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生成AI活用のカギは「非IT人材も含めた裾野の拡大」 AWSが最新のAI活用動向を発表

2024.06.26
春奈

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(以下、AWS)は2024年6月14日、最新のAIの活用動向とAI人材育成に関する記者説明会を開催した。AWSがAccess Partnerに調査を委託して作成したレポート「2024年 加速するAI活用 AIスキルに関するアジア太平洋地域の雇用主 および労働者の意識調査(以下、レポート)」によれば、日本の雇用主の79%、労働者の71%が、「5年以内に生成AIを活用する」と回答するなど、生成AIはビジネスの現場で急速に身近になりつつある。では生成AIのポテンシャルを最大限引き出し、生産性向上や新たな価値創出の実現には何が必要なのか。記者説明会の内容から、日本を含むアジア太平洋地域における最新のAI活用動向や、AWSのAI人材育成プログラムについて紹介する。

(写真左から)アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 トレーニングサービス本部 本部⻑ 岩田健一氏、同社 執行役員 サービス & テクノロジー統括本部 統括本部⻑ 安田俊彦氏、AWS認定インストラクターを務めるトレノケート株式会社 ラーニングサービス部 テクニカルトレーニング第1チーム 兼 経営企画室 技術教育エンジニア クラウドトレーニングアドボケイト / プロトタイプビルダー 山下光洋氏

ニーズが高まる生成AI関連スキルの習得

冒頭でAWSの執行役員 サービス & テクノロジー統括本部 統括本部長 安田俊彦氏が、AI市場の動向やAIに関するAWSの取り組みについて紹介した。

AWSはクラウドインフラ強化に向けた「技術への投資」と並行して、「人への投資」に注力しており、2017年以降、日本国内で70万人以上にクラウドスキルトレーニングを提供している。また、グローバル全体でも2025年までに2900万人にクラウドスキルに関するトレーニングを無償提供することを目指している。

近年、特に生成AIや機械学習に関わるスキル向上支援へのニーズが高まっていることから、2023年11月に生成AIスキルを習得できる無料トレーニング「AI Ready」の提供を開始。すでに50を超える日本語の教材がリリースされており、「AWS Skill Builder」にて、無料で視聴できる。

「新しいテクノロジーが普及する瞬間は、さまざまなチャンスが広がっています。そのチャンスを積極的に活用するために、そのテクノロジーに関わるスキルを磨き、リスクを恐れず新しい挑戦を始めていただきたいと考えています」と安田氏。

7割超のビジネスパーソンが2028年までに生成AIを活用予定

多くの企業にとって「生成AI活用」が身近な課題になりつつある現状は、調査からも明らかになっている。レポートによれば、日本の雇用主の79%、労働者の71%が「5年以内に生成AIを活用する」と回答している。

部門別にみると、日本では財務(80%)部門が最もAIの恩恵を受けるとみられ、続いてIT(79%)、ビジネスオペレーション(78%)が「今後5年間にAIを導⼊する⾒込み」と回答している。また、日本の雇用者と労働者は、仕事でAIを使うことによって生産性を38%向上できるとも予想。

さらに、アジア太平洋地域の労働者の83%がキャリアアップのためにAIスキルの習得に関心があり、AIの学習動機として、「仕事の効率化(59%)」「仕事の満⾜度向上(49%)」「昇進のスピードアップ(46%)」などを挙げている。アジア太平洋地域の雇用主は、「AIスキルを備えた労働者には33%以上の給与を上乗せする」、日本の雇用主は「15%⾼い給与を支払う意向」と回答しており、AI人材に対するニーズの高さがうかがえる。

生成AI活用、人材の採用と育成が課題

日本を含むアジア太平洋各国で、向こう5年間で急速に生成AIの活用が広がっていくことが予想される一方で、課題も浮き彫りになっている。

AI対応への急速な移⾏により、アジア太平洋地域全体で労働市場におけるAI人材が不足しており、日本の雇用者の68%がAIのスキルや専門知識を持つ人材の雇用は優先事項と考えているが、82%が採用に苦戦しているという。

また、アジア太平洋地域の雇用主の79%、日本の雇用主の68%が「AI人材育成プログラムを実施するための知識が不⾜している」と回答しており、AI人材の育成に課題を抱えている企業や、AIスキルの習得に興味はあるものの、その方法がわからない労働者も多いとみられる。

生成AIの基礎を無料で学べるコンテンツや非IT人材向けの認定資格も

こうした現状に対応すべく、AWSは次の3つのトレーニングサービスを提供している。

・AWS Skill Builder:自学自習ができるeラーニングソリューション
・クラスルームトレーニング:インストラクターが直接指導する講座
・AWS認定:知識・スキルの習得度合いを測る認定資格制度


「AWS Skill Builder」においては無料コンテンツもあるほか、「AWSで始める生成AI for Entry(生成AIに関する概要理解)」「Cloud for Beginners(AWS基礎を学ぶ前段のIT基礎)」など、非IT人材向けの入門レベル講座も拡充している。

また今回、生成AIに特化したクラスルームトレーニングとして「Developing Generative AI Applications on AWS」を新設。開発エンジニアを対象としたプログラムで、生成AI の概要、生成AI プロジェクトの計画、Amazon Bedrockの開始方法、プロンプトエンジニアリングの基礎、Amazon Bedrock とLangChainを使用した生成AI アプリケーションを構築するためのアーキテクチャパターンを2日間で学ぶことができる。

あわせて、生成AIに関連するAWS認定資格として、次の2つが英語とともに日本語でも新設される(2024年8月13日ベータ登録開始)。

・AWS Certified AI Practitioner (AIF)
非IT人材向けの基礎レベルの認定資格。AI、機械学習(ML)、生成AIのコンセプトやツールに精通していることを証明し、AIがもたらす機会の発⾒や技術チームとのスムーズな連携を実現する。

・AWS Certified Machine Learning Engineer - Associate (MLA)
技術職向けの認定資格で、AIソリューションやMLソリューションの構築、デプロイ、保守に必要なスキルを証明。モデルパフォーマンスの最適化、計算資源の管理、モデルのバージョンアップ、AIソリューションの保護といった重要なスキルを対象としている。

AWSのトレーニングサービス本部 本部長 岩田健一氏は、非IT人材向けの認定資格「AWS Certified AI Practitioner(AIF)」新設の意義をこう語る。

「エンジニアだけでなく、現場の方々がAIを勉強することによって、エポックな使い方、現場に寄り添った使い方が発見できたり、創造できたりすると考えます。初級コースを学習し、AWS Certified AI Practitionerに挑戦していただくことで、会社全体のレベルが上がっていくことを期待しています」

まとめ

まとめ

生成AIを最大限活用するためには、生成AIそのものだけでなく、関連する知識も含めた体系的・包括的な学習が求められる。また、生成AIを使って労働生産性の向上や新たな価値創出を実現するには、エンジニアと非エンジニアが「共通言語」を持ち、ビジネスの実態に即した生成AIの活用法を模索することも大事になってくる。

そのためには、非エンジニアも含め、組織全体で生成AIに関する知識習得に取り組むことが有効だと考えられる。組織全体のレベルアップを図る際は、AWSが提供する非IT人材向けの学習コンテンツや認定資格が一助となりそうだ。