バックオフィスのカスタマーと業務コミュニケーションが上手くなると、自分もラクになる!? 【バックオフィス業務6つのヒント Vol.5】
この連載では、バックオフィス業務の悩みや苦労を和らげ、もっとラクに、もっとスマートに働けるヒントをご紹介しています。
今回は、皆さんの日常業務の「様々な問い合わせに対応する」シーンでの「デジタル活用」についてご紹介します。
バックオフィス(事務業務や作業をする組織)には、そこに関連や関係する従業員(人)が存在し、説明やマニュアルが良くわからないとか、内容が違っているとか、申請したのに対応が遅いとか、中にはクレームのような問い合わせも入って来ます。日々現場では、多様な申請や手続き等への対応と、関連する数多の問い合わせに真摯に対応していると思います。しかしバックオフィスは100%出来て当たり前などと思われがちで、利用する側の従業員からは不平不満が漏れ聞こえてきます。こんな状況を改善するための一つの解決方法をお伝えしたいと思います。
問い合わせ対応に追われ、通常業務が非効率になる問題
皆さんは、こんな状況に遭遇して悩まれる事はありませんか?
「対応に追われ、優先度の高い業務が後回しになり進行が遅れる」
「対応が遅れ、利用者の不満が増加し、信頼関係が損なわれる」
「通常業務を中断して対応、しかかり作業の処理漏れなどが発生する」
「特定のスタッフに問い合わせが集中し、不在時に対応が滞る」
「頻繁な問い合わせ対応でスタッフが疲弊し、モチベーションや生産性が低下する」
そこで、申請や手続き等を利用する側の従業員をカスタマーと捉えて、生活や就業シーンに合わせてカスタマージャーニーを描き、利用者の痛点を可視化、利用者が自己解決可能となるデジタルツール(WEBページやChatBot等)を導入、その結果、利用する側とバックオフィス側の関係性がポジティブな変化を起こし、お互いに効率的なコミュニケーションに変わるという取り組みをご紹介します。
今回の目次
・バックオフィスの現状と課題
・カスタマー視点でのアプローチ
・自己解決ツールの導入とその効果
・ポジティブな関係性の構築
バックオフィスの現状と課題
バックオフィス部門では、日々多くの問い合わせが寄せられています。例えば、「何の手続きをすれば良いか分からない」「申請に必要な項目や内容が分からない」といった内容です。これら数多の問い合わせに対応するために、スタッフは多くの時間を費やし、本来の業務に集中できない状況が続いていました。中には、仕掛かりの作業を中断して対応する必要性にも迫られていました。
そんな中でいくつかの問題が発生、まず、問い合わせ対応に追われることで、重要な業務が遅れがちになり全体効率が低下、また内容が多岐にわたり、常に最新の情報を把握しておく必要もあって情報の管理も煩雑になっていました。さらに、問い合わせ対応が属人的になりがちで、特定のスタッフに負担が集中することも問題となっていました。
利用者にとっては、説明が不十分なマニュアルや、手続きが分かりにくい事などが原因で、利用者の不満が高まっていました。これにより精神的なストレスを感じることも多く、業務の質にも影響を及ぼしていました。こうした状況を改善するためには、根本的なアプローチの見直しが必要でした。
では、どんな問い合わせが発生しているのでしょうか?
