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【2024年最新版】BPO市場の概況と市場を取り巻く環境、今後の予測を解説!

2024.09.27
オフィスのミカタ編集部

企業の業務プロセスを外部企業に委託するBPO。業務効率化のためBPOサービスの導入を検討している担当者もいるだろう。自社の業務を継続的に委託できるメリットは大きく、昨今の人材難も相まって市場規模は拡大傾向にある。BPO市場の概況や市場規模が拡大している理由、BPOを活用する上での注意点について紹介する。

目次

■BPO市場規模は年々拡大している
■BPO市場を取り巻く環境と市場が拡大している理由
 企業の人手不足
 働き方改革
■BPO市場の今後の予想
 デジタル後進国を打破するためにはBPOが不可欠に
 大手の参画でBPOサービスの競争が激化
■BPOを活用する際の注意点
 進捗や成果など状況を把握しておく
 ナレッジが蓄積されるようにする
 セキュリティー対策の確認が必要
 人材の処遇も考慮する
■まとめ

BPO市場規模は年々拡大している

BPOは「Business Process Outsourcing(ビジネス プロセス アウトソーシング)」の略称であり、業務について企画設計から実施まで、一括して外部委託するものだ。自社のリソースをコア業務に注力させられる、コスト削減につながる、などのメリットから、BPOの市場規模は年々拡大している。

特に注目されているのが、デジタル制度の義務化に伴うBPO移行だ。経済産業省「支援機関を通じた中堅・中小企業等のDX支援の在り方に関する検討会」でも、識者が企業DX推進のためBPOを活用すべきと指摘する場面が見られている。

 (出典元:経済産業省/支援機関を通じた中堅・中小企業等のDX支援の在り方に関する検討会~支援機関から始めるDX 資料3

政府がDXを推進している背景には、日本のDXが世界に遅れを取っているという現状がある。「2025年以降で、最大で年間12兆円の経済損失が生じる」(※1)という危機感から、各企業は競争力の維持・強化のために、既存システムを刷新してDXを進めていくことが求められている。DX推進手段の一つとして、BPOの活用が進んでいると考えられるだろう。
※1 出典元:D Xレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(経済産業省)

矢野経済研究所の調査によると、2022年度における国内BPOサービス全体の市場規模は、事業者売上高ベースで4兆7020億9000万円(推計)、前年度比3.0%増となっている。このうち、IT系BPO市場規模が同3.5%増の2兆7829億円、非IT系BPO市場規模が同2.4%増の1兆9191億9000万円だ。

今後も市場は伸び続け、2023年度では前年比4.2%増の約4兆8975億9000万円に迫り、2027年度には5兆3159億9000円となる予測だ。
(参考:株式会社矢野経済研究所 BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査を実施(2023年11月14日発表)

BPO市場を取り巻く環境と市場が拡大している理由

BPO市場拡大の背景には、BPO市場を取り囲む社会や経済環境がある。その大きなものとして企業DXの推進があることはすでに示した。ほかの理由も見てみよう。

企業の人手不足
少子高齢化による人手不足が、BPO市場拡大の要因の一つと考えられる。日本国内の生産年齢人口(15~64歳)は減少しており、人手不足に悩む企業は多い。また、2065年には2020年と比べて生産年齢人口が2877万人減少するという推測も発表されている。企業は人手不足解消のために、バックオフィス業務や外部委託が可能な業務はBPOで対応しているという背景がある。
(参考:総務省『令和4年版 情報通信白書|生産年齢人口の減少』内閣府「人口減少と少子高齢化」

働き方改革
労働契約法の改正による無期雇用社員の対象者増加や、労働者派遣法改正における直接雇用化、時間外労働の上限規制なども、BPO市場が拡大している理由だ。企業が有期労働契約の雇用をためらうようになったことと、時間外労働の上限規制で既存の従業員だけでは業務がまわらなくなり、不足するリソースをBPO委託で補填せざるを得ない状況となっている。
(参考:「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」について(厚生労働省)

