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「ジョブ型人事」がもはや主流?これからの働くヒトと会社の関係【人事コンサルが語る「働くヒト」を取り巻く変化 Vol.1】

2026.11.09
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事業環境が変化するスピードがこれまでにない位に速まっています。世界情勢のニュースも、日付が変われば、すでに昨日のニュースは鮮度を失っている状態に……。かつてないほどの経営環境の激変に対して、企業もその戦略や施策の変化のスピードを速めることで対応を進めようとしています。

そのような背景の中で、当然我々「働くヒト」を取り巻く環境も大きな変化の波にさらされることは自明のことなのかもしれません。私たちの仕事のあり様の「変化」、そしてその変化の先にある「私たちのキャリアの変化」。本連載では、全6回を通じて、「働くヒト」を取り巻く変化を少し俯瞰した視点から、語ってみたいと思います。

「ジョブ型人事」がもはや主流? 

さて、本連載では、「働くヒト」を取り巻く変化を全6回で皆さんとともに考えたいと思いますが、初回は「ジョブ型人事」についてです。すでに「ジョブ型人事」の導入が組織・人事の領域のトレンドとして注目を浴びてから、一定の期間が経ちました。皆さんの会社やお取引様などで、「わが社も今年から人事制度がジョブ型になるんだ」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。

では、ジョブ型人事の企業における導入はどの程度進んでいるのでしょうか? 内閣官房・経済産業省・厚生労働省が2024年8月に公表した「ジョブ型人事指針」では、導入企業の事例の紹介がありますが、大規模な調査による導入率の公式統計までには至っていません。

そのような背景のなか、代表的な調査の一つが、2025年7月に株式会社HRビジョンが公表した「日本の人事部 人事白書2025」(調査対象6139社)があげられます。この調査結果において、すでに導入している、または導入予定・検討中と回答した企業は、40%弱となっています。

これらの「ジョブ型」の内容は、従来の等級制度をより明確な「職種」に分けて、その役割や専門性を整理した制度から、更にポジションベースで細かく役割設定したものを「ジョブ」として設定するなど、粒度の違いが実際にはあることが想定されます。ただ、大きく捉えると「一人ひとりの担っている役割に応じた処遇」という大きなトレンドに向かって、日本企業/労働市場が動いている点は間違いないように思えます。

企業がジョブ型人事を選択する理由

では、なぜ企業がジョブ型人事の導入を急ぐのか、という点と、その先の労働市場の在り方はどうなっていくのか、について考えてみましょう。

ジョブ型人事導入の企業側にとっての最大のメリットは、図1の左にあるように、「ジョブ」として、「組織構成の最小単位」を定め、その役割と必要となる能力を明らかにすることにより、事業戦略に合致するよう、自社の組織を継続的にアップデートできる点にあります。

日本の労働法制における解雇規制は依然として強いものの、戦略に合わせてジョブを入れ替えたり、再編することで、必要な人材の社外からの採用や、社内における人材の異動・配置などの施策が、より会社側・社員側双方にとって明確になるという利点があります。

またこれらの動きは、我々の業務におけるAIの活用が進む中で、ジョブとそこに求められるスキルの中身も変化することで、さらに加速することが想定されます。

図1

会社側にとってジョブ型人事は、環境変化のスピードが速い中、「事業戦略に合わせて組織を変化させる力」を高める点に大きな意味があります。事業戦略の変化に応じて、必要なジョブやスキル・人材配置を見直す動きが強まることが想定されます。

「黒字リストラ」に代表されるワーク・フォースの組み換え

東京商工リサーチの調査によると、2025年に、「早期・希望退職」を募集した上場企業は全体で43社であり、そのうち直近の決算で黒字であった企業の実施は、全体の67.4%にあたる、という報告があります。

これは、いわゆる「黒字リストラ」と呼ばれるものであり、業績が黒字であるにもかかわらず、希望退職の募集などのいわゆる「リストラクチャリング」施策を実施することを指します。赤字でのリストラとは異なり、経営的な体力がある段階での事業や人員構成を見直す取り組みと言えます。

この背景には、一体何があるのでしょうか? 一言で言えば、前述した「事業戦略に合わせた変化対応」の結果と言えます。

いわゆる「両利きの経営」として「既存事業を深掘りしつつ、新たな競争優位を求める事業を探索する動き」、AIの進展やその他の技術革新による「組織を構成するジョブの変化」、そしてそれらの結果としての「求められる人材の変化」、といった一連の流れがあることは想像に難くありません。

厳しい事業環境を生き抜く上で、会社側は自社の組織を新たな事業戦略に合致させるために、ジョブの再編と人材の新陳代謝を進めている、と見ることができます。このような変化は、労働市場にも影響を与え、私たち「働く側」にも、大きな変化を求めるものになってきています。

エンプロイアビリティ(雇われうる能力)の先にあるものとは?

経済産業省が2026年3月に公表した「2040年の就業構造推計(改訂版)」では、2040年に職務分類上の「事務職」が約437万人の余剰となる一方、AI・ロボット等の利活用を担う人材が約339万人不足すると推計されています。

これは、437万人がそのまま失業者になるという意味ではありません。これは、一定の経済成長やAI・ロボットの活用、リスキリングなどを前提にした、職種別の需給ギャップを指します。

ただ一方で、同時にAI・ロボットの利活用を担う人材が339万人不足する、という予測も出ています。これは、437万人の余剰という言葉に惑わされずに、中長期における労働市場の需給変化として捉えるべき話だと思います。

私たちが認識すべきこととして、事業戦略の変化、その前提として社会・経済の変化、AI・ロボットに代表される技術の進化によって、私たち自身の「エンプロイアビリティ(雇われうる力)」も常に揺さぶられ、私たち自身で常にアップデートを進める必要がある、という点です。

社会・経済の方向性をしっかりと観察しつつ、業種・業界や自社の今後の方向性をきちんと理解し、必要となるジョブ、そこに求められるスキルや経験などについて自律的に仮説を構築し、スキル学習や転職も含めた「自己投資」を継続的に行うこと自体が、ビジネスパーソンとして必須の「スキル」として求められる時代になったと言えると思います。まさに「エンプロイアビリティ(雇われうる力)」獲得に向けた、「キャリア自律」時代が到来したと言えるでしょう。 

このコラムでは、上記の課題認識を前提に、第2回以降、下記のテーマを取り扱う予定です。

第2回:私の「キャリア」って、誰が決めるの? 私の「キャリア」、労働市場、会社
第3回:「キャリア自律」が大事といわれるが……そもそも「キャリア自律できている」ってどういう状態?
第4回:「スキルペイ」スキルが決める私の市場価値? ジョブ型人事の次の世界とは
第5回:AIの発展と「私のキャリア」 私たちはどうAIと向き合い、キャリアを作っていけばよいのか?
第6回:「働くヒト」と私の上司 これからの時代の「上司」に求められるマネジメント

今後の組織・人事の領域における人材マネジメントの方向性とともに、皆さん一人ひとりのキャリアを考える上での参考になれば幸いです。