SmartHR×CloudBrainsが「フリーランス新法」に関する勉強会を開催 業務委託管理における企業の課題と求められる対応とは
2025年6月、「フリーランス新法」施行後初めて、公正取引委員会が違反企業への勧告を行った。契約内容の明示義務などを定めた同法は、企業とフリーランスの関係に新たなルールを課すもので、各社における法令対応や契約管理の見直しが急務となっている。2025年7月17日に開かれた報道関係者向け勉強会では、SmartHRとそのグループ会社であるCloudBrainsが、フリーランス管理の現状や課題、今後の対応について解説。法令対応と効率化を両立させる、仕組みづくりの重要性が語られた。
フリーランス新法が制定された背景
勉強会ではまず、株式会社CloudBrains 代表取締役の眞壁雅彦氏が登壇し、「フリーランス新法」の背景と施⾏後の課題を解説した。フリーランスとは、自ら事業を営み、従業員を雇用せず、実店舗を持たない農林漁業従事者以外の働き手を指す。1990年代のインターネット普及以降、クラウドソーシングやシェアリングエコノミーの普及、コロナ禍でのテレワーク拡大を契機に、2020年時点で約462万人と急増した。
一方で、発注時に報酬や業務内容が明示されない、支払いが期日に行われないといったトラブルが急増し、2020年に行われた政府の調査では37.7%のフリーランスが何らかの紛争を経験。立場の弱さから3割が泣き寝入りを余儀なくされていた。
こうした問題意識を背景に、近年ではフリーランス保護の制度整備が急ピッチで進展し、2023年4月には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案(いわゆるフリーランス新法)」が可決、同年11月に施行された。
フリーランス新法が企業に課す7つの義務
新法は大きく「取引の適正化」と「就業環境の整備」に関わる7つの義務・禁止行為を定めている。とりわけ公正取引委員会が重視するのは「取引条件の明⽰義務」と「期⽇における報酬⽀払義務」の2つだ。
違反が疑われる場合には、調査→指導・助言→勧告→命令・公表→50万円以下の罰金という段階的措置が取られる。
施行後の2025年3月にはゲームソフト・アニメ制作・フィットネス業45社への行政指導、6月には大手出版社2社・楽器メーカーへの勧告が行われ、いずれに関しても必ず入っている指摘事項が「明示義務」「支払義務」の2つの未対応であると、眞壁氏は指摘した。
企業に求められる実務対応と「Lansmart by SmartHR」の活用
法令遵守の難しさに、規定が多く複雑なことがある。また、各部署が独自に契約を行っているため会社全体を俯瞰して違反を発見しにくい。属人的プロセスだけでは漏れや誤記を防ぎきれないため、システムの力を借りることが重要となる。眞壁氏は、業務委託管理クラウド「Lansmart by SmartHR」を導入することで、法令の専⾨家ではない実際の発注担当でも安心してフリーランスに対応できる仕組みが実現できるとした。
例えば、取引条件の明示については、フォームへの入力だけで必要7項目を網羅した発注書をすぐ生成できる。報酬の支払いについては、役務や納品の給付から60⽇以内の⽀払期⽇を超えそうな案件を⼀覧化し、アラートで通知して違反を予防する機能がある。なお、「Lansmart by SmartHR」は法令遵守対応と同時に帳票作成・消費税・源泉徴収計算・会計連携などもシステム上で行えるため、業務効率化も実現できるのが強みだ。
仕組み化が法令対応の鍵
続いて株式会社SmartHR コーポレート戦略本部の⻑⾕⼭京佑氏が、海外のフリーランス活用動向について解説した。
海外では2010年代からベンダーマネジメント市場が成熟し、WorkdayやSAPなどの大手HR企業が相次いでフリーランス管理サービスとのM&Aを進めてきた。正社員を中心としたタレントマネジメントだけでは、多様化した働き方をする外部人材を一元管理するのが難しいためだ。
日本市場では、2023年にフリー株式会社がエン・ジャパン株式会社から「pasture」事業を合併・買収。長谷山氏は、「働き方多様化の波を受け、今後さらに海外同様のトレンドに追従していくのではないか」と指摘した。さらに、「まずはフリーランス新法で定められた7つの義務にしっかり対応するというところで、お客様の法令遵守を徹底的に支援したい。将来的にはフリーランス人材と正社員人材を一体的に管理し、より高度な人材活用を目指せるとよいのでは」と語った。
最後のまとめとして、再び登壇した眞壁氏が「フリーランスとの適正取引を持続的に実現するには、チェックリストや人力監査を超えた『仕組み化』が不可欠です」と強調。「『Lansmart by SmartHR』の提供を通じて、業務委託管理の⾃動化と法令違反予防を1ツールで実現していきます」と締めくくった。
多様化する働き方の潮流を踏まえ、企業はルール遵守と効率化を両立させる仕組み構築が求められる。フリーランスとの健全な取引のため、まずは法令を遵守できているかどうか、現状の契約事項を確認することから始めてみよう。











