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採用して終わりにしない!外国人材が定着する職場づくり【「人手不足時代の新・採用戦略」──外国人材活用のリアルな手引き Vol.5】

2026.10.19
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採用はゴールではなく、スタートです。迎え入れた人材に長く活躍してもらえるかどうかは、入社後の職場づくりにかかっています。とはいえ、外国人材の定着に、外国人だけに効く特別な定石があるわけではありません。「ここで長く働きたい」と思える職場の条件は、国籍を問わず共通しているからです。仕事の進め方が分かり、周りに頼れる人がいて、暮らしに安心があり、将来を描ける——。本稿では、どんなときに離職が起きやすいのかを確認したうえで、外国人材が長く活躍している企業に共通する考え方と、そうした職場をつくるための仕組みづくりを解説します。

【過去のコラムはこちら!第1回/第2回/第3回/第4回】

外国人材が転職・離職に至る主な理由とは

「外国人はすぐ辞めてしまうのでは」という不安をよく耳にします。しかし、データを見ると印象は変わります。出入国在留管理庁の資料によると、在留資格「特定技能1号」で働く外国人のうち、制度開始から約3年半の間に自己都合で離職した人は16.1%でした。集計方法が異なるため単純な比較はできませんが、日本の新規大卒就職者の3年以内の離職率が33.8%であることを踏まえれば、外国人材が特別に辞めやすいとはいえません。離職は日本人と同じように、職場の環境や条件によって起こる現象なのです。

【図1】外国人材と日本人新卒者の離職率(参考比較)

では、外国人材はどんなときに離職を考えるのでしょうか。主な理由は、次の4つに整理できます。

① 働き始めてから見えるギャップ
任される仕事や職場のルールが、入社前に思い描いていたものと少しずつ違う。何をどこまでやればいいのか分からないまま働き続けると、小さなズレがやがて不満として積み重なります。

② 人間関係のつまずき・孤立感
仕事をきちんと教えてもらえない、周囲となじめない、悩みを気軽に話せる相手がいない。言葉の壁があるほど、小さな困りごとを一人で抱え込みやすくなります。

③ 暮らしの中の不安
病気やけが、家族の事情など、慣れない国で起きる困りごと。在留資格や本人の状況によって程度は異なりますが、「誰に相談すればいいのか分からない」こと自体が不安の種になります。

④ 将来が見えない不安
この会社で働き続けたら、3年後・5年後にどうなれるのか。昇給や成長の道筋が見えないと、より将来を描ける職場を探し始めます。日本人と同じように、外国人材にも転職という選択肢があります。だからこそ、「選ばれ続ける」視点が欠かせません。

どれも日本人の離職理由と本質は同じで、外国人材だから起きるものではありません。そして多くは、職場の側で先回りして手当てできるものです。逆にいえば、ここを押さえておけば、定着は大きく変わります。

定着している企業に共通する考え方

外国人材が長く働いている企業は、こうした離職の理由をあらかじめ手当てしています。つまり、「仕事」「人」「暮らし」「将来」という4つの安心を、意識して用意しているのです。このうち将来の安心は3章で取り上げ、ここでは残る3つを見ていきます。

【図2】離職の理由と、定着している企業が用意している「安心」(筆者作成)

① 仕事の安心:ルールと「聞ける相手」を最初に示す
働き始めてからのギャップの多くは、「何をどこまでやればいいのか」「困ったら誰に聞けばいいのか」が分からないことから生まれます。業務マニュアルや、始業・休憩・報告の仕方といった職場のルール、現場でよく使う用語の一覧を入社前に用意しておくだけで、本人の戸惑いは大きく減ります。写真や図を使った数枚の資料でも十分です。あわせて、困ったときに最初に声をかける相手を決めて伝えておきましょう。さらに、内定から入社までの期間に連絡を取り合っておけば、本人が抱いているイメージと実際の職場とのズレを、働き始める前に小さくできます。

