係や労働条件などで精神的な不調をきたしてしまうケースが増えてきた。そのため、現在の産業医に求められていることは、衛生問題や疾患への対応より職員が抱えるストレス問題の解消である。身体のケアから心身のケアに求められるものが広がり、産業医の役割はより重要になったと言えるだろう。

3.産業医の仕事

産業医の仕事は、心身の不調を職員が訴えてから始まるものではない。むしろ、そういった心身の不調が起こる前に、職員が健康問題を起こさないような予防をすることが重要な役割のひとつだ。衛生講和というスタッフ相手に健康管理や衛生管理を目的とした研修を行い、健康に関する意識を高めて知識をつけさせる啓蒙活動も産業医の重要な仕事だ。職場巡視という、企業によって定められた確認事項をチェックすることも毎月1回は最低でも行うことになっている。そこで産業医に指摘された項目については、職場はスタッフの健康のために早急に改善しなくてはならない。

職場に心身の不調を訴えるスタッフが現れた場合は、産業医はそのケアを行う。心身の不調で休職しているスタッフや回復して復職する予定のスタッフには休職・復職面談を行って健康状態を把握し、健康に職場に復帰できるかどうかの経過を観察することも産業医の大切な役割だ。健康診断後に健康相談希望者が出たら、健康相談を受けて健康状態を説明することも産業医には求められている。他にも、スタッフの精神状態を把握するためのストレスチェックを実施することや高ストレス者面談指導、規定以上の残業をしているスタッフに対する長時間労働面接指導などがあり、職場の健康問題に対する予防やケアのため、産業医は様々な役割を担っている。

4.産業医の働き方

産業医として働く医師には、専属産業医と嘱託産業医が存在する。それぞれ、どのように職場の健康に関わるのか知っている人は少ないかもしれない。この段落では、その違いについて説明していく。

4-1.専属産業医
専属産業医とは、一定数以上のスタッフを抱える企業が組織の一員として雇用し、その企業の規則に従って働く産業医のことを指す。企業から産業医室などの設備を与えられることも多く、その業務内容により早めの時間に就業するケースが多い。契約条件や所属企業の判断によって異なるが、別のクリニックや病院で診療を行うなど医師としてのアルバイトをしている産業医もいる。契約条件などによって個人差はあるが、週4日勤務で月収1000万~1500万円が見込め、当直や夜間の呼び出しがない上に残業もほとんどないため、医師としての働き方の中でも特に満足度が高い仕事だと言える。

4-2.嘱託産業医
嘱託産業医は常勤ではなく、非常勤として働いているという点が専属産業医とは異なる。専属の産業医を必要としない一定数以下のスタッフを抱えている企業が契約する産業医であり、毎日職場に顔を見せるわけではなく、職場巡視などの仕事がある日だけ勤務して仕事をするのが特徴だ。必要な時だけ企業に足を運んで健康指導やケアを行うという仕事上、勤務時間の自由度が高いため、複数の企業を掛け持ちをしている場合もある。月に1回訪問するケースでは、嘱託産業医は一つの企業から月6万~20万円の報酬を貰っていることが多い。

5.産業医を上手に活用するには

産業医を効果的に活用して、スタッフの心身の健康を守ることは事業所を任された責任者であれば欠かせないことと言える。まず、事業所の責任者は産業医と職場の健康をどのように実現していくのかという展望を共有する必要がある。どのような配慮が必要かなどのアドバイスを産業医からもらうなど、健康経営に積極的に関与してどのような方針や施策を立てるか、それをどのように実行していくか具体的な方針を話し合い、決定することは産業医を迎えた最初期には行っておくべきだろう。

また、産業医に何ができるかといった点や相談を気軽にしても良いのかなど産業医の役割について従業員に周知することも重要である。産業医がどのような相談に乗ってくれるのか、どのような健康問題に対応してくれるのかということが分かれば、スタッフは安心して健康問題を相談できるようになるからだ。加えて、スタッフの中から健康管理責任者を立てて、健康な職場づくりを積極的に行っていくようにスタッフにも促し、会社全体の健康に対する意識を改善することも重要と言える。産業医だけの力ではなく、職場全体で健康を実現する気風を作ることが、効果的に産業医を活用するためには必要なことである。

産業医を積極的に活用しよう

労働者の心身の問題が度々取り上げられ、健康に働くことの重要性が叫ばれている。そんな現代の日本の企業の状況を見ると、産業医を活用して健康な職場環境を作っていく努力は必須と言えるだろう。産業医を上手に活かせば社内の健康意識も高まり、安心して余裕を持って仕事に取り組むことが出来るようになり、効率もアップすることが期待される。

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