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長時間労働の是正と副業解禁の矛盾。上手な副業とこれからの働き方

 「働き方改革」の中で正社員として働いている方にとって、最も大きく関係しているのは「時間外労働の上限規制」ではないでしょうか。

 年度別の世帯年収が、平成12年は620万程度だったのが、平成21年には543万になっています。子供の教育費・親への仕送り(夫婦両方の親・祖父母等含む)・自分たちの老後の蓄え・食費・各種税金等々を考えると、子供を預けての共働きは必須となります。

 そんな中、「残業代」を収入の一部として貴重な生活費となっている場合、この長時間労働見直しは家計に大きく影響します。「早く帰ってくるなら他でバイトでもして!」と言われている方も多いのでは・・。

 今回は、そんな「時間外労働の上限規制」と「副業」の矛盾点に焦点を当てたいと思います。

長時間労働見直しと副業解禁の矛盾

 会社側が「副業解禁」を容認した場合、当然個人としては「バイト」などを考えることと思います。

 しかし、ちょっと待ってください。

 確かに1日のうちにA社で8時間労働し、その後B社で働く場合は、B社からもらう賃金には時間外手当がつきます。しかし、過重労働で過労死した場合、労災保険の保証が受けられる過労死認定基準「月平均80時間」は、2社合算では要件を満たしません。つまり、2社通算で残業80時間を超えて働き、仮に過労死したとしても労災認定は受けられないのです。

 一方、企業の人事担当者も「副業解禁によって長時間労働になる」ことを懸念しています。また、副業者の労働時間を把握しなければならない為、副業先と連携して労働時間管理を別途行わなければなりません。この他にも以下の様な懸念点もあります。

 ・同業他社での副業による情報漏洩のリスク
 ・副業先への転職リスク
 ・副業による長時間労働による弊害(注意力散漫や集中力欠如など)
 ・就業中に倒れた場合の労災認定の複雑化

 企業も従業員も、安易に「副業解禁」を取り入れることは、様々なリスクを生むのではないかと考えます。

副業解禁の目的

 そもそも、「キャリアの複線化」「能力・スキルを有する企業人材の活躍の場の拡大」などが「副業解禁」の目的です。

 しかし、「人件費の抑制」を狙いとしている企業もあることと思います。
 実際に時間外手当を生活の一部として使っていた労働者側からみれば「人件費の抑制」と捉えることと思います。また、業務量が多く残業をしなければ終わらない場合、早く帰ればその分自分に跳ね返って来ますから、実際には帰ることができない為「サービス残業」となる事が懸念されます。

 「副業してもいいとはいえ、どこで副業したらいいのやら」
 「残業するなと言うけれど、結局やらなきゃいけないから内緒でやるしかない・・」
 「8時間労働してその後移動・・立ちっぱなしの仕事でバイトかな・・」

 労働者側の本音はこんなところでしょうか。私自身「副業」を考えた時に何をするかと問われたら、コンビニでバイト・・と答えるかもしれません。

副業のメリット・デメリット

 副業解禁の本来の目的を基に、メリットをあげてみます。
 ・本業を持ったまま別の仕事に就くことができ、起業、独立のための土台づくりが出来る
 ・安定的な収入を得つつ、自らやりたい仕事に挑戦することができる。
 ・新たなスキルや知識、人脈を獲得することができる。
 ・所得の増加が見込める
 きちんと考えて副業をすれば、上記のようなメリットが考えられます。

 一方で副業を推進する企業側のメリットはどうでしょうか。
 ・従業員が社内では得られない知識やスキルを得られる
 ・従業員が社内では得られない人脈を獲得し事業の貢献に繋がるかもしれない
 ・従業員の自律性、自主性を促す
 ・起業や独立を希望する従業員と共に、新たな協業による事業拡大の可能性が広がる
 人件費削減だけを主体としないやり方をすれば、優秀な人材育成にも繋げる事が出来ると考えられます。

上手な副業とこれからの働き方

 「自分の知識や経験、スキルをもっと広く活用したい」と考える方も沢山います。安易に「どこかでバイトして稼ごう」といった副業は、先に述べたように「結果、過重労働」につながるリスクをはらんでいます。

 しかし、「自分の知識や経験を活かせる副業がしたい」「今の会社だけではなく、もっと広く役に立ちたい」と考え、そうした副業を見つけることが出来たら、企業にとっても従業員にとっても良い形になるのではないかと考えます。
 
 まずは単なるお金の為だけではなく、自分が何のために副業をするのかをきちんと考える必要があると思います。

 企業側も、副業先との連携を考えると、企業側から斡旋する方法を考えるとよいのかもしれません。子会社や関連会社・提携会社との連携などにより、上手な副業制度策定が出来れば、従業員の離脱防止にも役立つかと思います。

 人材不足、人手不足の世の中です。
 副業解禁を皮切りに上手な副業を可能とする為、当社も微力ながらお手伝いが出来たらと考えているところです。

 
<田頭 誠 氏:その他コラム記事>
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