まずは、「どんな問い合わせ(種類)が来ていて、発生する原因(仮説)は?」これを可視化することが重要です。整理した情報の重要な部分をご紹介します。(内容は一般的な例に書き換えています)
カスタマー視点でのアプローチ
そこからチームは定例ミーティングで、利用者からの不満や問い合わせの内容を改めて振り返る機会を持ちました。その中であるスタッフが「私たちも利用者の立場に立って考えてみるべきではないか」と発言があり、この一言がきっかけで、チームは利用者を「カスタマー」として捉え直すことに挑戦する事になります。
根本的なアプローチの見直し、つまり、申請や手続き、問い合わせの発生という事象から考えるという事ではなく、利用者の視点や日常生活から考察と議論を進めようという事ですが、どうしても自分達の視点で考えてしまい議論が進みません。
そこで、利用者がどのような日常のシーンや状態からバックオフィスと関わっているのかを理解分析するために、カスタマージャーニーの手法をバックオフィスの利用にアレンジして活用することにしました。例えば、どんな利用者の就労生活シーンで、身上変更申請は発生して、どんな事でつまずきやすいのか、どの情報が欲しいのか等を洗い出しました。痛点として申請が複雑で記入ミスが発生することや、必要書類のがわかりにくい、そもそも何をしたら良いか分からないことが挙げられました。これにより、利用者が感じている痛点が明らかになりました。
では、具体的にどうやってカスタマー視点で整理すれば良いのでしょうか? 実際に作成した「ジャーニーマップの改サンプル例」と「作成時の注意点」をご紹介します。
ジャーニー作成前には「目的」や「利用者像(ペルソナ)」を明確にします。このケースでは明らかな事なのであまりこだわらない方が良いですが、社内のどんな立場の人を利用者としてイメージするのか、あらためて言語化する事もお勧めします。
自己解決ツールの導入とその効果
ここからチームは、利用者が疑問や不明点を自己解決する事が可能になるデジタルツールを導入します。具体的には前述で整理した利用者の生活シーンからどんな時に何を申請すれば良いかが一目で分かるWEBページの作成と、当初可視化したよくある質問と利用者の痛点・ニーズをかけ合わせて、利用者のよくある質問に即座に答えるChatBotを導入しました。
ChatBotツールの選定は、前々回(第3回)でも「適切なツールを選定する事です」と申し上げていますので、今回は、Botで活用される「質問と回答の中味」Q&Aコンテンツに着目してご紹介します。
ChatBotの導入時に設定する「質問と回答」の作り方の注意点についてまとめていますので、下の表をご覧ください。
「質問と回答」の作り方で共通して言えることは、「利用者視点と発生シーン」「シンプルで明確な言葉」「質問バリエーションの考慮」という点に注意しましょう。どんな時に何を申請すれば良いかをナビゲートする事と、疑問点の自己解決を可能にすることで、利用者は必要な情報を得ることができ、チームの問い合わせ対応も半減しています。
そして、ぜひAI機能を持ったChatBotも検討すると良いでしょう。また、導入時に設定する「想定される質問と回答」については、生成AIを活用した作り方にも挑戦してみてください。過去のデータや回答例を基に、より多様で包括的な質問&回答リストを作成することができました。
ポジティブな関係性の構築
これらの取り組みの結果、利用者とバックオフィスの関係性は大きく改善されました。利用者は自分で問題を解決できるようになり、バックオフィス側も問い合わせ対応に追われることが少なくなりました。スタッフは本来の業務に集中し業務全体の効率が向上しました。
さらに、利用者からは「どんな時に何をすれば良いか分かりやすく手続きがスムーズになった」「自分で解決できる事やマニュアルも探しやすくて助かる」といったポジティブなフィードバックも寄せられるようになりました。
このように、利用者視点を取り入れることで業務作業がスムーズになり、結果チームもラクになるのです。ぜひ、皆さんの職場でもこのアプローチを検討してみてはいかがでしょうか。
最後に、利用者・バックオフィス双方に心がけて欲しい注意点も付け加えます。
<バックオフィス側>
・利用者の意見や要望を積極的に取り入れ、サービスの質を向上させること
・利用者視点で継続的な改善を心がけること
・利用者に対して理解しやすい情報を提供すること
<利用者側>
・積極的に利用者の体験をフィードバックするとサービスが向上すること
・新しいツールやプロセスを積極的に学び、適応する努力をすること
お互いが理解出来るように、周知/認知/関心を醸成する環境づくりも重要です。
次回は、皆さんの日常業務に「新たな可能性の出現か?!」という「生成AIの活用」についてご紹介します。