コミュニティビルダー&コミュニティマネージャーによる「テレワーク時代の『コミュニティ』概論」~「良いコミュニティ」に必要なものとは?~
「Afterコロナ」の世界では、いまだに対面でのつながりづくりやコミュニケーションのための場を持つことに抵抗を持つ人が多いかと思います。それにともない、寂しさや孤独感、今までの生活との違いによるストレスを感じている人も多いのではないでしょうか。働くうえでも、近距離での密なコミュニケーションをとれないことで不便を感じているケースがあると思います。
今回から4回に分け、このような時流の中で人と人とのつながりや拠り所づくりに今後重要となってくる、「テレワーク時代の『コミュニティ』」についてお話しします。
そもそも「コミュニティ」とは何か
前回の記事でもお話ししましたが、コミュニティとは広義で捉えると人の集合体を表す単語です。家族や職場・部活など、本来どこにでもあり、誰でも1つは所属しているものではあるのですが、コミュニティビルダー・コミュニティマネージャー・コミュニティデザイナーなど、コミュニティを生業にしている方々が取り組む「コミュニティ」とは意味合いが変わってきます。
さまざまな定義はありますが、株式会社ニット・YADOKARI株式会社にコミュニティの専門家としてジョインしている私は、「コミュニティ」を下記と定義しております。
① 共通目的を持ち、シェアされていること
② 新しい価値が生まれる場であること
③ 人だけでなく、集合体を繋げる存在
※集合体・・・コミュニティや場・まち・法人など
① 共通目的を持ち、シェアされていること
持続的に活動するコミュニティの大半は、何か問題意識・共通の達成したいものがあって、実現に向けて設立されるもの。「なんのために?」あるいは「何を解決するために?」コミュニティがあるのか。この視点や課題意識がメンバー間でシェアされているとコミュニティの力が発揮されます。
② 新しい価値が生まれる場であること
コミュニティはよく「焚火」に例えられることがあります。火種(価値)が生まれることでコミュニティ全体の動きが活性化されてコミュニティの力が増します。つまり、この新しい価値を生み出すことで、これまで実現できていなかった課題の解消や理想の姿に到達することができます。一方で、必ずしも大きな価値である必要はありません。メンバーの誰かにとって行動変異を起こすキッカケを生みだせただけでも、十分な価値発揮と考えています。
③ 人だけでなく、集合体を繋げる存在
ここでは「繋げる」と記載していますが、「巻き込み力」を指しています。どんなに優秀な人や組織であっても単体で課題の解消をしたり、新しい価値創造を起こしたりすることは難しいもの。「焚火」と同様に新しい薪(賛同してくれる方々)を絶えず加えていき、新しい価値を生み出す流れを作る存在こそがコミュニティだと考えています。
「コミュニティ」が果たす役割とは?
ではなぜ、コミュニティを上記3つの定義で置いているのか。もちろん前提として、人々の拠り所としての「コミュニティ」が作られることがありますし、これも大切で素晴らしい役割の1つです。ただ、私は「コミュニティ」はもっと可能性を秘めた存在だと思っています。その可能性とは「1人では出来ない何かを実現する手段」になるということ。実現可能性を最大限高めることができるからこそ、「コミュニティ」の存在は絶大だと考えています。これは図に示した通り、プロジェクトに置き換えるとわかりやすいかもしれません。
1人の力では決して実現することが困難なことでも、同じ気持ちをもった仲間を見つけて、より多くの人を巻き込んでいく。やれることも広がりつつ、多くの方や団体の助けを受けることができて、結果としてやりたいことが実現できるようになります。当然、単にコミュニティが生まれたからといってこのような動きにはなりません。この動きを膨らませていくには、「コミュニティ」もさらにステップアップしていく必要があります。
「コミュニティ」の理想形は?
