市場退出率「情報通信業」がトップに TSR調査
株式会社東京商工リサーチ(以下:TSR)は、保有する企業データベースから「倒産(再建型を除く)」「休廃業・解散」が判明した普通法人(以下:退出法人)を抽出し、普通法人企業の「退出件数(倒産+休廃業・解散件数)」を集計・分析。2023年「退出法人(倒産+休廃業・解散)」動向調査の結果を報告した。
2023年の「退出法人」の動向
TSRによれば、2023年の退出法人は4万8444社(前年比1.8%増)で、2013年以降の11年間で最多を更新。2013年の退出法人数を基準(指数=100)とした2023年の退出法人指数を見てみると、139.7と2013年以降の最高を記録しているという。
前年まではコロナ禍で先行きの見通しが厳しい企業、代表者が高齢の企業の後継者難などで「休廃業・解散」が退出件数の増加が見られていた。2023年、普通法人の「休廃業・解散」件数は減少したが、コロナ禍の資金繰り支援効果が希薄化し、さらに空前の物価高、人手不足など複合的な要因で「倒産」が大幅に増加したことが、退出法人数を押し上げた要因と推察される。ただし、母数となる普通法人数が増加していることから、退出法人率としては前年と同水準の1.65%であった。
産業別の退出率トップは、前年と同じ「情報通信業(3.46%)」。2013年と比較すると、退出指数は190.5で、11年間で2倍近くに上昇したことになる。また、飼料や肥料を主に扱う農・林・漁・鉱業では、円安や物価高、物流費などコストアップが各産業の重しになっているという。退出指数は172.6で、前年より25.5ポイントアップと上昇幅が最大だった。
TSRは「2024年版中小企業白書(中小企業庁)」において、2022年度全業種の「廃業率」は3.3%で、前年の3.1%からわずかに上昇したが、2009年の4.7%をピークに低下傾向にあることに着目。「雇用保険事業年報」を基に事業所単位で集計する中小企業白書と「倒産」と「休廃業・解散」を企業単位で集計した本調査とでは、算出基準が異なることを解説した。
参考:2024年版「中小企業白書」全文(中小企業庁)
まとめ
TSRは現状と今後について「足元で過剰債務の解消にめどが立たない企業も多く、社会保険料・税金滞納に起因する倒産も急増している。支援の網からこぼれ落ち、経営再建が見込めない企業を中心に、2024年以降も法人の退出率は高水準で推移する可能性が高い」とコメントしている。
原料価格や燃料費、人件費などの上昇が中小企業の収益を圧迫する中、政府は企業に自立・自走を求める。特に厳しい状況にある中小企業を中心に、より一層の経営努力が求められることになりそうだ。