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大人数の心を一度につかむ、効果的なプレゼンテーション術〈応用編〉【令和の採用担当者必見!学生の“心をつかむ”コミュニケーション力 vol.3】

この連載では、プレゼンテーションや営業力のトレーニングとしてFORTUNE500(アメリカの売上トップ500社)の90%以上が採用する「デール・カーネギー・トレーニング」のメソッドを基に、採用担当者のコミュニケーション力強化のポイントを解説していきます。第3回では、第2回〈基礎編〉で紹介した「信頼感を高めるプレゼンテーションの基本構造」の4要素のうちの4つめ、「クロージング」のポイントと、大人数の心を一度につかむ効果的なプレゼンテーション術〈応用編〉として、学生に自社への信頼感や印象を高めてもらうための話し方やスライド作成のテクニックを解説します。

【過去のコラムはこちら!第1回第2回

心に残る「クロージング」で、聴き手の次の行動を促す

学生の心をつかむ企業説明において、聴き手(学生)にポジティブな印象と信頼感を与え、促したい行動(選考への参加)につなげるためには、「オープニング」→「メッセージ」→「証拠」→「クロージング」という構成で話を展開していくことが効果的です。(「オープニング」「メッセージ」「証拠」については第2回で解説)


その締めくくりである「クロージング」では、終了後も学生の心に自社への好印象を残し、次の選考への参加を促す関わりが重要です。クロージングで力強い印象や動機づけを聴き手に残すことができなければ、それまでの流れの中で信頼感を高められたとしても、プレゼンテーション全体として十分な効果が発揮されません。クロージングの有効なテクニックとして、「行動と利益を伝える」「チャレンジする気持ちを刺激する」を紹介します。

「行動と利益」を伝え、得られるメリットを伝える
クロージングに至るまで、学生は企業側が発信する志望度に直結しうるメッセージを通じて、徐々に信頼感を高めている状態です。この信頼感を確かなものにし、次の選考やインターンシップ等への参加を促すためには、クロージングで学生が次回以降の選考に参加した場合(行動)、どのようなメリット(利益)を得られるのかを明確に伝えることが大切です。例えば、次のような伝え方があります。

「私たちの事業に少しでも興味を持っていただけた方は、ぜひ選考にエントリーしてください。一次面接以降は、面接とは別に、皆さんそれぞれの『叶えたいキャリア』や『就活の軸』を私たち採用担当が伺う機会と、実際にそのキャリアを実現している社員とのマンツーマンの面談もご用意しています。入社後のキャリアプランや働く姿をより具体的にイメージしていただきながら、『この会社で働く自分』を前向きに思い描けるよう、私たちも全力でサポートします」

「私たちの事業の強みを体感したい方は、ぜひインターンシップにご参加ください。現場の社員によるマンツーマンの指導のもと、電話を使ったアポイント獲得などを通じて、顧客開拓の実践的な経験を積むことができます。また、実際の業務を通じて、マーケティングの基本的な考え方や顧客ニーズの捉え方、課題解決のプロセスといった実務に直結する知見に触れられるほか、社会人として求められるビジネスマナーや報連相といった基礎的なビジネススキルを身につけることもできます」

「行動+利益」を伝える際には、第2回で解説した「学生に促したい行動から逆算して設定した伝えたいメッセージ」と関連づけることで、より高い効果が期待できます。重点的に伝えてきたメッセージが、今後の選考過程を通じて学生にどのようなメリットとして還元されるのかを最後に力強く伝えることで、プレゼンテーション終了後も期待感を持続させ、選考への参加を後押しすることができます。

聴き手の「チャレンジする気持ち」を刺激する
メリットを伝えることに加え、聴き手(学生)のチャレンジする気持ちを刺激することも有効です。例えば、次のような呼びかけがあげられます。

「変化の激しい時代だからこそ、自分の意志で未来を切り拓ける人が求められています。私たちとともに、――や――といったフィールドでキャリアを積み重ね、自分自身の可能性を広げていきましょう」

「私たちと一緒に、事業を通じて――という社会課題の解決に挑戦しませんか? みなさんの力が必要です。傍観者ではなく、“自ら変えていく側”になる、そんな意志ある仲間と共に、挑戦できる環境がここにはあります」

個人差はあるものの、多かれ少なかれ、誰もが「成長したい」「困っている人の力になりたい」といった理想を心の中に抱いています。特に売り手市場にある現代の学生たちは、多くの企業の中から自分の理想や夢を実現できる環境を主体的に選べる立場にあり、こうした思いや成長意欲を重視して就職活動に臨んでいます。

このような学生の価値観に働きかけるうえで有効なのが、アメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタールによって提唱された「ピグマリオン効果」です。他者からの期待によって、学習や仕事の成果が向上するというこの心理効果は、採用活動においても応用が可能です。「あなたには可能性がある」「挑戦する価値がある」といった期待を込めたメッセージを発信することで、聴き手の意識や行動を、自然にこちらが望む方向へと導ける可能性がぐっと高まります。

