「従業員退職型」の倒産が前年比1.6倍に急増、2025年1-7月 TDB調査
株式会社帝国データバンク(以下:TDB)は、人手不足による倒産のうち「従業員の退職を要因とした人手不足(従業員退職型)」の倒産発生状況について調査・分析を行った。なお、2024年以前の数値は最新の情報を基に再集計を実施している。
調査概要
集計期間:2013年1月~2025年7月31日
集計対象:負債1000万円以上・法的整理による倒産
出典元:「従業員退職型」の倒産動向(2025年1-7月)(株式会社帝国データバンク)
従業員の「転退職」による人手不足倒産が前年比1.6倍に急増
TDBは2025年1-7月に判明した人手不足倒産251件のうち、74件が従業員や経営幹部などの退職が直接・間接的に起因した「従業員退職型」に該当すると発表した。前年同期(46件)から28件(約6割)増と急増していることが判明。TDBはこのペースで推移すれば、集計可能な2013年以降で最多だった2024年(90件)を大幅に上回り、初めて年間100件に到達することが確実であると報告した。
業種別にみると最も多いのは「サービス業(19件/25.7%)」で、2013年以降、1-7月ベースで最多を更新している。ほかには人手不足の状態が慢性化しているソフトウェア開発をはじめとするIT産業や映像制作などの業界が目立つという。
次いで多いのが「建設業(17件)」で、そのほかには「製造業」「卸売業」「運輸・通信業」でも2025年1-7月の累計でいずれも過去最多に。従業員の退職が倒産の引き金になるケースが、幅広い業種に広がっていることが明らかになった。
また、TDBは不動産仲介のウィルプライズ(東京、2025年4月破産)の事例に着目。同社は業績悪化にともない、給与引き下げを実施。その結果、従業員の退職が相次ぎ、事業継続が困難となったため倒産している。このように、満足感のある給与水準を提供できないことが要因の「賃上げ難倒産」も発生していることを指摘している。
まとめ
人材の獲得・定着において賃上げが不可欠となりつつある今「待遇改善をしない」という判断が人材流出リスクを引き上げることへとつながっている。そうした中で急増する「従業員退職型倒産」は、今年初めて100件に到達する見込みだ。
給与の引き下げが要因の倒産も発生しており、従業員にとって待遇改善がいかに重要であるかが改めて示唆されたと言える。しかし、賃上げの原資が十分に確保できないまま賃上げを行えば、いずれにせよ事業の継続は難しい。余力が少ない中小企業では、より厳しい状況であることが推察される。














