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大人数の心を一度につかむ、効果的なプレゼンテーション術〈基礎編〉【令和の採用担当者必見!学生の“心をつかむ”コミュニケーション力 vol.2】

この連載では、プレゼンテーションや営業力のトレーニングとしてFORTUNE500(アメリカの売上トップ500社)の90%以上が採用する「デール・カーネギー・トレーニング」のメソッドを基に、採用担当者のコミュニケーション力強化のポイントを解説していきます。第2回は、第1回で解説した“採用担当者が磨くべき2つのコミュニケーション力”の内のひとつ、「大人数の心を一度でつかむコミュニケーション力」に焦点を当て、多くの採用担当者が経験する「企業説明」を事例に、効果的なプレゼンテーション方法をご紹介します。

【過去のコラムはこちら!第1回

“学生に促したい行動”を明確にし、伝えたいメッセージを決める

採用活動の初期段階では、会社説明会や就職イベント、インターンシップ説明会など、限られた時間で大人数の学生に自社の魅力を伝える場面が多くあります。こうしたプレゼンテーションの準備では、まず学生の関心やニーズに寄り添い、「この会社の選考に進みたい」と思ってもらえる明確なメッセージを設定することが重要です。

企業説明のゴールは、学生に自社への興味・関心を持ってもらい、信頼感を高めたうえで、次の選考ステップへの参加につなげることです。内容が学生のニーズから逸れていたり、伝えたいことが多すぎて焦点が定まっていなかったりすると、印象に残らず、信頼感も得られません。学生に促したい行動から逆算して、伝えたいメッセージを決めることが、準備段階で最も重要です。

メッセージは、第1回で紹介した、学生が最終的に企業選びの決め手とする、「社風や社員の魅力」「やりたい仕事ができる」「成長できる環境がある」を意識して設定すると効果的です。

例えば、「成長できる環境が整っている」と伝えるためのメッセージとして、❶「業界のトレンドを踏まえた商材・サービス提案の経験を積むことができる」、❷「早期にマネジメントの経験を積むことができる」といった内容が挙げられます。「やりたい仕事ができる」と伝えるためには、❸「将来的にさまざまな職種にチャレンジできる環境がある」というメッセージを伝えることも有効でしょう。

これらのメッセージを、企業説明のどの項目で伝えるかも検討しておきましょう。例えば、❶は事業説明、❷❸は昇給・昇格やキャリアパスの事例説明で取り入れると効果的に学生に伝わり、興味を引き出すことができます。伝えるタイミングもあらかじめ決めておくと、次に解説するプレゼンテーションの基本構造に沿って内容を組み立てる際に、よりスムーズに進めることができます。

大人数の心を一度につかむ、プレゼンテーションの基本構造

伝えたいメッセージが決まったら、それを効果的に伝えるための話の構成や内容を検討していきましょう。プレゼンテーションの聴き手(今回は学生)にポジティブな印象と信頼感を与え、最終的に促したい行動へとつなげるためには、「オープニング」「メッセージ」「証拠」「クロージング」の流れで進めることが効果的です。ここでは、それぞれの構成のねらい狙いや、実際の企業説明で活用できるコミュニケーション手法をご紹介します。

オープニングで興味を引き付ける

プレゼンテーションの冒頭(オープニング)は、学生に自社のポジティブな第一印象を与える絶好の機会です。企業説明の本題に入る前に、力強く明快なコミュニケーションで学生の好感を獲得し、友好的な関係を築いておくことで、学生の関心を引き、プレゼンテーション全体への集中力を高めてもらうことができます。有効なテクニックとして「グッドニュース」と「個人的な出来事を話す」を紹介します。

「グッドニュース」で学生に好印象を与え、良好な関係を築く
「グッドニュース」とは、文字通り「良いニュース」のことです。「グッドニュース」の共有は、聴き手の心を瞬時に引きつけることができる、取り入れやすいコンテンツです。オープニングで、まずは話し手である採用担当者から、その日や最近の自分の「グッドニュース」を学生に発信してみましょう。例えば、次のようなものがあります。

「ちょうど昨日、素晴らしいニュースを発表しました! 私たちの会社が、HR業界の注目サービスを表彰するアワードで入選を果たしました! 前期比20%伸ばすことができました。皆さんにお伝えできてうれしいです!」

「今朝、私のミスがきっかけで、妻とケンカしてしまったのですが、お昼休みに私から電話をして謝ったら仲直りできました! 皆さんにお会いする前に解決できてよかったです(笑)」

