業務の見える化は何のため? バックオフィス業務のデジタル化の前にすべきこと【バックオフィス業務6つのヒント Vol.1】
社内事務などのバックオフィス業務は、縁の下の力持ちとして企業を支える重要な役割を持っています。一方で、膨大な事務処理や煩雑な手続き、そして限られた時間の中で求められる高い精度など、少数精鋭で複数の業務や作業を行うみなさんの負担は大きく、ストレスの原因にもなりやすいものです。
この連載では、そんなバックオフィス業務の悩みや苦労を和らげ、もっとラクに、もっとスマートに、そしてそのためのデジタル活用のポイントを織り交ぜながら、皆さんがよりよく働けるヒントをご紹介します。現場の声を踏まえた具体的なアイデアや、手順やコツ、役立つツールなどを紹介していきますので、ぜひご自身の業務に取り入れてみてください。
「残業削減は分かっているがやることが多すぎる」問題
第1回は「なんでこの作業やってるの?」「みんなは何をしているの?」という疑問を契機に、業務を見える化したらラクになるキッカケが見えた!という体験談からお伝えしましょう。
え? デジタル活用の話ではないの? とお思いの方もいらっしゃると思いますが、やみくもにツール導入をして失敗しないためにも、まずはこの“見える化”の必要性とその実践手法についてこの回では説明をしていきます。
皆さんは、
「残業削減は分かっているがやることが多すぎる」
「忙しくても業務を頼めない」
「誰が何しているかわからない」
「なのに、上司や会社は理解してくれない」
こんな状況に陥っていませんか?そこで今回は特に、業務を作業として捉えるコトを打破し、チームでお客様のために、何をしているか?実際に見える化した方法を具体的にお伝えしたいと思います(目的と業務の可視化はラクの素)。
目次
・業務の見えない部分に疑問を持つ
・業務の見える化がもたらす効果と必要性
・業務の透明化と効率化の手法
・業務の見える化がもたらす利点と失敗例
業務の見えない部分に疑問を持つ~「残業を減らすにはやる事が多すぎる」問題の裏側
世の中、DX、デジタル化など耳障りの良い言葉でくくられてしまいがちな業務効率化。ところが単に便利なツールやサービスを導入するだけでは、思い描いた成果は出ないこともしばしば。なぜでしょうか? 私自身、こんな会話を上司としたことがあります。
上司 なんでそんなに残業するんだ?
当時の私 あれこれやる事多いんです(心の声:全部説明する訳にもいかないし、一生懸命やっているのに、理解できないのかなぁ……)。
上司 とにかく残業減らして帰ってね。
後々、なぜ残業する理由を聞いたのか話してみると“具体的に何をどれくらいやっているかが分からなかった。パソコンに向かって操作しているのは分かるけど”と言われました。“パソコンで作業している”以上の、内容の部分は伝わっていなかったわけです。
業務の見える化がもたらす効果と必要性~理解を得る=見える化なのか?
