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2024年夏季賞与動向、前年との変化は? TDB調査

2024.06.14

帝国データバンク(以下:TDB)は、2024年夏季賞与に関するアンケートを実施した。ここでは調査結果の概要についてお伝えする。

調査概要

調査期間:2024年6月7日〜11日
有効回答企業数:1021社
調査方法:インターネット調査
出典元:2024年夏季賞与の動向アンケート(帝国データバンク)

夏季賞与が個人消費回復につながるか

2024年の春闘では、大企業で満額回答が相次いだ。賃金と物価の好循環が強まり、景気の本格的な回復が期待されるなか、TDBは厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査」に注目。調査結果からは、2024年4月の就業者1人当たりの基本給などにあたる所定内給与は、前年同月比2.3%増と約30年ぶりの高い伸び率となったことがわかっている。一方で、物価の変動を反映した実質賃金は、過去最長の25カ月連続で減少する結果となっており、依然として物価の上昇に賃上げが追いついていない状況が続いていることを、TDBは指摘する。

実質賃金の減少が続くことにより個人消費への下押し圧力が強まるなか、個人消費を上向かせるひとつのポイントとなるのが、夏のボーナスだ。そこでTDBは、2024年夏季賞与についてアンケートを実施した。

約4割の企業が「前年より増加」と回答

約4割の企業が「前年より増加」と回答

TDBに調査によると、2024 年の夏季賞与1の支給状況について「賞与はあり、増加する」と回答した企業の割合は39.5%となり、前年と比較して2.1ポイント増加している。

「賞与はあり、変わらない(34.2%:同2.2 ポイント減)」「賞与はあるが、減少する(11.3%:同2.0ポイント増)」を合計すると「賞与あり」とする企業は85.0%となり、前年(83.1%)から1.9ポイント上昇。一方で「賞与はない」企業は10.3%(同0.9ポイント減)となっている。

TDBによれば「賞与はあり、増加する」とした企業からは、業績の回復をあげた企業が多数みられているという。一方で、業績は改善していないものの、物価高騰に対する従業員の経済的負担の軽減や従業員のモチベーション維持を理由に賞与を増やす企業も少なくないようだ。また、ベースアップによって賞与の支給額も増加するとの声もあがる一方で、賃上げ率が低かったことから、賞与での還元を考えるという声も聞かれているという。

なお、賞与が減少する企業では、原料費の高騰などによる収益悪化を理由にあげる企業が多いことがわかった。

規模別で賞与額増加の割合や支給額に格差

規模別で賞与額増加の割合や支給額に格差

TDBは規模別に「賞与はあり、増加する」企業の割合を分析。「大企業」は前年比4.9ポイント増の47.2%となり、全体(39.5%)を7.7 ポイント上回ったことを明らかにした。「中小企業(38.2%:同1.7ポイント増)」「小規模企業(29.2%:同1.9ポイント増)」とでは、前年と比べて夏季賞与が増加すると回答した企業の割合が「大企業」よりも小幅な上昇にとどまっている。また「小規模企業」では夏季賞与が「増加」すると回答した企業の割合が全体より約10ポイント低いことも判明した。

さらにTDB、2024年の夏季賞与の従業員1人当たり平均支給額について、前年からの増減を尋ねた結果を報告。夏季賞与の1人当たり支給額は前年から平均で+2.0%となり、前年(+2.4%)を0.4ポイント下回っている。規模別では「大企業(+4.1%:前年比0.6ポイント増)」「中小企業(+1.7%:同0.5ポイント減)」となり「中小企業」の増加率は「大企業」を2.4ポイント下回った。

まとめ

本調査からは、2024年夏季賞与について約4割は支給額が「増加」する見込みであり、支給を予定する企業は85%にのぼることがわかった。一方で、企業規模による格差は否めず、中小企業では厳しい状況が続いていることもうかがえる。

TDBは「賞与支給予定の企業は多いものの、今後はエネルギー価格の高騰に対する政府の補助金の終了などによる電気代の値上がりや、円安の進行などを背景とした食品の値上げなどにより、消費拡大への効果は限定的にとどまる可能性もある。物価の高騰に負けない賞与を含む賃金の上昇、および「持続的な賃上げ」が実現できるかが注目されている」との見解を示した。

個人消費の拡大への効果が大きく見込めないなか、特に中小企業にとっては今後も厳しい状況が続くと言わざるを得ないだろう。TDBの調査(※)では、2024年5月は人手不足による倒産が前年同月比106.7%と倍増。2024年1-5月の累計も前年同期を大幅に上回り、過去最多ペースでの推移と報告されている。人材確保のためには賃上げや賞与の支給が効果的とも考えられるが、無理な賃上げ等が経営に与えるインパクトは大きい。いかに賃上げ等の原資を確保するか、引き続き最大限の努力が求められそうだ。

※出典元:2024年 5月報 倒産件数、12年ぶりの1000件超(帝国データバンク)