進化するCanva 来日した共同創業者が語るAI連携と今後の展望
世界で2億4000万人が利用するグローバルデザインプラットフォーム「Canva」。2025年7月23日、同社共同創業者でありCPOでもあるキャメロン・アダムス氏が来日し、記者説明会を開催した。説明会では、外部生成AIサービスとの連携やプロ向けツールの買収など、進化するCanvaの最新戦略とともに、日本市場へのローカライズや成長について語られた。
Canvaの歩み「誰もが表現できる」を世界へ
まずアダムス氏は、これまでのCanvaの歩みについて解説した。Canvaは2012年にオーストラリアで誕生し、複雑なデザインツールのイメージを覆して「テンプレートを選ぶだけで完成する」「誰でもチームで使える」ことを特徴に、教育機関から企業まで利用を拡大してきた。現在では世界中で2億4000万人のユーザーが利用し、そのうち2600万人が有料ユーザーとなっており、年間30億ドルの収益を上げている。
なお、日本においては累計5億以上のデザインが作成されており、アダムス氏は「これは驚異的な数」と語った。日本は、世界の中でも最も早いペースでCanvaの利用者数が増えているという。
生成AI関連の外部連携とデザインのM&Aで創造性の拡張へ
Canvaは単なるデザインツールから、生成AIの利用を前提とした協業プラットフォームへと進化を遂げつつある。社内開発による独自モデルに加え、Googleと提携して動画生成モデルの提供を受けたり、Anthropic社が開発した対話型AIであるClaudeにCanvaでのデザイン作成を依頼できるようにしたりと、外部パートナーとの連携でAI関連の機能が著しく拡張した。
さらにCanvaは近年、プロ向けデザインツールを展開するAffinityを買収した。「Affinityはプロのデザイナーが利用できる最もパワフルなソフトウェアの一つといえるでしょう。CanvaとAffinityの連携で、プロのデザイナーとそうでない人を繋ぐエコシステムになれたら」とキャメロン氏。「素人でも使える」と「プロでも満足できる」の両立を追求したプラットフォームを目指す。
日本の職場で求められる高いデザインリテラシー
Canvaが発表した調査によれば、日本のビジネス現場では、非デザイナーにもデザインスキルが求められつつあるという。実に92%の日本のリーダーが、デザイン以外の職種でもそのスキルを重視していることがわかり、ビジュアルの重要性が日々の業務にまで浸透していることが浮き彫りとなった。
なお、日本のリーダーの90%がAIによってビジュアルコンテンツの質が向上したと認識しており、82%がコンテンツ制作ニーズの加速にAI活用ツールを既に活用していることも分かった。「つまり、人々がAIを積極的に活用し、コンテンツの拡張と質の向上に役立つソリューションを積極的に探している市場が既に存在しているということです」と、アダムス氏は分析する。最後に、Canvaが2年前に東京へ日本チームを設立したことが紹介され、アダムス氏のプレゼンテーションは締めくくられた。
Canva Japanの活動
続いてCanva JapanのCountry Managerである高橋敦志氏が登壇し、日本市場におけるCanvaのサービス展開を紹介した。日本市場では、特に画像生成やテキスト作成、背景除去などの機能が人気を集めており、SNS投稿画像の編集が全体の約1/3を占める主要な利用法となっている。また、教育領域での利用も広がっているという。現在、世界で約1億人の学生・教員がCanvaを活用しており、日本でも生徒の創造性を引き出すツールとして無料版が活用されている。
プレゼンテーション中盤、高橋氏は「シン・地元主義」という理念を掲げ、オーストラリア発のプロダクトでありながら、日本市場に合わせたローカライゼーションを重視していると宣言した。ふりがな機能の充実や、日本企業とのコラボレーションで日本人向けの素材を豊富に用意するなど、「日本のサービスなのかな?」と感じられるほど日本市場に適応したサービス提供を目指しているという。
これらの取り組みの結果、Canvaにおいて日本市場は世界トップ10に入るまでに成長した。
チュートリアルコンテンツ「デザインスクール」を開講予定
高橋氏は今後の展開として「デザインスクール」というチュートリアルコンテンツを、日本向けにドラマ仕立てで提供する予定であるとした。
「Canva Japanは2023年9月に法人を設立してからまだ2年経っていませんが、日本は非常に成長速度が速い市場です。今後も、より日本に特化したサービス展開を目指していきます」
地元らしさが息づくローカライズ、日本人の感性に寄り添う細やかな設計。Canvaはこれからもますます、オフィス担当者の頼れる相棒になりそうだ。











