面接で信頼を築き、志望度を高める「1対1の効果的なコミュニケーション術」〈中編〉【令和の採用担当者必見!学生の“心をつかむ”コミュニケーション力 Vol.5】
この連載では、プレゼンテーションや営業力のトレーニングとして、FORTUNE500(アメリカの売上トップ500社)の90%以上が導入している「デール・カーネギー・トレーニング」のメソッドを基に、採用担当者のコミュニケーション力を高めるためのポイントを解説していきます。
前回は、面接で信頼を築き、志望度を高める「1対1の効果的なコミュニケーション術」〈前編〉として、採用担当者が実施する「人事面接」を事例に、学生の心をつかむ面接を行うための「事前準備」のポイントを解説しました。今回の〈中編〉からは、「事前準備」で用意した情報を活用し、面接本番で学生に信頼感と自社への志望度を高めてもらえる、具体的な話し方や質問の仕方についてご紹介します。
「人事面接」で心を動かす! 信頼感と志望度を高める3つのアプローチ
新卒人材の獲得競争が加速する中、採用担当者には、学生を見極めるだけでなく、「学生のニーズに合致する自社の魅力を伝え、信頼を獲得し、次の選考への意思決定を促す力」が求められています。前回は、このようなスキルを“採用担当者の営業力”と定義し、「人事面接」でその力を発揮するために事前に準備すべきポイントとして、ユニーク・セリング・プロポジション(以下、USP/競合他社よりも優れている自社の魅力)を、学生ごとに把握しておくことの重要性をお伝えしました。
いざ対面で実施する「人事面接」では、把握したUSPを踏まえ、学生の信頼感と志望度を高めるためのアプローチを行っていきます。面接において学生の信頼感と志望度を高めるために有効なアプローチは、次の3つです。
全体的な面接の流れは、①で学生に「採用担当者のAさんから有益な話が聞けそう!」という好印象を与え、②の採用担当者のからの質問や対話を通じ、①で抱いた印象を確信へと変えてもらいます。そして③の終盤で、次回以降の選考への期待感を最大限に高め、次の選考への参加を促します。それぞれのアプローチについて具体的に解説します。
① “学生の心をつかむスタートトーク” で、好印象を与える
「人事面接」の冒頭は、面接全体の成否を左右する非常に重要なタイミングです。スタート時点で学生に好印象を与えることができれば、その後に続く採用担当者からの質問や情報提供に対して、学生の興味・関心を持続的に高めてもらうことができます。
好印象を与えるためには、開始直後にいきなり質問を始めるのではなく、“学生の心をつかむスタートトーク”によって、「自分にとって価値のある情報を採用担当者のAさんは持っていそう」という期待感を醸成することが重要です。“学生の心をつかむスタートトーク”は、主に次の5つの要素で構成します。
①~⑤の流れを通じ、冒頭の短い時間で採用担当者の丁寧な人柄や、保有する情報の質の高さ、さらにそれを裏付ける具体的な根拠を端的に伝え、学生に強いインパクトを与えていきます。
例えば、面接の事前準備において、学生のAさんについて以下の情報が得られていたとします。
Aさんが求めているニーズ
・20代でマネジメント経験を積みたい
・大学3年のうちに就職活動を終了させたい
Aさんのニーズに関連した最終情報・お得情報
・20代でマネージャー職に昇格可能
・独自の選考スケジュール、社員面談の実施が可能
これらの情報を活用したスタートトークの例文は次の通りです。
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〈① 繋がる〉
株式会社〇〇で採用担当をしております田中です。
お忙しい中、当社までお越しいただきありがとうございます!
今日は一次面接ということで、Aさんの就職活動の軸や、
入社後にどのようなキャリアを描いていきたいとお考えなのか、
ぜひお聞かせいただければと思っています。
また、当社についての理解も深めていただける時間にしたいと考えています。
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〈② 心を打つ〉
事前にご提出いただいたアンケートも拝見しましたが、
「大学3年生のうちに就職活動を終えたい」というご希望があるのですね。
当社では、それぞれの学生の方の希望する選考スピードや、
就活の状況にあわせて選考を進めています。
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〈③ ストーリーを語る、④役に立つ提案をする〉
25卒内定者の中には、3年次の12月に内定・承諾まで進んだ方もいらっしゃいます。
Aさんも、今後の面接を通じてしっかりと軸のすり合わせを行いながら、
ご希望であれば年内の就活終了に向けた選考進行が可能です。
選考の途中では、20代でマネジメント職についている社員との面談も用意できますので、
入社後のキャリア形成についても具体的にイメージを持っていただけるかと思います。
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〈⑤質問〉
まずは本日の面接で、
現在の就活状況も含め、Aさんのお話をぜひお聞かせいただけますか?
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心をつかむスタートトークは、長くても2分以内におさめましょう。冒頭のトークが長くなると、逆に「面接官が、自分の伝えたいことを一方的に話す面接かもしれない…」と、学生にマイナスの印象を与えてしまいます。スタートトークの際は、学生から目線をそらさず、うなずきなどの反応も受け止めながら、相手の様子をしっかり感じ取り、熱意を持って語ることで、より好印象を与えることができます。
人事担当者の中には、こうしたノウハウを知らなくても、相手に対して自然に好印象を与える人もいますが、「どちらかといえば自信がない」といった人もいるかと思います。そうした場合は、スタートトークの要素ごとに伝えたい要点をメモにまとめ、面接時に手元に置いて、話す際にさりげなく確認するなどの工夫をしましょう。繰り返し実践することで、スタートトークの流れや構成が自然と身についていきます。
次回は、「1対1の効果的なコミュニケーション術」〈後編〉
面接冒頭のスタートトークで学生の好印象を与えたあとは、採用担当者からの「質問」と「対話」を通じて、学生の自社への志望度を高めていきます。次回は、「1対1の効果的なコミュニケーション術〈後編〉」として、信頼を築き志望度を高めるための、具体的な質問の仕方を解説します。ぜひ、ご覧ください!