大人数の心を一度につかむ効果的なプレゼンテーション術〈応用編〉

「信頼感を高めるプレゼンテーション」は、オープニングからクロージングまでの流れに沿って話すだけでなく、話し方やスライドのちょっとした工夫を加えることで、聴き手(学生)の信頼感や印象をより一層高めることができます。ここでは、簡単に取り入れられるテクニックをご紹介します。

聴き手の「名前」を呼び、関心を示す
プレゼンテーションの中で、聴き手の「名前」を呼ぶことは、信頼感を高めるうえで有効です。名前は誰にとっても自分自身を象徴する大切なものであり、そこに関心を寄せられることは「あなたを大切に思っている」というメッセージとして相手に伝わります。名前を呼ばれた相手には安心感が生まれ、話し手への信頼感が自然と高まります。

例えば、オープニングで「グッドニュース」を共有してもらう際、「お名前を教えていただけますか?」と聞き、その後「Aさんのグッドニュースに拍手!」といったように名前を添えたり、感想の中で名前を伝えたりするのも効果的です。また、説明会開始前の雑談で学生の名前や志望理由を把握しておくと、その志望理由に関連した説明を行っているときに、「いま紹介した当社の強みについて、Aさんはどう感じられましたか?」と名前をあげて問いかけをすることもできます。こうしたちょっとした工夫が、相手の信頼を得る一助となります。

大人数の中の「個人」に働きかけ、聴き手全体の関心を集める
プレゼンテーションでは、話し手が一方的に話し続けると、聴き手(学生)の集中力が途切れやすくなります。特に大人数を対象とした説明会では、参加者一人ひとりの関心を惹きつけ続けることが難しくなりがちです。そこで効果的なのが、プレゼンテーション中に「1対1のやりとり」を意識的に取り入れることです。例えば、事前の雑談で明るく受け答えし、自社に関心を示していた学生に対して、説明会の中で以下のような問いかけを行うと良いでしょう。

「Aさんは私たちの業界に興味があると話してくれましたよね。業界の動向をお話ししましたが、さらに深く知りたい点や質問はありますか?」
「Bさんは営業職に関心があるとおっしゃっていましたが、当社の営業職の業務内容や働き方に関して、どのような印象を持たれましたか?」

このような個別の問いかけは、名前を呼ばれた本人だけでなく、他の参加者も「自分も見られている」「自分も意見を求められる」と感じ、集中力や関心度が高まります。また、話し手と聴き手が対話を交えることで、説明会全体に双方向の空気が生まれ、一体感を醸成しやすくなります。

聴き手を引き込む! スライドづくりのコツ
第2回では、自社への信頼感を高めてもらうために「メッセージ」と「証拠」を示す重要性について解説しました。プレゼンテーションで使用するスライドは、そうした情報をよりインパクトをもって伝えるための重要なツールとなります。

強調したい情報は、1スライドに1つだけ
聴き手(学生)に特に思いを込めて伝えたいメッセージや、企業の魅力や強みを裏づける証拠となる情報は、1スライドにつき1つに絞って掲示するのが効果的です。メッセージや根拠をそれぞれ1つのスライドに記すことで、聴き手の記憶に残りやすくなるだけでなく、話し手の話にも集中してもらうことができます。1スライドに多くの情報を詰め込みすぎると、聴き手の意識がスライドを読むことに集中してしまい、肝心な話が耳に入りにくくなる恐れがあります。

例えば、「若手社員の成長スピードが速い」という強みを伝えたい場合、まず1枚目でそのメッセージだけ伝えたあと、証拠となる具体的なエピソードや数字などを1スライドに1点だけ添えて話を展開していきます。重要な情報が1つに集約されていることで、スライド全体が、その強みを伝えるための“証拠”として際立ち、メッセージ全体の説得力が強調されます。

“人”に関する話には、写真を活用する
社員のキャリアや活躍の様子、顧客から寄せられた自社へのポジティブな声など、特に“人”に関する話題やエピソードを伝える場面では、写真を活用することが非常に効果的です。

「百聞は一見にしかず」ともいわれるように、写真は言葉だけでは伝えきれない感情や状況を視覚的に補完する力を持っており、聴き手に強い印象を与えることができます。特に、これからキャリアを積んでいく学生にとっては、実際に働く環境や人々の姿を具体的に見ることができるため、企業への理解が深まるとともに、関心を持ちやすくなります。

次回は、学生の志望度を高める「1対1の効果的なコミュニケーション術〈前編〉」を紹介!

企業説明会などの場面で、大人数の学生に向けて自社への印象や信頼感を高めたあとは、その後の面接や面談などの「1対1のコミュニケーション」を通じて、学生の自社への志望度を高めていきます。次回は、面接で信頼を築き、志望度を高める「1対1の効果的なコミュニケーション術〈前編〉」として、学生の心をつかむために効果的な面接のための事前準備などについて解説します。