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請求から「作業」をなくそう。〜今だから考えるデジタルインボイスの利活用〜 presented by デジタルインボイス推進協議会(EIPA)

2022.11.04
オフィスのミカタ編集部

10月28日、日本におけるデジタルインボイスの標準仕様が更新 。これに合わせてデジタルインボイス推進協議会(EIPA)は同日、都内・赤坂にて会見を開いた。メディア・ステークホルダーを含めた600名がオンライン・オフラインで参加し、EIPAとしての取り組みを視聴。EIPAは、デジタル庁による標準仕様更新をふまえ、民間団体としてデジタルインボイスの普及に引き続き努め、バックオフィス人員を「作業」から解放することを目指す旨を述べた。

デジタルインボイス推進協議会(EIPA):デジタルインボイスの標準仕様を策定・実証し、普及促進させることを目的として設立された協議会。商取引全体のデジタル化と生産性向上への貢献を目指していて、199社・8名(10月28日現在)が会員として名を連ねる。

デジタルインボイスの普及に向けて、官民が手を組んだ

デジタル庁がデジタルインボイスの標準仕様を更新したことに合わせて、デジタルインボイス推進協議会(EIPA)は、デジタルインボイス利活用に関する会見を行った。河野太郎デジタル大臣のメッセージに続き、EIPAの代表幹事法人である弥生・岡本浩一郎氏の基調講演や、協議会会員およびデジタル庁・加藤博之氏によるパネルディスカッションが行われた。

弥生・岡本氏の基調講演では、単に紙を電子データにするだけの電子化ではなく、最初から最後までデータでのやりとりを行うデジタル化によって、圧倒的な業務効率化につながることが説明された。

岡本氏は、日本の課題として労働力人口の減少を挙げた上で、生産性の向上が不可避でありデジタル化はその有効な手段であるとする。海外ではデジタルインボイスの普及に成功していることをEIPA発足時に行ったリサーチで実感し、その潮流を日本にも広めようと決意したのだという。

同リサーチなどを通して、請求書などの電子文書をネットワーク上でやりとりする標準仕様のPeppolを日本でも採用すべきだと判断し、平井卓也デジタル大臣(当時)にEIPAとしての提言を行った。平井氏は全面的に賛同し、Peppolをベースとしたデジタルインボイスの普及を「デジタル庁のフラッグシッププロジェクト」と位置づけた。牧島かれん大臣(当時)や河野大臣にもしっかりと引き継がれ、政府としての取り組みが進められてきた。

そして会見が開かれた2022年10月28日、デジタル庁はPeppol BIS Standard Invoice JP PINT Version 1.0を公表した。さらにこのデジタルインボイスのやりとりに必要不可欠なアクセスポイントプロバイダーには、会見時点で15社が認定されている。デジタル庁・EIPAをはじめとする官民が力を合わせて行ってきた施策が実を結び、ベンダー各社がサービスを提供する準備が整った形だ。「バトンがデジタル庁から民間に戻ってきた」と岡本氏は話し、EIPAとしてデジタルインボイスを推進する姿勢を見せた。

EIPAでは、デジタルインボイスを通じて(1)法令改正対応(2)業務のデジタル化を実現してほしいと考えている。インボイス制度開始をはじめとした法令改正に対して、デジタルインボイスを使うことで日本の業務慣行に対応しつつ法令に則った請求業務を実現させたい。さらに、EDIが普及しておらずアナログな請求業務が行われている中小企業において、たとえば入金消込の自動化、リアルタイムなデータ利活用など、後続業務の効率化も図りたいというのがEIPAのビジョンだ。

デジタル庁・加藤氏を交えた、協議会会員によるパネルディスカッション

デジタル庁・加藤氏を交えた、協議会会員によるパネルディスカッション

デジタル庁・加藤氏を交えた、協議会会員によるパネルディスカッション

基調講演に続き、パネルディスカッションが行われた。デジタル庁・加藤氏がモデレーターを務め、EIPA会員4社が登壇した。

TKC・富永倫教氏は、デジタルインボイスによって仕訳データの入力が自動化されるなど、作業負担軽減の効果が見込まれるとした。さらに、利用可能なデータの粒度が細かくなることで会計データがリッチになり今以上に経営に活用できるとして、周辺業務への波及効果にも言及した。またアクセスポイントプロバイダーとしても参画し、社会的インフラとしての役目を果たしたいとした。

マネーフォワード・山田一也氏は、支払いデータのスムーズな処理をはじめとした業務効率化が見込まれることはもちろん、たとえば同社サービスに蓄積されたデータを用いた新たなサービス展開によるユーザーへの価値提供を構想しているという。デジタルインボイスを活用することで業務ツールと金融ツールの隔たりを乗り越えられるはずだとして、それが実現するよう取り組みを進めたいとした。

ROBOT PAYMENT・藤田豪人氏は、デジタルインボイスが導入された後の展望として、たとえばインボイスの受け手側にとって便利な、後払い決済のBNPL、カード会社などを介した支払いスキームBPSPなどの展開が容易になるなど、信憑性のあるデータを利用できるからこその可能性を示した。また、登録番号が付与されることにも言及、データの整理を進められることによる付加価値創出を期待している模様だ。

インフォマート・中島健氏は、同社が提供するプラットフォームのユーザー同士だけではなく、競合他社のサービスを利用するユーザーともデータ連携を行うメリットを語った。携帯電話では事業会社を超えた通話が当たり前に可能だという例を出しつつ、社会全体でのデータ連携が進むことで日本経済が大きく前進するはずだと主張。同社がプラットフォームを運営する中で蓄積された知見も活かしつつ、国・ベンダーで協力してデジタルインボイスを広めていきたいと述べた。

こうした意見を受けて、デジタル庁・加藤氏は、標準化といえば全員が同じものを使うことをイメージされがちだが、このプロジェクトはその限りではないと指摘。様々な事業者・サービスの存在を前提としつつ、つながることが大切だとまとめた。

リリースに向けた動きが本格化 中にはリリース時期を示した企業も

基調講演・パネルディスカッションに続き、請求書ベンダー15社によるツール説明ピッチが行われた。デジタル庁・加藤氏は本ピッチを受けて、リリース時期を明言した企業があったことに触れ、リアルに動き出していることに対する期待感を示した。

弥生・岡本氏は、歴史を振り返れば、「標準化」といいつつ複数の陣営に分かれてどちらに付くかを選ばなければならなかった業界・製品もあったとする。しかしデジタルインボイスに関しては、デジタル庁・EIPAが牽引する形で一枚岩の状態だと締めくくった。

今回公開された規格は、デジタルインボイスが広く使われてこそ意義が深まるものだ。デジタル庁・EIPAの活動に期待するとともに、ユーザーとしてもデジタルインボイスへの移行準備を進めたい。