なぜ今、50代プレシニア社員は“静かに意欲を失う”のか【50代の「静かな退職」を防ぐ!プレシニア社員の再活性化マネジメント Vol.1】
人手不足が続く中、若手の採用や離職防止に注力する企業が増えています。一方で、現場では50代プレシニア社員の意欲低下に悩む管理職の声も少なくありません。経験豊富なベテラン社員が、なぜ「頼まれた仕事はやるが、それ以上は動かない」状態になってしまうのか。本連載では、国内最大級のキャリア面談プラットフォーム「Kakedas(カケダス)」を運営する立場から、調査データや現場で蓄積された知見をもとに、プレシニア社員の力を引き出すマネジメントのヒントを解説します。
プレシニア社員の再活性化を「気づく」「理解する」「対話する」「再定義する」「活かす」「循環させる」の6つのステップで考えながら、現場ですぐに実践できるポイントもご紹介します。第1回は、その第一歩となる「気づく」がテーマです。
STEP1 まずは「変化に気づく」ことから始まる
若手社員の採用や定着が経営課題として注目される一方で、50代プレシニア社員の変化は、十分に議論されているとは言えません。
現場では、こんな場面に心当たりはないでしょうか。
「以前なら改善案を積極的に出していた人が、最近はほとんど発言しなくなった」
「頼めばやる。でも、自分から新しい仕事には手を挙げない」
「後輩に聞かれれば丁寧に教えるものの、自ら育成には関わろうとしない」
「会議では『皆さんの方針でいいと思います』が口癖になっている」
本人は真面目に仕事をしています。遅刻や欠勤が増えるわけでもありません。だからこそ、「問題なく働いている」と受け止められがちです。
しかし、本来であれば組織を支える存在であるプレシニア社員の経験や知見が十分に生かされなくなることは、人手不足が続く企業にとって大きな機会損失です。こうした状態は近年、「静かな退職(クワイエット・クィッティング)」とも呼ばれています。
重要なのは、「やる気がない」と決めつけることではありません。まずは、これまでとの小さな変化に気づくこと。それが再活性化の第一歩です。
データが示す現実 過半数が「モチベーション高く働けていない」
では、実際にプレシニア社員はどのような状況にあるのでしょうか。
株式会社ジェイックが実施した「プレシニア社員(50代正社員)の仕事に対するモチベーションに関する実態調査」では、「現在の仕事にモチベーション高く働けていますか」という質問に対し、56.0%が「モチベーション高く働けていない」と回答しました。
さらに役職別に見ると、管理職では45.4%だった一方、役職のない一般社員では66.6%に上ります。この結果から見えてくるのは、「50代だから意欲が低い」ということではありません。役割や期待の変化によって、自分の力を発揮しづらくなっている人が少なくない、という現実です。
「キャリアが尊重されていない」という感覚
調査では、モチベーションが上がらない理由として最も多かったのが、「50代〜60代のキャリアが尊重されていない」という回答でした。続いて、「仕事に新鮮さを感じられない」「会社から適切に評価されていない」という回答が続いています。
「Kakedas」には、全国4,600人超(2026年4月末時点)の国家資格キャリアコンサルタントが登録し、多くのキャリア相談の知見が蓄積されています。その中で共通して聞かれるのが、「役割を失ったように感じる」という声です。
例えば、
・長年営業部門を率いてきた人が、役職定年を機にルーチン業務中心の部署へ異動する。
・以前は部下から相談を受ける立場だった人が、年下の上司から指示を受けるようになる。
・会議では若手ばかりに意見が求められ、自分にはほとんど話が振られない。
制度としては珍しいことではありません。しかし本人にとっては、「会社はもう自分に期待していないのではないか」「これまで積み重ねてきた経験は必要とされていないのではないか」と感じるきっかけになることがあります。
一方で、会社側にも事情があります。
・限られたポストの中で人員配置を考え、若手育成にも力を入れなければならない。
・管理職も日々の業務に追われ、一人ひとりとじっくり向き合う時間を十分に確保できない。
つまり、「会社が悪い」「本人が悪い」という話ではなく、それぞれに固有の事情があることで、少しずつすれ違いが生まれているのです。
プレシニア社員の変化は、組織全体にも影響する
プレシニア社員の意欲低下は、本人だけの問題ではありません。若手社員は、年上の先輩たちの働く姿をよく見ています。以前は第一線で活躍していた人が、今では必要最低限の仕事だけをこなしている。そんな姿を見れば、
「長く働くと、こうなってしまうのだろうか」
「頑張っても、最後は活躍の場がなくなってしまうのだろうか」
そんな不安を抱く人がいても不思議ではありません。
反対に、年齢を重ねても新しい役割に挑戦し、後輩から頼られているプレシニア社員がいる職場では、「この会社なら長く成長できそうだ」という安心感が生まれます。プレシニア社員の在り方は、その世代だけでなく、組織全体の活力にも影響しているのです。
「変われない」のではなく、「力を発揮できる場」が見えなくなっている
では、プレシニア社員は本当に変わらないのでしょうか。「Kakedas」に蓄積された相談知見や、キャリアコンサルタントから寄せられる声から見えてくるのは、少し違う姿です。
同じ調査では、「今後会社で果たしたい役割」として、管理職の多くが「経験やスキルを活かした的確な業務遂行・改善指揮」を挙げています。
つまり、多くのプレシニア社員は「もう頑張りたくない」のではありません。「自分に何を期待されているのか分からない」「これまでの経験をどう活かせばいいのか見えない」と感じている人が少なくないのです。
だからこそ、再活性化の第一歩は、「変われ」と求めることではなく、変化のサインに気づき、その背景を理解しようとすることです。まずは、チームのプレシニア社員を思い浮かべてみてください。最近、「発言が減った」「改善提案をしなくなった」「後輩との関わり方が変わった」そんな小さな変化はありませんか。成果や評価だけでは見えない"変化"に目を向けることが、再活性化への第一歩になります。
次回は、この6STEPのSTEP2「理解する」として、プレシニア社員が抱える役割の喪失感や、年下上司との関係、処遇への不安など、上司や人事には見えにくい「本音」に迫ります。