BPO市場の今後の予想

BPOの導入を検討している企業には、今後の市場がどうなるのか気になる担当者もいるだろう。ここでは、BPO業界の今後の予測について解説する。

「デジタル後進国」と呼ばれる現状を打破するにはBPOが不可欠に
電子取引における電子データ保存が、デジタル化への対応力が弱い零細企業も含めて義務化された。個別にソフトウェアを利用するのには限界がある。経理事務のデジタル化、企業のDX化を一括で引き受けるBPOの存在が不可欠になるだろう。BPOを利用し、「デジタル後進国」と呼ばれる日本の現状を打破しなければという機運がますます高まりそうだ。
参考:経済産業省/支援機関を通じた中堅・中小企業等のDX支援の在り方に関する検討会~支援機関から始めるDX 資料3


大手の参画でBPOサービスの競争が激化
大手企業との連携などによりBPO関連の新会社が続々と誕生している。

・2024年4月
伊藤忠商事とアメリカのコンサルティング大手であるボストン コンサルティング グループの共同出資会社「I&Bコンサルティング」発足(※2)
・2024年5月8日
コンタクトセンター運営大手のアルティウスリンクがデジタルBPO推進ブランド「Altius ONE」を立ち上げ(※3)
・2024年7月17日
NTTコミュニケーションズとトランスコスモスがデジタルBPO領域で提携(※4)
・2024年8月26日
三井住友フィナンシャルグループ 傘下のプラリタウンが会計サービス大手のfreeeと新会社「インクループ」を設立(※5)

直近の事例だけでも枚挙に暇がない。今後、BPOサービスの競争激化が予想される。
※2 参考元:I&Bコンサルティング株式会社を設立いたしました(I&Bコンサルティング株式会社)
※3 参考元:デジタルBPOを推進する新サービスブランド「Altius ONE」リリース~データドリブンで企業のBXに貢献する、価値共創型プラットフォームサービスを提供~(アルティウスリンク株式会社)
※4 参考元:NTT Comとトランスコスモス、AI活用時代のDigital BPOソリューション領域において戦略的事業提携を締結(NTTコミュニケーションズ株式会社、トランスコスモス株式会社)
※5 参考元:freeeとSMBCグループのプラリタウンが「株式会社インクループ」を設立 SaaS導入支援サービスとBPRコンサルティングを提供(フリー株式会社)

BPOを活用する際の注意点

自社の課題解決に向けて、BPOの導入は選択肢の一つになるだろう。ただし、活用するにはいくつかの注意点がある。担当者は次のようなことに注意して、BPOの導入を検討してほしい。

進捗や成果など状況を把握しておく
BPOで外部に委託しても、業務の進捗や成果は把握するよう努める必要がある。BPOは一般的なアウトソーソングと異なり、業務の一部ではなく業務プロセスの全てを委託することが一般的であるため、進捗や成果がわかりにくい。委託した業務について、随時、状況を把握するようにしたい。

ナレッジが蓄積されるようにする
BPO事業者に任せきりにすると自社にナレッジが蓄積されず、同じ課題の対応に時間がかかる、担当者が異動する際に十分な引継ぎが行われないなどのリスクがある。BPO事業者がどのような取り組みを行っているのかを自社で共有して、社内でナレッジを有効活用できる仕組みを考えておきたい。

セキュリティ対策の確認が必要
BPO事業者のセキュリティ対策は、そのまま自社の情報を守ることにつながる。業務を外部に委託することは、社内の情報を外部へ持ち出すということでもあり、情報漏えいのリスクを伴う。BPO業者がISMS認証やプライバシーマークの認証を取得しているか、情報をどのように管理しているのか、セキュリティに関する社員教育を徹底しているかなどの確認は必須だ。

人材の処遇も考慮する
BPOの導入によって、社内で異動や配置転換となる従業員もいるだろう。従業員によっては、モチベーションが低下してしまう懸念がある。異動先のキャリアを明示する、新しい職場に溶け込めるよう配慮するなど、従業員のケアも気をつけたいポイントだ。

まとめ

経理事務関連のデジタル化が前提となる各種法改正や新制度への対応に、BPOは利便性が高い。BPO導入を機にDX化を促進する企業が、今後も増えていくのではないだろうか。大手企業が続々とBPO市場に参入する今、担当者は、BPOのメリットだけではなく委託する際の注意点を考慮しながら、BPOサービスを比較検討してほしい。

(関連記事:『BPOとアウトソーシングの違いとは?導入メリットやポイントを解説』