なぜ本音を言えないのか?プレシニア社員の停滞感の正体【50代の「静かな退職」を防ぐ!プレシニア社員の再活性化マネジメント Vol.2】
第1回では、プレシニア社員の意欲低下に気づくことの重要性をお伝えしました。では、その変化の背景には何があるのでしょうか。現場では「本人に聞いても『特にありません』と言われる」「1on1をしても本音が見えない」と悩む管理職も少なくありません。しかし、プレシニア社員が本当に何も感じていないわけではありません。
今回は、プレシニア社員の再活性化のSTEP2「理解する」として、プレシニア社員が本音を口にしにくい理由と、その停滞感の正体について、調査結果や現場での知見をもとに紐解いていきます。
【過去のコラムはこちら!第1回】
「何か困っていることある?」と聞いても、「特にありません」と返ってくる
こんな場面に心当たりはないでしょうか。
・1on1で「何か困っていることはありますか?」と聞いても、「特にありません」と返ってくる。
・最近は発言が減ったものの、仕事はきちんとこなしているので深く踏み込めない。
・年上の部下だから、厳しく言うのも失礼な気がしてしまう。
・気を遣いすぎて、業務連絡だけのやり取りになっている。
管理職としては「問題はなさそう」と受け止めてしまいがちですが、実際にはその裏で、「自分の役割が分からない」「期待されていない気がする」といった思いを抱えているケースは少なくありません。そして、その思いは本人から語られない限り、周囲には見えません。プレシニア社員の停滞は、「やる気がない」のではなく、「本音を言えない状態」から始まることが多いのです。
本音を言えなくなる職場環境の変化
プレシニア社員が本音を口にしにくくなっている背景には、職場環境の変化があります。
近年は、役職定年や若手・中堅層の管理職登用などにより、50代社員を取り巻く職場環境は大きく変化しています。株式会社ジェイックが実施した「プレシニア社員(50代正社員)の『年下上司』に関する実態調査」では、46.3%が「直属の上司は年下」と回答しました。つまり、今や50代社員のおよそ2人に1人が、年下の上司のもとで働いています。
さらに、年下上司がいる人に「仕事の仕方や考え方に違いを感じるか」と尋ねると、約6割が何らかの違いを感じていました。違いとして多かったのは、
・コミュニケーションの取り方
・部下育成・指導の仕方
・仕事を進めるスピード感
などです。
ただし、ここで注目したいのは「価値観が違うこと」ではありません。問題は、その違いをお互いに意識しすぎるあまり、本音で話す機会そのものが減ってしまうことです。
「気遣い」が、対話を止めてしまう
現場では、こんなすれ違いが起きています。
30〜40代の管理職からは、
「人生経験ではかなわない相手だから注意しづらい」
「年上だから、あまり指示を出さない方がいいのでは」
そんな声を聞くことがあります。
一方、同調査でプレシニア社員に「年下上司に求めること」を尋ねると、返ってきたのは全く逆の声でした。
「気を使う必要はなく、指示をしてくれたらよい」
「仕事では年齢は関係ない。普通に接してもらいたい」
「年上への敬意は持ちながらも、仕事はきちんと任せ、必要な時には経験を頼ってほしい」
つまり、多くのプレシニア社員は、特別扱いを求めているわけではありません。上司は「傷つけたくない」と遠慮し、部下は「もっと普通に接してほしい」と思っている。お互いを思いやる気持ちが、結果として対話を減らしてしまう――これが現場で起きている"ボタンの掛け違い"です。
本音を言えないのは、「評価する相手」だから
それでは、なぜ本人はその気持ちを伝えないのでしょうか。理由の一つは、相談相手との関係性にあります。直属の上司には評価権があります。人事は処遇や異動に関わります。だからこそ、「役割がなくなった気がする。」「将来が見えなくて不安だ」「正直、自信を失っている」こうした本音ほど、社内では口にしづらくなります。
特にプレシニア社員は、長年キャリアを積み重ねてきた自負があります。だからこそ、「弱音を見せたくない」「迷っている自分を知られたくない」という気持ちも強く働きます。さらに、「こんなことを言ったら扱いづらい社員だと思われるのではないか」という不安も、本音にふたをする要因になります。
その結果、面談では「特に問題ありません」という言葉だけが残り、本当の停滞感は見えなくなってしまうのです。
「もう頑張りたくない」わけではない
一方で、今回の調査からは希望も見えてきます。年下上司との関係を良好に保つために意識していることを聞くと、最も多かった回答は、「相手の立場を尊重し、役職に関係なく協力する」(52.5%)でした。続いて、「上司の考え方や価値観を理解しようとする」「年齢差を意識しすぎない」「必要に応じて助言する」といった回答が続いています。
つまり、多くのプレシニア社員は、「もう頑張りたくない」と考えているわけではありません。むしろ、自分なりに職場へ適応し、組織に貢献したいという思いを持っている人が少なくないのです。
だからこそ、会社側も「変わらない人」と決めつけるのではなく、「なぜ本音を言えないのか」を理解する視点が必要になります。
STEP 2「理解する」――見えている行動ではなく、見えていない背景を見る
STEP2で大切なのは、見えている行動ではなく、その背景を理解することです。
プレシニア社員の停滞の背景には、
・役割や立場の変化への戸惑い
・評価される立場だからこそ言えない不安
・「期待されていないのでは」という思い込み
・年齢や立場を意識しすぎたコミュニケーションのすれ違い
など、さまざまな要因があります。だからこそ、「動かない人」と捉えるのではなく、「何がそうさせているのか」を理解する姿勢が、再活性化の第一歩になります。
STEP 2「理解する」今日からできるワンポイント
プレシニア社員と話す機会があれば、「最近どう?」ではなく、相手の役割認識を知る質問を一つ投げかけてみてください。例えば、
「今のお仕事で、ご自身はどんな役割を担っていると感じていますか?」
正解を求める質問ではありません。相手が今、自分の役割をどう受け止めているかを知るための問いかけです。会社の期待と本人の認識にズレがあれば、そこに停滞感の原因が隠れていることがあります。
ポイントは、答えをすぐに評価したり、会社の期待を伝えたりしないことです。まずは「そう感じているんですね」と受け止めるだけで構いません。相手の認識を知ること自体が、STEP2「理解する」の第一歩になります。
次回はSTEP3「対話する」。プレシニア社員の本音を引き出すために、なぜ社内の1on1だけでは限界があるのか。利害関係のない第三者との対話が、意欲の再活性化につながる理由について解説します。