「コミュニティ」の理想形とはどの状態なのか?それは、「新しい価値を生み出し、これまでできなかったことが実現できるようになっている状態」に近づけられるかだと考えています。この状態を実現するためにも、図で示したように5つの状態を満たしていることが理想です。それぞれが具体的にどういった状態であるかは次回以降で詳しくお話するとして、おさえておかなければいけないことは、上質なコミュニティが自然発生することは極めてめずらしいということです。もし仮に、上質なコミュニティが立ち上がったとしても、自発的にこの理想の状態になりません。理想の状態にするためには、何かしらの仕掛け等が必要になってきます。では誰がこの理想の状態に近づけるのでしょうか?
コミュニティを支える人たちの役割
この理想形に育て上げる存在こそが、主に、「コミュニティビルダー」「コミュニティマネージャー」「コミュニティデザイナー」と呼ばれるコミュニティを生業にしている方々になります。私は、YADOKARI株式会社でチーフコミュニティビルダー、株式会社ニットでコミュニティマネージャーとして働いていますが、それぞれの役職には図で見ていただいてもわかる通り大きな違いがあります。
端的に言うと、
コミュニティビルダー
コミュニティ (人の集合体) を、ビルドする(作り出す)人。(0→1)
コミュニティマネージャー
コミュニティ(人の集合体)を、マネージする(管理する) 人。(1→100に育てる)
コミュニティデザイナー
コミュニティ (人の集合体) を、デザインする(描いて導く)人。機能していなかった既存コミュニティを自走するよう設計する役割。
となります。
例えば、自治体やディベロッパー等で「公園・憩いの広場などのコミュニティスペースを作ってみたが人が集まらない」という課題が挙がることがありますが、この「人が集まらない」などの課題に対して解決策を考え、どのようなコミュニティを作るかの戦略設計をし、「人が集まる」きっかけ(課題解決の流れ)を作り出して、新しい価値や考えが生まれる場へと展望させるのが「コミュニティビルダー」の役割。
次にでき上がったコミュニティをどうやって発展させるか考えるのが「コミュニティマネージャー」。例えば、「シェアオフィスで会員間のコミュニケーションからビジネス創造につなげ、シェアオフィスの新たな価値を生み出したい」という目標を持ったコミュニティがあるとします。しかし、実際はなかなか会員内での交流が生まれていないし、目標達成に至っていない状況。このコミュニティに対して、目標を実現するためにどういった取り組みが必要か洗い出して施策を行う。場合によってはコンセプトの設計から着手することもあります。そしてメンバー感のつながりを作る仕掛けを用意して、メンバーがコンセプトやゴールを一丸となって目指すよう仕掛けを作っていくような役割です。
最後に「コミュニティデザイナー」は、地域課題にフォーカスすることが多いかもしれませんが、既存の地域コミュニティにてコミュニティメンバーが自走して課題解決や目的達成を実現する流れを仕掛けることが役割となります。
自治体のスペースやシェアオフィスを例に出したため対面が前提の話となりましたが、オンライン上での役割もほとんど変わりません。テレワーカー同士のコミュニティだったとしても、人と人をつなげ、新たな価値を生み出せるよう導いていくためには相手を知り、一緒に課題を見つけ、価値を生み出していくにはどうすればよいのか共に考えながら伴走することが役割です。
良いコミュニティを創り、育てていくために
このようにコミュニティは作ればいい、つながればいい、という単純なものではありません。より価値や意味を生み出していくために考え、試行錯誤していくことでより良いコミュニティとなっていきます。どうしてもコミュニティというとオフライン、対面のものを考えがちですが、オンラインでも活発なコミュニティを創り、育てていくことは可能です。
とはいえ一方で、オンラインあるいはオフラインに振り切ることも正解とは考えていません。オンラインであれば、時間的・場所的制約から解放されること。オフラインであれば、オンラインと比べものにならないほどの暖かみや親近感を手にすることができます。それぞれ良い部分があるので、私はオンラインとオフラインを共存させてコミュニティ運営していくことが特に重要になってくると考えています。
次回は、コミュニティにはどのような種類や特性があるのか、どのように運用していくと理想形に近づくのか、具体例を挙げながらコミュニティの本質に迫っていきたいと思います。