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【前編】若手の確保が難しくなるなか、中小企業がやるべきこと【中小企業の“令和流” 若手・第二新卒採用を成功させる秘訣 Vol.6】

本連載はここまで5回に渡って「中小企業が若手を採用するための考え方と具体的なノウハウ」を紹介してきました。少子化という大きなトレンドがある中で、若手確保の難易度は今後も確実に上がっていきます。最終回の今回は、3年5年10年…という時間軸を見据えて、中小企業がいま取り組んでおくべきことについて考えてみたいと思います。

なお、過去5回の連載はこちらよりご覧になれますので、読み逃した方はぜひ第1回からご確認ください。

第1回記事はこちら!

新卒・既卒・第二新卒、すべての若手採用は今後、より厳しくなる

“マネジメントの発明者”とも呼ばれる経営学者ドラッカーが、未来について語った台詞をご存じでしょうか? ドラッカーは未来について、「未来は今日とは違うものであって、かつ予測できないものである」と言っています。しかし、その中にも「既に起こった未来」 、つまり体系的に予測できる未来があると述べ、その筆頭が人口動態だと言っています。

皆さんもよくご存じの「日本の少子化」ですが、解像度をもう少し高めてみましょう。18歳人口は1992年の205万人(現在50歳前後)を直近のピークとして、2022年には112万人(今年の大卒新入社員の世代)、8年後の2032年には半減の102万人まで落ち込みます。また、昨年(2023年)の出生数(速報値)は約76万人と、ピーク時の37%まで落ち込んでいます。これが少子化の現実です。
*文部科学省「学校基本統計」および厚生労働省「人口動態統計速報」より

ただ、少子化という話はもう数十年騒がれてきたわりに、多くの企業では新卒採用の難易度が上がったとは感じていないのではないでしょうか。実際に、これまでの10数年、少子化と大学進学率の上昇が釣り合って、じつは大卒人数は減少していません。しかし、大学進学率もそろそろ上昇余地がなくなりつつあり、大卒人数はいよいよ急激な減少を始めます。

高卒採用を実施されていた中小企業では、この10数年で急激に高卒採用の難易度が上がってきたことを感じてこられたと思います。これは“18歳人口の減少×大学進学率の上昇”で就職する高卒が急激に減少してきた影響です。高卒採用が多かった小売店や飲食店、建設業で、外国籍の方が増えたことは生活している中でも容易に感じられるでしょう。これに近いことが、これから新卒・既卒・第二新卒、すべての若手(大卒)採用の分野で起こるわけです。

働き方の多様化という新たな波も若手採用を圧迫します。最近は「フリーランス」という形態で、起業して事業拡大を目指すのとも少し違う、いわゆる“個人事業主”や“1人社長”の働き方を選択するビジネスパーソンが増えています。ランサーズ株式会社の発表した「新・フリーランス実態調査 2021-2022年版」によれば、日本のフリーランス人口は2015年の937万人から2021年には1577万人まで、6年間で640万人増加しています。これは若手だけの数字ではありませんが、とくに若手で“組織に束縛されない自由な働き方”を好む層は多くなっています。

そして、大卒の減少と働き方の多様化という母集団減少のダメージを一番大きくこうむるのが中小企業です。大卒の減少は、2017年63万人をピークとして、2033年57万人(6万人減)、2040年 51万人(12万人減)と進むと予測されています。これを見ると、そこまで激しいペースではなく、大きな影響があるようには見えないかもしれません。
*文部科学省 中央教育審議会大学分科会「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)]

しかし、そうではありません。新卒の採用市場を見てみましょう。2022年3月卒(大卒)の就職者数は45万人です。約半分の22万人は500人以上の企業に就職、そして、13万人が100人以上500人未満の企業に就職しており、100人未満の中小企業に就職しているのは10万人です。
*厚生労働省「新規大卒就職者の事業所規模別離職状況」を基に計算

新卒採用でも第二新卒採用でも、やはり若手の応募は規模の大きな企業に偏りがちです。上記の状況で大学生が12万人減少するわけです。大卒の就職率は70%程度ですので、大学生12万人減少の影響を就職者数に換算すると8.5万人程度の減少です。仮に規模感が大きな企業から採用枠を埋めていくとすれば…100人未満の中小企業に就職するのは10万人-8.5万人の1.5万人しかいなくなってしまうわけです。

もちろん大手企業の採用数等も2040年にはある程度減少することが見込まれますので、新卒や若手がどう頑張っても採れないという事態にはならないでしょう。しかし、こうやって解像度をあげて考えてみると、中小企業の新卒や若手採用の難易度が景況感に関わらず上がっていくことは、「既に起こった未来」であり、本気で対策を考える必要があるテーマであることが分かります。

次回は「若手の確保が難しくなるなか、中小企業がやるべきこと」後編

今回は、若手採用が今後より一層厳しくなる背景を紹介しました。大卒の減少と働き方の多様化に伴い母集団が減少すること、その影響を最も受けるのは中小企業であることを、解像度高くイメージしていただけたのではないでしょうか。

次回の「若手の確保が難しくなるなか、中小企業がやるべきこと」後編では、「選ばれる職場になるためにできること」や「令和型マネジメントへの適応」など、“中小企業が未来に向けて、今できる取り組み”をご紹介します。