② 人の安心:全社で迎え、互いを知る
人間関係のつまずきを防ぐうえで大切なのは、受け入れを配属先の現場だけの話にしないことです。外国人材を迎える理由と会社としての方針を、日本人社員を含めた全員に事前に伝えておく。それだけで現場の戸惑いは和らぎ、迎える側の姿勢が整います。そのうえで、相互理解は一方通行にしないこと。日本人社員が相手の国の文化や習慣を知ると同時に、本人にも日本の職場の習慣を知ってもらう。お互いを知ろうとする姿勢があれば、宗教や食事などへの必要な配慮も自然に行え、お客様扱いではない「仲間」としての関係が生まれます。

③ 暮らしの安心:相談窓口と、社会保険という備え
暮らしの中の困りごとに備えるには、まず「困ったらここに相談すればいい」という窓口を社内に一つ決めておくことです。そのうえで知っておきたいのが、会社がわざわざ特別な制度を用意しなくても、すでに備えがあるということです。健康保険、厚生年金、雇用保険といった社会保険は、国籍を問わず、日本人社員と同じように加入するもの。育児休業をはじめ、日本の社会保険は海外と比べても充実しており、それ自体が長く安心して働ける土台になっています。大企業並みの福利厚生を持たない中小企業でも、この備えは同じように整っています。相談窓口が必要に応じてこうした制度や手続きにつないでくれる——それだけで、暮らしの不安の多くは和らぎます。

1. 現場と人事が連携すべきポイント
定着は、人事だけでも、現場だけでも実現しません。日々一緒に働く現場は小さな変化に気づく役、人事は面談などを通じて本音を聞き、必要な手を打つ役。両者をつなぐために、次の3つを押さえておきましょう。

定期面談は「最初は細かく」
入社直後は、不安が最も大きい時期です。たとえば入社1か月・3か月・半年と最初は間隔を短く設定し、慣れてきたら徐々に広げていきます。業務のことだけでなく、生活で困っていることがないかも聞くのがポイントです。

フィードバックは言葉にして伝える
良かった点も、直してほしい点も、「言わなくても分かるだろう」ではなく具体的に言葉にして伝えます。できていることを認める一言が、本人の自信と定着につながります。

トラブル時の共有ルートを決めておく
急な体調不良や無断欠勤、家族の急病による帰国の相談など、何か起きたときに「誰が・誰に・何を」伝えるかを決めておきます。本人と連絡がつかない場合に備え、緊急連絡先を把握しておくことも大切です。また、遅刻が増える、口数が減るといった「いつもと違う」サインに現場が気づいたら、早めに人事と共有する流れもつくっておきましょう。人間関係のトラブルが起きたときは、どちらか一方の話だけで判断せず、双方の言い分を聞いたうえで対応することが、信頼を守るポイントです。

【図3】現場と人事の連携ルール(例)(筆者作成)

立派な仕組みである必要はありません。A4一枚にまとめたルールでも、あるとないとでは大きな違いがあります。

長期活躍につながる仕組みづくり

4つ目の安心が、将来の安心です。「数年で帰国する人」と決めつけず、日本で長く働き、キャリアを築きたいと考える人材として育てる前提に立つこと。給与などの条件だけで競い合うには限界があり、「ここで将来が描ける」と思えることが、選ばれ続ける理由になります。そのために整えておきたいのが、次の3つです。

第一に、キャリアパスを示すことです。3年後にはチームのリーダー、5年後には後輩の指導役——といった具体的な将来像を共有します。先が見えることは、本人にとって何よりの定着理由になります。

第二に、スキル育成を後押しすることです。日本語の学習や資格の取得などを、費用の補助や学習時間への配慮といった、できる範囲から支援します。成長の実感は、仕事への意欲に直結します。

第三に、評価の基準を見える化することです。日本人社員と同じ基準で評価し、何ができれば昇給・昇格するのかを分かる形で示します。基準が明確なら、本人は目標に向かって努力でき、周囲も納得できます。なお、外国人材にとって在留資格の更新や変更の見通しは、キャリアの一部でもあります。将来の話をする際は、在留資格の面も含めて一緒に考えておくと、本人の安心につながります。

外国人材が定着する職場は、日本人社員にとっても働きやすい職場です。特別な仕組みを一から作るのではなく、社会保険のようにすでにある備えを活かし、職場のルールや迎え方を少しずつ整えていくことが、3年・5年と続く活躍への近道になります。次回は、これから外国人採用を始める企業に向けて、導入前に確認しておきたい実務のポイントをチェックリスト形式で整理します。