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採用したからには定着・活躍して欲しい!オンボーディングについて考える【中小企業の人材育成~「働き続けたい」組織と人づくりVol.3】

労働力不足が深刻化する中、このところよく耳にするのが「離職防止」に関するお悩みです。労働力の需給バランスが「売り手市場」に転換するなか、中小企業において、人材確保は喫緊の課題なのではないでしょうか。そこでこのコラムでは1,000社以上を担当し、中小企業の人材育成、組織づくりに深くかかわってきた株式会社リクルートマネジメントソリューションズの佐藤修美氏に、中小企業の人材育成をテーマに、バックオフィス担当者に必要なノウハウを伝授していただきます。第3回はオンボーディングについて。

オンボーディングとは

オンボーディングとは、英語の「on-board」つまり乗り物にのっている状態が言葉の由来ですが、新しく会社・組織に加わった方に早く職場に慣れ、順応してもらい、定着・戦力化を促進する取組みを指します。

最近よく耳にするキーワードです。今は労働力不足の時代、人材も当然売り手市場となるわけで、それに伴い人材も流動的になります。採用が難しいなか、やっと採用できた人材ですから、企業としては長く働き続けてもらわなければ…という思いがあり、このオンボーディングという取り組み自体が重要視されるようになってきたのだと思います。

今回はオンボーディングの中でも特に中小企業で機会の多い中途入社者のオンボーディングについて述べたいと思います。

中途入社が多い中小企業

オンボーディングの対象は新卒新人と中途入社者に分類できますが、中小企業の場合は中途入社者の方が圧倒的に多いのではないでしょうか。

中小企業の場合、成長企業であれば事業拡大、新規事業開発、欠員の補充を目的として、人員の採用をすることが多いかと思います。その際、急成長、急拡大、急場をしのぐ……と、その局面にスピード感を持って対応するということが第一義になるため、一定の職業経験やスキルをもっている即戦力人材を採用しよう、と中途入社者が採用のターゲットとなることは至極当然の流れでしょう。

ただ、即戦力として魅力的な中途入社者ですが、比較的短期間で仕事を変える「ジョブホッピング」をする傾向がある点は注意が必要です。

すべての中途入社者に当てはまるわけではありませんが、ポジティブな側面でいうとより好待遇やスキルの向上を求めてのジョブホッピングとなりますが、ネガティブな側面でいうと職場の人間関係や直面する業務に不満を感じてのジョブホッピング(次の仕事に移る)という場合があるのです。

転職ができるということは一定の機動性があるということかとは思います。しかし一方で、自社に入社するときに機動的だったということは、次の会社にも機動的に移動していく可能性が高いということです。

転職自体、人生の転機、重大事です。それがゆえに、「あわなければやめればいいさ」と少し達観しているぐらいでないと転職そのものができないのかもしれません。

中途入社者が離職してしまう「壁」

当社は、中途入社者に起きがちな壁を3つの壁と6つの症状に分類しています。

リクルートマネジメントソリューションズ作成

1つめは「会社文化・組織風土」の壁です。会社の慣習や、職場の雰囲気になじめない、人間関係がうまく作れない、会社文化・組織風土が壁になり、新しい仕事になかなか順応していくことができないといった状態が見られます。

2つ目は、新しい会社の仕事の進め方に戸惑ったり、新しい業務の知識がなかなか身につかなかったり、「仕事」そのものが壁になる状態です。

3つ目が、せっかく転職してきたのに、今の仕事が自分の目指す状態につながっていると感じられず不安になる。あるいは、自信をもって入社したのに、周囲の先輩が優秀に見えて、自分がついていけるのか不安になってしまうという「キャリア・成長」の壁です。

中途入社者を離職させないために

転職をすると、例えば、勤怠の入力システムが違う、使っているソフトが違う……など、使っているインフラの違いで戸惑い、以前ならスムーズにできたことも時間がかかってしまうといったこともままあります。仕事内容も前職と連続性がある場合ばかりではありません。むしろ連続性のあることの方が少ないかもしれません。いくら即戦力として採用されたとはいえ、本業にとりかかる手前のところで不安になる材料がたくさん転がっています。

むしろ即戦力として採用されたからこそ、期待に応えてすぐに活躍しなくてはいけない、というプレッシャーを感じることもあります。プレッシャーを感じているにもかかわらず、なかなかその状態にたどりつけないことが焦りや不安となり、果ては、ここに転職してきて正解だったのかという悩みにつながり、結局は居心地のいい場所を求めて再度転職の道を選んでしまう……こんな状況が起きているかもしれません。

せっかく入社した中途入社者がすぐに離職してしまうことは、企業にとっても転職してきた本人にとっても望ましいことではないはずです。どうすれば、定着・戦力化できるのか。

ポイントはやはり「壁」です。「壁」は新しい職場・仕事・キャリアに直面した時の、心理的な不安そのものです。

多くの方がこの壁に1年以内にぶつかるということがわかっているからこそ、その壁を取り除く手段を準備することが肝要です。その手段の1つとして「相談できる誰か」をつくることが挙げられます。

出典:リクルートマネジメントソリューションズ 中途入社者のリアル(2014)

こちらは、先のアンケートの結果の1つです。左は中途入社者を受け入れた企業に「育成担当者をつけたか」を尋ねています。この結果を見ると中途入社者には育成担当をつけない場合が多いことがわかります。

右は、中途入社者に育成担当者の有無と満足度について尋ねた結果です。これによると、育成担当者がいるときといないときでは、いた時の方が圧倒的に中途入社者の満足度が高いことがわかります。

中途入社者にとって育成担当者は、ちょっとしたわからないことを教えてくれたり、社内の誰かをつないでくれたり大変心強い存在になってくれているのだと思います。

企業ができる対策の1つとして中途入社者にも育成担当者をつけること、を挙げることができます。

もう1つ、新卒で入社した時は同期がいて、それこそ些末な質問も同期に聞いて気軽に解消したり、不安や不満も同期同士で愚痴をいっている間に解消されたり…皆さんもそんなご記憶はないでしょうか。「相談できる誰か」になり得る対象として「同期」を挙げることができます。

しかし、中途入社の場合は新卒新人の一斉採用と異なり、1人、2人…と、ばらばらのタイミングで入社することが多く、同期がいないことがほとんどです。であれば、同期にあたる人を企業が設定してしまうのも1つの方法です。

入社時の近い中途入社者をひとくくりに「同期」と呼んで、顔合わせをし、関係をつくるきっかけをつくります。一度引き合わせることでお互いがお互いの相談役になったり、時には愚痴を言ったりしながら、不安や不満を解消していけるようになります。

弊社で用意している「中途入社者研修」という研修メニューでは、研修を名目に入社のタイミングが近い方に一斉に集まっていただきます。研修の中では、中途で入社すると、1年以内に壁にぶつかる方がほとんどであること、壁の種類、またどうやったら壁を乗り越えることができるのかといったヒントなどをお伝えしています。

研修のメニューも大切ですが、中途入社者が集い、自然と関係性が生まれる良いきっかけにしていただいていると思います。

中途入社者を受け入れる企業様には、その不安を解消し、業務に全力で向き合うまで体制づくり、ちょっとした工夫をお薦めしたいと思います。