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プロが教える新社会人のための印象力アップ講座 第2回:新社会人のための“信頼される敬語”レッスン

2026.04.07
桑原 恵美子

本連載では、 “ディレクションもできるアナウンサー”として活躍しているフリーアナウンサーの井上智惠(いのうえ さとえ)氏が、新社会人が知っておくべきマナーの基本を5回にわたって指南。2回目は、新社会人のための敬語の基本を聞いた。バイト敬語や二重敬語を避けたい理由や、“恐れ入りますが”“差し支えなければ”といったクッション言葉がなぜ効くのか。現場で役立つ“実践的な敬語”を、さまざまな角度から解説する。

【過去の記事はこちら 第1回

敬語は、言葉を美しく包むラッピングのようなもの

新社会人の方々はもしかしたら敬語に、自分を守るための“盾”のようなイメージを持っているかもしれません。でも私は敬語を、自分の言葉を相手に気持ちよく受け取ってもらうための“ラッピング”のようなものだと思っています。「私はあなたを尊重しています」という気持ちを言葉に乗せ、相手との間に程よい距離感をつくるためのツールでもあります。ですから一番大切なのは、心の中に相手を尊重する気持ちを持つことです。

敬語の第一歩は「語尾を整えること」

新社会人が一番恐れていることのひとつが、「間違ったおかしな敬語を使ってしまうこと」ではないでしょうか。敬語はつきつめて考えるときりがないくらい、細かく厳密なルールがたくさんありますが、新社会人にとってまず大切なのは、語尾を「です」「ます」できちんと言い切ることです。

新社会人はまだまだ不安なことが多く、つい「〜じゃないですかね」「〜みたいな感じで」と、語尾を濁してしまいがちです。でも、「○○です」と短く言い切るだけで、変な敬語は入り込みにくくなります。逆に敬語を意識しすぎると、「〜になりますでございます」のように、自分でも意味が分からない表現になってしまうことがあります(私自身、新人時代にそうした失敗を経験しました)。だからこそ、あまり構えすぎず、シンプルな表現を心がけてほしいのです。多少言葉が間違っていても、一生懸命に伝えようとしている姿勢は相手に伝わります。それは新社会人ならではの強みでもありますから。

「語先後礼」を意識するだけで、丁寧で誠実なイメージに

相手を尊重する気持ちを伝えるには、話し方も大切ですが、私は“言葉”と“動作”を分けて考えることを意識しています。マナー研修などでもよく取り上げられますが、接客の場面では「いらっしゃいませ」と言いながら同時にお辞儀をするのではなく、まず言葉を伝えてから動作をする、というやり方があります。これは「語先後礼(ごせんごれい)」と呼ばれ、先に言葉を相手に届けてから、あとでお辞儀や動作を行うことで、より丁寧に伝わるとされています。たとえ敬語が完璧でなくても、きちんと話してから動作をするだけで、“丁寧で誠実な人だな”と感じてもらいやすくなるのです。

「話しながら動かない」ことを意識するだけで、ぐっと上品で落ち着いた印象になりますし、この順番ができていると、「自分は落ち着いてできている」という自信につながります。そしてその自信が相手にも自然に伝わり、結果として好印象につながるのではないでしょうか。

耳に馴染んだ「バイト敬語」にご注意を

飲食店やコンビニエンスストアで、「御注文の〇〇になります」「メニューのほう、おさげします」「〇〇でよろしかったでしょうか」といった言い方をよく耳にしますよね。これはアルバイト店員が多数を占める業種で広く使われていることから、「バイト敬語」とも呼ばれています。耳に馴染んでいるため、社会人になってからもつい使ってしまいがちですが、注意が必要です。

というのも、これらの言い回しは本来、接客において表現をやわらかくしたり、断定を避けたりするための“ぼかし言葉”ですが、ビジネスの場では責任の所在があいまいに聞こえたり、自信がないように感じられ、「当事者としてきちんと伝えていない」「主体性が弱い」と受け取られることもあるからです。

