採用活動で内定辞退を減らすノウハウ3選・後編【中小企業の“令和流” 若手・第二新卒採用を成功させる秘訣 Vol.4】
コロナ禍の収束に伴い、採用市場の売り手市場化が加速している中で、採用活動に関するご相談の中でも、「内定辞退」のお悩みを伺うことが増加しています。そこで前回は、「内定辞退を減らすノウハウ3選」として、「志望度を高めるアプローチ方法」、「選考時の役割分担」、「口説きプランの作り方」をご紹介しました。今回の後編では、中小企業でありがちな失敗を踏まえた「内定辞退を減らすための細かいポイント」をご紹介します。貴社で実施できていない項目はないか?を確認しながら、是非ご覧ください。
中小企業でありがちな失敗の回避
ここまで3つの大きなノウハウをお伝えしました。最後に、補足として中小企業でありがちな失敗を踏まえた「内定辞退を減らすための細かいポイント」をいくつか紹介します。
◆直属の上司と顔を合わせる機会を作る
中小企業の場合、人事と経営者のみで選考を進めることがありますが、内定辞退を減らす、また、入社後の定着を視野に入れても、直属の上司となる社員を面接/面談に入れることが大切です。
社会人経験がある応募者であれば、上司との関係性や相性が職場での居心地につながることをよく知っています。逆に言うと、最後に意思決定などをする際に「上司の顔が見えていない」ことは応募者の不安や懸念材料につながります。短時間でもよいので、実際に一緒に働く上司と顔を合わせる機会を作っておくと応募者の安心感につながります。
◆対面の選考では応募者の目に入る光景にも注意が必要
コロナ禍が終わった中で、対面選考を実施している企業も増えきているでしょう。対面選考では受付から面接室に入るまでの導線で目に入る光景なども大切です。
中小企業では、大企業のように来社受付があり、来客対応スペースが整っている環境ではないかもしれません。ただ、来社してから面接室に入るまでの導線、また、面接室の会場は、整理整頓や清掃が行き届いているでしょうか。
物が雑多に転がっていたり掃除が行き届いていなかったりする光景は、入社後の職場環境や成長機会に対してネガティブな影響を与えます。製造業であれば、いわゆる「整理・整頓・清潔・清掃・躾」という5Sは当たり前のことですが、採用活動をするうえでも整理・整頓や清潔は大切です。
◆社員の振る舞いがプラスにもマイナスにも働く
応募者の内定辞退を増やす/減らす要因のひとつが、面接で来社する際にすれ違う社員の対応や面接の前後で耳に入る音です。たとえば、受付で待っていたり面接スペースに案内されたりする際に、通りすがった社員が笑顔で挨拶するか、仏頂面ですれ違うかは大きな印象の違いとなります。
また、「面接室の隣で上司が部下を強く叱っている声が聞こえてきたことが契機で、社風や上下関係などが不安になって辞退した」といった事例もあります。飲食店に行った時、店長がアルバイトを厨房や店舗の隅で怒っている声が聞こえてきて、食べ物の味以外のところで店舗に対してマイナスな感情を持った経験はないでしょうか。応募者は、自分の人生を左右する決断をしようと思っていますので、目にしたり耳に入ったりする情報に非常に敏感です。
◆ホームページにリンク切れや更新が滞っているコンテンツがあれば対応する
訪問時以外に応募者が必ず目にする情報が、企業のホームページや公式SNSです。中小企業ではホームページにおけるリンク切れや更新が滞っているコンテンツやSNSアカウントがあることが意外とあります。
リンク切れはもちろんですが、更新されていないコンテンツも社内の業務がきちんと回っていないマイナス印象につながります。採用活動はもちろん、ビジネス上の取引にも悪影響を与えますので、必ずチェックしてリンク切れがないかはもちろん、更新されていないコンテンツなどは思い切って削除・閉鎖してしまいましょう。
◆クチコミサイトの情報はチェックしておく
自社が発信している情報ではないところで、応募者の志望度に大きな影響を与え、時には内定辞退を生み出すのが「クチコミサイト」の情報です。今は就職・転職活動のなかで就活生や転職者向けのクチコミサイトを使うことは当たり前になっています。
クチコミサイトの情報は退職者が記載しているケースも多く、ネガティブな情報が書かれがちな傾向もあります。ただ、応募者からすると「在籍経験がある人が書いている情報」は非常に信ぴょう性があり、“採用企業が発する情報=都合のいい情報”、“クチコミサイトの情報=真実”といった捉え方もされがちです。
主要なクチコミサイトは数個ですので、自社に関してどんなクチコミが書かれているかは必ず確認して、内定辞退につながりそうな情報があれば、どうやって対策するかを考えておきましょう。対策の王道として、選考の中で、「クチコミサイトにこんな情報が書かれているのは知っていますか?サイトではこう書かれていますが、実態はこうです」と応募企業側から書かれているクチコミに触れてしまうことです。マイナスのクチコミの内容に応募企業が全く触れないと “隠している”ような印象を与えかねないので、共有してしまった方が意外と上手くいくものです。
次回は「早期離職を防ぐノウハウ」
若手・第二新卒の採用活動を成功させるためのステップのうち、「内定辞退を減らすノウハウ」を前編・後編に分け解説しました。「望む未来の明確化」と「望む未来の実現性」という2つの軸で、感情的(右脳)な働きかけと理性的(左脳)な働きかけを織り交ぜてバランスよくアプローチすることで、応募者の志望度を高めることができます。またアプローチする上では、応募者の本音や自社に対する懸念、競合状況を知ることがも重要です。応募者側(リクルーター)と選考側の役割分担で応募者の本音を掴んだうえで、商談設計と同じ感覚で「口説きプラン」を作ってアプローチしましょう。
細かなところでは、選考過程で応募者の目に入る情報は志望度や意思決定に意外と大きな影響を与えます。対面選考で来社から面接室までの間に目に入るもの、すれ違ったり耳に入ったりする社員の言動、また、自社のホームページやクチコミサイトの情報などもしっかりとケアすることも大切です。
次回は採用活動後に目線を向け、「入社後の早期離職を減らすノウハウ」というテーマで入社後の定着・活躍を促進するためのポイントを紹介します。ぜひご覧ください。