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面接で信頼を築き、志望度を高める「1対1の効果的なコミュニケーション術」〈前編〉【令和の採用担当者必見!学生の“心をつかむ”コミュニケーション力 Vol.4】

この連載では、プレゼンテーションや営業力のトレーニングとしてFORTUNE500(アメリカの売上トップ500社)の90%以上が採用する「デール・カーネギー・トレーニング」のメソッドを基に、採用担当者のコミュニケーション力強化のポイントを解説していきます。

第4回からは、面接で信頼を築き、志望度を高める「1対1の効果的なコミュニケーション術」に焦点を当て、採用担当者が実施する「人事面接」を例に、習得すべきコミュニケーションスキルを解説していきます。今回の〈前編〉では、学生の心をつかむ人事面接を行うために欠かせない「事前準備」のポイントをご紹介します。

【過去のコラムはこちら!第1回第2回第3回

質の高い 「人事面接」が生み出す、大きなメリット

企業説明会などを経て学生の選考エントリーを得た後、採用担当者が面接を行う「人事面接」へと進むのが、一般的な選考プロセスです。現在、多くの学生が複数社の選考を同時に進めているなか、「人事面接」は単に学生を見極める場ではなく、今後の選考に進んでもらいたい学生と信頼関係を築きつつ、自社の魅力を伝え、志望度を一層高めてもらう場としての役割がこれまで以上に求められています。

人事面接で学生に対し質の高いコミュニケーションが図れると、その後の選考プロセスに多くのメリットが生まれます。学生が自社の魅力を確信できれば、「なぜこの企業に魅力を感じているのか」を明確に認識できるようになり、社長や役員との面接でも、納得できる志望理由を伝えられるため、選考通過の可能性が高まります。さらに、採用担当者と学生の間に本音で語り合える関係が築けていれば、選考中や内定後に学生がさまざまな悩みや不安を感じた際にも的確なフォローが可能となり、選考全体を通じ効果的なアプローチを行うことができます。

「人事面接」のカギを握る、採用担当の“営業力”

学生と信頼関係を築きながら、自社の魅力を伝え、志望度を高めたうえで次回以降の選考に進んでもらうために必要なコミュニケーションスキルとは、言い換えれば“採用担当者の営業力”とも言えるでしょう。

「営業力」という言葉にはさまざまな定義がありますが、ここでは「顧客の課題を解決できる商品の魅力を的確に伝え、良好な関係を築きながら購入へと導く力」と定義します。
皆さんも、営業担当を介して何か商品やサービスを購入する際、性能や価格だけでなく、自分の購買基準や価値観に丁寧に寄り添い、悩みを引き出して的確な提案をしてくれる営業担当に信頼を感じ、最終的に購買に至ることが多くあるのではないでしょうか。

顧客の購買意思を形成・促進する営業力は、新卒採用においては、「学生のニーズを的確に捉え、それに合致する自社の魅力を伝えて信頼を獲得し、次の選考への意思決定を促す力」と位置付けることができます。人事面接で採用担当者がこのような営業力を発揮するためには、学生一人ひとりに対応したコミュニケーション戦略を、あらかじめ設計しておくことが効果的です。

採用担当者の“営業力”を高める、面接準備のポイント

コミュニケーション戦略の出発点として、まずは面接前に、学生一人ひとりのニーズと、それに対して自社が提供できる魅力を把握します。具体的な方法は次回以降でお伝えしますが、人事面接では事前に把握しておいたニーズと対応する自社の魅力を活用し、学生との会話の流れや質問を組み立てていきます。ここでは、そのために事前に実施すべき面接準備のポイントを紹介します。

ユニーク・セリング・プロポジション(USP)を把握する
売り手市場が加速する昨今、学生は常に複数の企業を比較対象としています。そのような状況で自社に対する志望度や信頼感を高めてもらうには、学生のニーズに対して、自社が提供できる「競合他社よりも優れている魅力」を導き出し、事前に把握することが重要です。差別化につながる魅力を見出す手法として、営業の商談設計でも活用されている「ユニーク・セリング・プロポジション(以下、USP)」というフレームワークが活用できます。

USPとは、製品やサービスが持つ独自の強みを指します。USPを把握するためには、まず学生一人ひとりが求めているニーズ(価値)を整理します。個々の学生が求めるニーズは、履歴書だけでなく、企業説明会やインターンシップ等で実施したアンケートなどを活用し就職活動の行動軸や企業選びの基準、現時点で魅力を感じている自社の特徴や強みなどの観点から情報を整理すると効率的です。

学生のニーズを把握したら、それに対応する形で「自社の魅力(強み)」を検討します。このとき、労働条件や業務内容など現時点で明確に存在し目に見える要素や、業績といった定量的に示せる魅力だけでなく、社員の人柄や社風、またニーズに応じた採用担当者の対応力など、定性的な魅力についても細かく挙げてみましょう。

最後に「競合他社の魅力(強み)」をチェックします。人事面接の前に、学生の他社の選考状況が分かっている場合は、その企業の採用ページや公開されている求人情報を確認し、どのような魅力が打ち出されているかを見ておきましょう。わからない場合はこれまでの自社の採用活動で頻繫に競合に上がってくる企業や、学生の志望業界や職種、就活軸から逆算して、業界で知名度の高い企業を競合と仮定してみてください。

学生のニーズ(価値)、自社の魅力(強み)、競合他社の魅力(強み)が整理できたら、学生のニーズを満たし、かつ競合より自社が優れている魅力を考えます。この部分がUSPとなり、人事面接で学生に最も伝えるべき訴求軸となります。

USPの設定が難しい場合、今ある強みに“ひと工夫”を加えて差別化する
USPは、必ずしも「競合他社が真似できない自社独自の魅力」である必要はありません。例えば、初任給の改善といった労働条件は、短期間で競合より明確な魅力とするのが難しい場合があります。入社後のキャリア支援についても、競合他社と同等の取り組みしか提示できないことも多いでしょう。こうした場合には、「競合他社にもある魅力の中でも、自社だからこそできる工夫や努力」を見つけ、USPとして設定することも有効です。

例えば、学生のニーズとして「3年生のうちに納得のいく内定を取得して就職活動を終えたい」というものがあったとします。自社の採用活動でそのようなスケジュールでの選考が可能だったとしても、就職活動の早期化が進む現在では、競合他社も同様のスケジュールで採用を行っているケースが少なくありません。このような場合、「自社だからこそ提供できる工夫」として、「スピード感と納得感を両立するために、Aさん独自の選考スケジュールの設定や、社員との個別面談の実施も可能」といった提案ができれば、競合と差別化されたUSP(独自の価値提案)となるでしょう。

過去の採用活動で実際に行った工夫や努力はもちろん、今後の採用活動において自社が取り組める工夫についても検討しながら、USPを設定することが可能です。

次回は、「1対1の効果的なコミュニケーション術」〈中編〉

USPのフレームワークを活用して、面接前に学生に訴求する自社の強みを整理できたあとは、対面で行う「人事面接」において、目の前の学生の心をつかむコミュニケーションで信頼感と志望度を高めていきます。次回は、「1対1の効果的なコミュニケーション術〈中編〉」として、信頼を築き志望度を高めるための、面接の進め方や話し方、質問の仕方などを解説していきます。ぜひ、次回もご覧ください!