そもそも、「なります」「ほう」「よろしかった」は、本来不要なフレーズであり、不自然に聞こえる言葉遣い。本来「なります」は状態の変化を表す言葉なので、目の前にあるものを提示する際には不適切です。無意識に使っていると「『ほう』の人」というようにその不自然さだけが印象に残ってしまいがちですし、場合によっては「アルバイト言葉が抜けていない残念な人」と思われてしまうこともあります。「御注文の〇〇です」「メニューをおさげします」「〇〇でよろしいでしょうか」という言い方のほうがずっと分かりやすく、誠実に聞こえます。

何度も繰り返しますが、ビジネスシーンでは「ぼかさず、言い切る」「シンプルな表現を選ぶ」だけで、ぐっと信頼感のある話し方になるのです。

「おっしゃられる」のような二重敬語は、回りくどく聞こえる

シンプルな表現を選ぶことが大切、という意味で気を付けたいのが、「おっしゃられる」のように、「おっしゃる」「られる」と敬語を重ねた「二重敬語」です。確かに意味が通じないわけではありませんが、少し回りくどく聞こえてしまいます。「おっしゃった」や、丁寧な「お伝えになりました」などで十分、相手を尊重する気持ちは伝わります。何より、丁寧にしようとする姿勢が前に出過ぎて、かえって相手との距離が広がったり、会話のテンポが悪くなったりすることがあるのです。

新社会人が敬語を使う時に大切なのは、“丁寧にしよう”と意識しすぎないことであり、正しい敬語をシンプルに使うことが一番。難しい敬語を無理に使おうとせず、“重ねない”ことを意識するだけで、ぐっと自然な話し方になります。

新社会人がおぼえておくべき、3つの「クッション言葉」

新社会人が、言いにくいことを伝える時にぜひおぼえておきたいのが、内容を伝える前に添える前置きの「クッション言葉」です。「クッション言葉」には、本題に入る前に相手の“心の準備”をつくる役割があります。いきなり用件を切り出すと、内容が依頼やお断りだった場合、相手に強い衝撃を与えてしまうことがありますよね。つまり「クッション言葉」はその言葉どおり、その衝撃をやわらげる“緩衝材”のような存在なのです。

たとえば、最初に「お忙しいところ恐れ入りますが」「差し支えなければ」と一言添えるだけで、「あなたの状況を気にかけています」「あなたのお気持ちを配慮しています」というメッセージが伝わり、相手への敬意になります。私自身も、取材の現場で急なお願いをするときには、いきなり本題に入らず、「突然で失礼かもしれませんが」と前置きをしてから話すようにしています。

そうすることで、相手の心構えを整えてもらえるからです。また、「クッション言葉」は言葉だけでなく、表情や動作も大切です。申し訳なさそうな表情や、相手を気づかう態度と一緒に使うことで、言葉以上に気持ちが伝わります。だからこそ、ビジネスの場ではとても重要なのです。

「クッション言葉」は言葉だけでなく、表情や動作も大切

新社会人が最初に覚えるべき、万能な「クッション言葉」を挙げるとしたら、以下の3つです。

① 恐れ入りますが

相手の時間や手間をいただくことへの配慮を示す言葉で、依頼するときに使います。「お願いして申し訳ありません」という気持ちを添えられるのがポイントです。

使用例:「恐れ入りますが、本日中にこちらの資料に目を通していただけますでしょうか?」

② 差し支えなければ

相手の状況を尊重しながら、質問や確認をするときに使える表現です。聞きにくいことを尋ねる場面で特に効果があります。

使用例:「差し支えなければ、今回のプロジェクトの進行状況を教えていただけますか?」「差し支えなければ、ご希望の納期についてお伺いしてもよろしいでしょうか?」

③ あいにくですが(あいにくではございますが)

依頼や希望を断るときに使う言葉です。「本当は応えたいが、できない」という気持ちを伝え、関係性を損なわないための表現です。単に「無理です」「できません」と言うのではなく、「あいにくですが」と添えることで、「あなたの希望をかなえたいが、それができずに申し訳なく思っています」という気持ちが伝わります。

