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このやり方でいいの?正しい理解で効果につなげる!1on1について考える【中小企業の人材育成~「働き続けたい」組織と人づくりVol.5】

労働力不足が深刻化する中、このところよく耳にするのが「離職防止」に関するお悩みです。労働力の需給バランスが「売り手市場」に転換する中、中小企業において、人材確保は喫緊の課題なのではないでしょうか。そこでこのコラムでは1,000社以上を担当し、中小企業の人材育成、組織づくりに深くかかわってきた株式会社リクルートマネジメントソリューションズの佐藤修美氏に、中小企業の人材育成をテーマに、バックオフィス担当者に必要なノウハウを伝授していただきます。第5回は1on1について。

1on1実施の目的

1on1はお問い合わせ、ご質問をよくいただくテーマの1つです。もともとアメリカのシリコンバレーで導入され、それが日本でも取り組まれるようになって、概ね10年ほどでしょうか。1on1に取り組まれている企業様も以前に比べてずいぶんと増えた、と感じます。メンタル不全を未然に防ぐ、離職対策の一環として、また自律的キャリアの形成支援の一環といったことを目的に導入される企業様が多いようです。

弊社調査によると今や日本の7割の企業が導入をしているそうです。

1on1を導入したものの…

しかし、導入したものの、正直上手くいっているのかどうか、、、、、というお声をきくのも1on1です。詳しく伺ってみると
 ・会社として2週に1回1on1ミーティングを持つことに決めたが、正直皆がやってくれているのかどうかわからない。
・やってはいるようだが、何を会話しているのかわからない 
・会話しているようだが、結局業務連絡で終始しているようだ

こんなお声があがってきます。

1on1とは?

そもそも1on1とは何を指すのでしょうか。1on1もしくは1on1ミーティングと言ったりしますが、これは「上司と部下が1対1で定期的に対話する場・機会」を指します。「1対1である・定期的である」ものとして「面談」と呼ばれるものがありますが、では、面談と1on1はどう違うのでしょうか。
面談の場合、目的や具体的にその中でやるべきことは比較的明確な場合が多いかと思います。例えば「目標設定面談」であれば、その面談の中で「半期(もしくは1年など)の取り組む目標を上司部下間で合意」します。「評価面談」であれば「たてた目標に照らして、評価結果を伝え」ます。
1on1はどうでしょうか。1on1は「メンバーの成長を支援する場」なので成長を促すことができるなら話題は基本なんでもOKということになっています。また話す内容は前提として「メンバーが話したいこと」です。つまりメンバーの成長に寄与するなら業務連絡でも雑談でも内容はOKということになります。1on1ミーティングはかなり自由度高く時間を使える、と捉えることもできますが、一方で何のための時間なのかあいまいになってしまうという側面もあります。このファジーさがなかなかやっかいで、実際企業でスタートしてみると、なんだか上手く運用できない、といったことを引き起こしていたりします。

1on1を効果的に運営するポイント

1on1が上手くすすまない原因と対策について少し考えてみたいと思います。

1 導入する目的があいまい、もしくは明確に示されていない
1on1を導入する段階で企画した側(例えば人事部、総務部、経営企画部など)が実施の目的を明確に伝えていない場合があります。「2週に1回30分、1対1で…」など回数や場所などの方法については連絡をするものの、そのミーティングは何のために実施するのかが周知されていない場合があります。
「部下とはふだんから良い関係を築けているし、よく話もしている。特にそれ以上話すことはないから仕事の進捗確認をするので良いかな」
「部下とは仲がいいしもう1on1はしなくていいのでは?」
これは実際にお客様の現場からきいたことがあるお声です。
1on1のゴールを関係性の構築とおくと、確かにもう必要はないかもしれませんが、それで成長に関与ができているのかと問われるとどうでしょう?十分にできていないと感じる管理職の方は多いのではないでしょうか。1on1は「成長支援の場」であることを現場に周知することが先ずは大事です。

2 1on1の中で具体的に何をやるのかが現場任せになっている
回数や時間はわかっても具体的に何をしたらいいのか、よくわかっていない場合もあります。企画側は現場の裁量で取り組んでほしいという気持ちがあるのでしょうが、もともと自由度が高いものなので、少しガイドがないとどう進めていいのか迷ってしまうのではないでしょうか。
例えば、1on1は「成長支援の場」と申し上げましたが、一足飛びに「成長支援」ができるかというとそれはそれで難しいものです。むしろその難易度が高いがために雑談や業務連絡にとどまってしまうという場合もあります。
実は1on1には段階があり、上司部下間で会話する時間すらないのであれば先ずは時間の確保、時間はあるものの打ち解けて話せていないのであれば信頼関係の構築(心理的安全性の確保)、この段階をクリアしてはじめて今後のキャリアなど成長にかかわる会話ができるようになります。
今上司―部下間の関係性がどの段階なのかを見定めて適切に関係性をつくっていくこともとても大切です。こういった段階があるということや、「話す主体はメンバーである」といった基本的な考え方を伝えていくことも成功のポイントの1つになります。コーチングのような関わり方のスキルインプットも効果的です。

3 “成果”が設定されていない
1on1は続けていくうちに「これでよかったんだっけ?」「何のためにやっていたっけ?」と今していることの意味や意義があいまいになりがちです。1on1は「成長支援の場」 でありそれは何が成し遂げられていたら良しとされるのか、成果になるものをあらかじめ言語化しておくことも大切です。

1on1を形骸化させない

1on1は研修のように数日集合して完了というものではなく、継続性があるというところが特徴と言えます。続けていくにつれどうしても形骸化してしまいがちです。形骸化させずに取り組んでよかったと思える運営にするためには、先ずは導入の目的を明示することです。特にしっかりトップにもコミットしていただき、必要性をメッセージしていただくといった取り組みを弊社ではお薦めしています。その上で続けやすい回数、目安時間を設定すること、定期的にアンケート調査などを行い、実践による変化感を感じられたり、さらにミーティングを改善したい、といった意欲がわいたりするような仕掛けをあわせて実践していくのがよいのではないでしょうか。