自社に関するニュースであれば、自社の魅力を伝えることができますし、自分自身のニュースであれば、その人のポジティブな人間性や人柄も、好印象と同時にアピールすることができます。

学生との良好な関係をつくるために、グッドニュースを伝えたあとは、参加している学生にも共有してもらいましょう。オンラインで企業説明を行う場合は、チャット機能に入力して送信してもらうことで、参加者が一緒に参加している他者を感じることができ、一体感や臨場感が生まれます。

そして、一人ひとりのグッドニュースに必ずポジティブなリアクションを返しましょう。リアクションをしっかりと返すことで、グッドニュースを話した学生は「自分の話を聴いてくれた」と感じ、信頼感が醸成されます。

自己紹介では「個人的な経験」を話し、学生との共通点を伝える
オープニングで採用担当者が自己紹介を行う際は、「個人的な経験」を話し、学生との共通点を伝えることで、親しみや信頼感を高めることができます。ですので「個人的な経験」は、学生が共感しやすい可能性のある内容を選ぶと効果的です。

例えば、採用担当者が「学生時代、志望業界が決まらず悩んだこと」や「説明会で感じた“この会社いいかも”という直感が入社の決め手になったこと」などの就職活動時のエピソードを話すと、学生の共感を得やすくなるでしょう。また、「サークルやアルバイトで得た経験が今に活きていると感じたこと」や「学生時代に注力していた活動」などの個人的な話題は、学生に「自分と似ている!」という気持ちを抱かせ、親近感を生むことができます。

伝えたいメッセージ → 証拠 で、信頼感を高める

オープニングでポジティブな関わりによって学生の注意を引いたあとは、本題である企業説明へと移ります。企業説明では、事業内容や職種、キャリアパス、福利厚生など、企業ごとにさまざまな項目について話します。

いずれの項目においても共通して重要なのは、「伝えたいメッセージを明確に示す→その根拠となる証拠を提示する」という順序で話を展開することです。この流れを意識することで、学生の興味・関心をさらに引き出し、自社への信頼感を高めることができます。

伝えたいメッセージを明確に示し、聴き手の意識を主題に集中させる
項目の冒頭で、「その説明を通じて伝えたいメッセージ」を力強く表明しましょう。あらかじめ学生の関心やニーズを踏まえて設定しておいたメッセージを活用することで、「この会社の選考に進みたい」と思ってもらえるきっかけをつくることができます。

たとえば職種説明で「成長できる環境が整っている」と感じてもらいたい場合は、「業界のトレンドを踏まえた商材・サービス提案の経験が積める」といったメッセージを設定し、冒頭で明確に打ち出します。これにより、学生の意識をこちらが意図する主題に集中させることができます。

「証拠」で学生の納得を引き出す
メッセージによって、聴き手にこちらの伝えたい内容に意識を向けてもらったあとはその内容に納得してもらうために「証拠」を提示していきます。例えば、「業界のトレンドを踏まえた商材・サービス提案の経験が積める」というメッセージを伝える場合には、

■ 実際にトレンドを取り入れた、営業の提案事例
■ 提供サービスに対する顧客からのポジティブな声
■ 業界動向を学ぶ社内勉強会や研修制度

といった、事実情報や証言、具体的な制度などを“証拠”としてしっかり盛り込むことが重要です。特に社風や社員の人柄といった、説明会だけでは伝わりづらい魅力については、現場社員に直接登壇してもらい、仕事のやりがいや日常の様子を学生に語ってもらうことで、リアルで納得感のある印象を与えることができます。さらに、オフィスの雰囲気をそのまま伝える手段として、オンライン説明会中にオフィスの様子をライブ中継するなどの工夫も効果的です。

発信するメッセージに信頼性を持たせ、学生の納得を得るためには、根拠となる証拠が最大の武器になります。企業の沿革や基本情報などを伝える場面ではこの流れを厳密に意識する必要はありませんが、事前に設定した「伝えたいメッセージ」に関しては、このような構成を意識してプレゼンテーションを展開していきましょう。

次回は「クロージング」、話し方のテクニック〈応用編〉を紹介!

次回は、プレゼンテーション終了後も好印象を持続させる「クロージング」のポイントと、大人数の心を一度につかむ効果的なプレゼンテーション術〈応用編〉として、今回ご紹介した流れをさらに強化するための話し方やスライド作成のテクニックについて解説します。