使用例:「あいにくではございますが、その時間帯は会議が入っております」

この3つを覚えておくだけで、頼む・聞く・断る、というビジネスの基本場面を、やわらかく乗り切ることができます。

敬語の知識と発声のトレーニングはセットで考える

敬語に自信がないと、声が自然とこもってしまいがち。話す内容に迷いがあると、声が喉の奥に引っ込むようになり、モゴモゴと聞こえてしまうのです。一方で、内容や言葉に自信があると、声は前に飛ぶようになります。このように、気持ちの状態と声の出方は、とても密接につながっています。良い敬語や正しい言葉を知っていると、安心して話せるようになり、その結果、声も良くなります。ですから、敬語の知識と発声のトレーニングは、セットで考えるとよいと思います。

まず大切なのは、迷いなく言葉を選ぶこと。難しい敬語を使おうとせず、「です」「ます」調で言い切るだけでも、声は安定し、信頼感のある話し方になります。緊張すると、普段できることもできなくなってしまいますよね。だからこそ、「これだけ守れば大丈夫」という敬語の基本を身につけておくことが、自信につながります。

会議やプレゼンでも、単に原稿を読んでいるだけのように聞こえる人と、内容を自分の言葉としてしっかり伝えている人がいます。その違いは、「自分が何を伝えたいか」をきちんと理解しているかどうかです。「何を伝えたいのか」を自分の中で整理できていれば、敬語の細かいミスは、実はそれほど相手の印象を左右しません。大切なのは、本当に伝えたいと思っていることを、はっきりした声で伝えること。それが一番、信頼感のある話し方につながるのだと思います。

敬語の知識と発声のトレーニングは、セットで考えよう

アナウンサーは過剰な敬語を使わない

新人の頃は私も、「社会人になったのだから、きちんとした敬語を使わなければ」と意識しすぎて、「企画書でございます」など、必要以上にかしこまった言い方をしてしまい、上司に「ございますって何?」と笑われたこともありました。

テレビのアナウンサーは、実は普段そこまで堅い敬語を使いません。「存じます」「申し上げます」「でございます」といった表現は、式典や特別な場では使いますが、日常の仕事ではむしろ避けるように教えられます。実際、上司からも「です・ます調でいい」と注意されました。過剰な敬語を使うと、相手との距離が離れすぎてしまうことがあります。また、テレビの現場では「尺がもったいない」「中身が入ってこない」と言われることもあります。この経験から、敬語は自分を飾るためのものではなく、相手への敬意を、ちょうどよい距離感で伝えるためのものだと分かりました。

頭の中で「ひとり敬語レッスン」が効果的

とっさのときに正しい敬語が口から出るようにするには、特別な勉強をするよりも、頭の中で「ひとり敬語レッスン」をするのがおすすめです。たとえば、「お腹すいたな」と思ったら「お腹が空きました」、「疲れた」と思ったら「お疲れさまです、自分」というように、日常の独り言を敬語に言い換えてみるのです。声に出さなくても、頭の中で練習するだけで、自然と敬語が身についていきます。

敬語は完璧でなくていい

敬語を使う上で何よりも大切なのは、「間違えないこと」ではありません。「あなたに丁寧に接したい」「きちんと向き合いたい」という姿勢です。新人のうちは、多少間違えても構いません。一生懸命に伝えようとする気持ちは、相手にきちんと伝わりますし、それは若手ならではの強みでもあります。

まずはこの2つに気をつけましょう。

・語尾の「です」「ます」を意識する
・丁寧に話そうとする姿勢を持つ


その積み重ねが、最初の信頼をつくる一歩になります。

プロフィール
井上 智惠(いのうえ さとえ)

大学卒業後、NHK徳島にてニュース番組、情報番組のキャスター他、ラジオニュース、中継など幅広く担当。2012年からはNHK水戸に移り、観覧者を巻き込んだ公開生放送番組のメインキャスターを5年間務める。その他「おはよう日本」ローカルパートのキャスターや渋谷の放送センターにて首都圏枠の「ひるまえほっと」にリポーター兼ディレクターとして出演。NHKに在籍した10年間でディレクター業務を含め複数の賞を受賞。現在はディレクションのできるアナウンサーとして活動を行う一方、株式会社トークナビの女子アナ広報室に所属し、企業のメディアプロモーションを行っている。