与信とは?限度額の設定方法や効率的に管理するポイントを紹介
取引先から代金を回収するまでの期間に、相手方に対して信用を供与する「与信」。未収金の発生はたとえ少額であっても企業の信頼を損ねてしまうため、しっかりとした調査を実施したうえでの判断が求められる。
本記事では、与信の概要や必要性、与信限度額の設定と与信管理の方法などを解説する。日々の経理業務において、必要性と安全性を両立する与信取引を行うために役立ててほしい。
目次
●与信とは
●与信管理の必要性
●与信管理の方法
●与信限度額とは。3つの基準による設定方法
●与信の評価方法における3つのポイント
●まとめ
与信とは
与信とは、商品やサービスの代金が支払われることを前提に、取引先へ信用を供与すること。「信用を供与する」とは、相手に返済能力があるかを判断したうえで、代金を受け取る前に商品を渡したり、取引を進めたりする状態を意味する。
このような取引は「与信取引」と呼ばれる。継続的な取引や頻繁に起こる取引において現金のやり取りがその都度発生しないため、取引を円滑に進められるのが特徴だ。
与信管理の必要性
与信管理とは、与信額をコントロールして取引先から代金を回収できなくなるリスクを可能な限り取り除くこと。与信取引には企業同士の信頼関係のもとで取引をスムーズに進められるというメリットがある一方、「不良債権の増加や支払いの延滞」「取引先の倒産による影響」などのリスクも存在する。そのため、取引先ごとに与信の金額をコントロールして、仮に一つの取引先が倒産に陥っても自社の資金繰りに影響を与えないようにすることが重要だ。
与信管理の方法
ここでは、与信を承認する前の「与信調査」と、具体的な「与信管理」の方法を紹介する。
与信調査
与信取引を承認する前に、まずは取引先の返済能力を判断する「与信調査」を行う必要がある。主な調査方法は次の3つだ。
●取引先が公にしているデータを利用して自社で調査する「内部調査」
●取引先を直接訪問して調査を行う「直接調査」
●第三者の信用調査機関などが保有しているデータベースを活用して調べる「外部調査」
与信取引をして問題がないかを判断するには、企業が公表している決算書や事業報告書などの資料に含まれている、定量的な数値や定性的な情報だけでは不十分な場合もあるだろう。日々取引先と接している現場の営業担当からヒアリングするなど、数値では判断できない情報も確認しておこう。
与信管理
与信管理では、取引先ごとの与信に一定の限度額や枠を設ける。具体的には次のような対応が考えられる。
●倒産の予兆がある取引先や業績が傾いている取引先に対しては、「与信を絞って債権額を少なくする」
●業績が好調な取引先や財務上全く問題がない取引先に対しては、「与信を大きくして取引拡大を図る」 など
相手方の債務の履行状況に応じて、定期的にその規模を見直そう。
与信限度額とは。3つの基準による設定方法
与信限度額とは、取引先が倒産した場合を想定して与信に限度を設ける仕組みのこと。原則として、与信限度額を超える取引は行わない。どの範囲までを与信限度額とするかは企業によって異なるが、必要性と安全性の両立を目指して設定するのが基本だ。
「自社の売上債権」「取引先の純資産」「取引先の仕入債務」を基準にして考えてみよう。基準ごとに紹介する計算式において、仮に債権が回収できなかった場合でも耐えられる範囲を「一定割合」、与信管理で設定した企業ごとの格付けにどれだけ重きを置くかを「格付けウエイト」とする。
与信限度額が設定できたら、その限度額(枠)内での取引(債権管理)を行おう。
与信の評価方法における3つのポイント
ここでは、与信調査を行う際に注視したい3つのポイントを解説する。
財務状況
与信調査では、万が一に備え、返済に十分な資産を有しているか取引先の財務状況をチェックしておくことが重要だ。不動産登記謄本で「取引先の担保余力」や「金融機関への未払い滞納がないか」について確認しておくとよいだろう。
収入
収入のチェックは、「収入」と「収益」の違いを理解したうえで進めよう。収入は現金や貨幣を受け取るのに対し、収益はまだ現金化していない未収金が含まれる。つまり、収益が高い企業であっても、必ず売掛金を回収できるとは限らないことに注意が必要だ。取引先の売上の増減推移や在庫状況などに目を配り、十分な収入が確保できているかを確認しよう。
信用力
取引先の経営者や担当者と信頼関係を築けるかも重要なポイントだ。経歴や実績だけでなく、実際にやり取りを行った際の印象などの感覚も、大切な判断材料となる。
まとめ
与信取引では、取引先から売掛金を回収できない「未回収リスク」を軽減・回避するために、しっかりとした与信調査を行ったうえで「そもそも与信取引を行うか」「どの程度の与信限度額を付与するか」などを判断することが重要だ。本記事で紹介している与信限度額の設定方法や与信管理の方法などを参考に、自社に合った与信取引を検討してみてほしい。