正社員の人手不足割合は高止まり、非正社員の不足解消は「103万円の壁」見直しがキーに? TDB調査
株式会社帝国データバンク(以下:TDB)が、2024年10月に行った「人手不足に対する企業の動向調査」の結果を報告した。人手不足が日本全体の社会問題となる中で、正社員が不足している企業の割合は51.7%と高止まりが続いているという。
調査概要
調査期間:2024年10月18日~10月31日
調査対象:全国2万7008社
有効回答企業数:1万1133社(回答率41.2%)
出典元:人手不足に対する企業の動向調査(2024年10月)(株式会社帝国データバンク)
高止まりが続く正社員不足の割合
TDBの発表によれば、正社員が不足している企業の割合は51.7%で、高止まりが続いているという。
正社員の人手不足に関して業種別でみると、SE不足が深刻な「情報サービス(70.2%)」がトップで、業種別では唯一の7割超だという。7割に迫る高水準となったのは「メンテナンス・警備・検査(69.7%)」「建設(69.6%)」で、そのほか「運輸・倉庫(65.8%)」「金融(67.1%)」など5業種が6割台となった。
非正社員の業種別は「飲食店」が最多
非正社員の人手不足割合は29.5%で、13カ月連続で前月を下回ったという。業種別にみると「飲食店(64.3%)」が最も多く、次いで「旅館・ホテル(60.9%)」が高水準となったことが報告されている。
以下「人材派遣・紹介(55.2%)」「メンテナンス・警備・検査(54.1%)」が5割台で続き「各種商品小売(48.9%)」も高水準ではあったものの、上位10業種中9業種で前年同月から低下したという。
飲食店と旅館・ホテルにおいては、「アフターコロナ」が到来してから深刻な人手不足が続いたものの、2024年に入って以降は緩やかな改善傾向が見られているようだ。TDBは 「業務効率化に向けたツールやスポットワークなど多様な働き方の普及が、人手不足の解消に寄与している背景の一つとして考えられる」との考察を示している。
まとめ
政府は2023年の段階から「2030年代半ばまでに最低賃金の全国加重平均1500円を目指す」と表明。人件費の増加に対応しきれない企業では、人手不足にさらなる拍車がかかるとの懸念もある。
こうした中、TDBは今回のレポートでいわゆる年収「103万円の壁」に代表される所得税の基礎控除合計の見直しに着目。控除合計の上限の見直しが労働時間の拡大につながれば、特に非正規社員における人手不足の解消が期待できるとの考えを示している。さらに同社が11月8日~12日に行った企業アンケートでは、「日本の社会全体にとって『103面円の壁』引き上げをどう考えるか」という問いに対して、「賛成」67.8%、「反対」3.9%、103万円の壁自体を「撤廃すべき」が21.9%だったという(有効回答企業数:1691社)(※1)。
合わせてTDBの別の調査によれば、人手不足による倒産は2024年度上半期で163件発生し、年度として過去最多を更新した2023年をさらに上回るペースで急増しているという(※2)。人手不足の経営へのダメージは一層深刻化していると考えられ、対策は急務だ。こうした状況も踏まえて、自社の計画を見直す機会としていただきたい。
※1 出典元:「103万円の壁」引き上げに対する企業アンケート(帝国データバンク)
※2 出典元:人手不足倒産の動向調査(2024年度上半期)(帝国データバンク)