パソコンに向かう姿は「目に見える」から分かる。でも、「中身は見えない」。これは実は、上司も私も「部門として理解できるようにしていなかった」ことが関係しています。
ちょうど同じころ、社内の経費削減キャンペーンの一環で、複合機で使う用紙とコピー費用の削減を求められており、当初はなかなか効果が出なかったため、「今月の目標数」と「昨日までの利用数」を見える様に掲示したところ、月末ギリギリで達成できました。同じフロアで働くスタッフが部署間を超えて工夫し、利用量を減らしてくれたのです。ところがこの削減方法は、ほどなく行き詰まります。その要因は、「見える化の目的が何か」という「考え方」が明確化していなかったからです。
そこで、私たちは、下記のようなメソッドを得ました(一部抜粋してお届けします)。
業務の透明化と効率化の手法~すぐにできるのは「今なにをしてるか」の一覧化
さて、私たちが「部門として理解できるようにしていなかった」ことを解決するためにまず取り組んだのが、リングノートを使って今何をしているかをデスク前に掲示してみたり、作業が滞っているときは「HELP!」ページを掲示したり、作業が早く終わったメンバーが率先して業務を支援できるようにしたりといったことでした。
こうした新しい取り組みに、当初はモチベーション高くうまくいっている気がしていましたし、上司も各自がやっている業務が見える化され、業務量の繁忙時期が分かるようになっていきました。
しかしその後、上司から残業は少し減ったが思ったほどではない、どうしたらもっと残業削減につながるのか、もっと工夫できる方法はないのかと再度問われてしまいました。
では、私たちが日々実施している業務とは何なのか。 なぜ残業を減らさなければならないのか。私たちはその上司の言葉に改めて熟考することになったのです。
当時の資料を振り返ってみましょう。
まず「業務とは、何か?」を整理し、そのうえで「業務時間を短縮する」ための「業務の改善方法」について追究していきました。
そう、やみくもに「改善を目的化」してしまうと、コピー用紙削減のときのように、初めは良くても徐々に削減目標が形骸化していき、あっという間に頭打ちになってしまいます。 だからステップ1として何を改善の対象とするのか、その目的、そして目標は何かを明確化するわけです。
次にステップ2の「業務の現状を見えるようにし、問題点・改善すべき点を把握する」こと。その実践に際し取り入れたのが、「”業務可視化手法」でした。
具体的にはまず、業務の一覧表を作成すること。自分たちの業務を4階層で分類し、段階を経るごとに業務・作業を詳細化および各業務や作業の難易度も明確にしました。これは、どの業務を変えていくべきなのか分かりやすくするのに役立ちます。
次に「それぞれの作業にどれくらい時間を使っているか?」を各人で思い出しながら書き出しました。一見面倒な洗い出しなのですが、これにより「そうか!この業務にやたらと時間が掛かっていたのか。だったらこの業務の効率化を優先的に実施しよう!」と、互いに理解したうえで打ち手を考えることができるようになっていきました。
なお、私たちは業務の一覧表とその時間集計には、便利な道具としてデジタルツールを活用しました。
その後は明確な目的と目標を持って取り組みを再開。作業手順を効率的に改訂したり、管理手法を見直して簡易なデジタルツールを活用したりしました。さらに、実践した取り組みに対し、毎月部門で振り返りを実施。このサイクルを回すことで、担当業務部分だけでなく、プロセス全体の見直しを検討する必要性にも気づけました。
業務の見える化がもたらす利点と失敗例~残業削減・効率化できても目的・背景の明確化は?
私たちは「ラクにする」=「業務を現在よりも良いものにすること」と捉えています。その実現には現状を把握し、ラクになるとはどんな状態を指すのか(目標)を具体的にし、上司も含め全員で認識合わせをしておく必要があります。
最後に、こんな失敗もしてしまったという注意点も一つ付け加えておきましょう。
前述の「それぞれの作業にどれくらい時間を使っているか?」を各人で思い出しながら書き出した際、「なぜあなたはこの業務にこんなに時間を使っているのか?」と追及しかけてしまい、議論が別の方向に逸れてしまったことがあるのです。でも、各人の業務の効率化に関して批評することは、時間の洗い出しの本来の目的ではありません。そもそも、時間を割り出すと言っても、全員が各業務に関して正確に時間計測をしたものでもない情報ですよね。ですからその点の追及(あるいは批評)はあまり意味を成しません。作業ごとの時間の洗い出しは、あくまでも「誰がいつどの業務にどれくらいの時間がかかっているのか」を把握し、「どの業務作業から変えていくと良いか」という方向性を明確にすることが目的のはず。それを忘れないようにしましょう。
「業務の見える化」でラクになるキッカケづくり、皆さんは想定できましたでしょうか。業務や作業に対し、目的と目標を持ってさまざまな工夫や便利なデジタルツールを導入することで、きっと「実のあるラクを実現」できると私たちは考えています。
次回は、皆さんにとって最も身近な「デジタル」である、複雑な「業務システム操作」をよりカンタンにする方法についてご紹介します。