掲載希望の方 オフィスのミカタとは
従業員の働きがい向上に務める皆様のための完全無料で使える
総務・人事・経理・管理部/バックオフィス業界専門メディア「オフィスのミカタ」

仕事の生産性に関わる「健康経営」の考え方

2019.04.22

 経営の新しい形として、「健康経営」の考え方が浸透しつつある。経済産業省では、2016年度からハンドブックをホームページ上で配布しており、政府としても健康経営を推進したいという狙いがあると言えるだろう。

 加えて言えば、健康経営は健康診断などの基本的な取り組みだけでは不十分だ。では、どういった考えや体制のもと、健康経営を導入していくべきなのだろうか。ここでは、健康経営の考え方や効果などにふれたうえで具体的な事例などについても見ていこう。

健康経営のもたらす効果とは

 健康経営の目的は、簡潔に言えば、従業員に対する健康管理を個人任せではなく経営の主軸として捉えることによって、組織全体のパフォーマンスを向上させることだ。

健康経営の効果は、
・生産性の向上
・モチベーションの向上
・業績アップに伴う、企業全体への更なる還元
・ミスが減少することから全体的なコスト削減が可能
などといった好循環のサイクルを作り出すことが可能だ。

 例えば、従業員の健康状態の維持や改善が企業全体の取り組みとして行われている場合、集中力の向上や労働生産性の向上などにも繋がる。また、健康を維持するための休暇なども健康経営の1つの考えであり、実際に健康経営によって企業の業績がアップしたという事例が多数ある。

 健康経営とは、1992年に出版された「The Healthy Company」の著者である経営学及び心理学の専門家であるロバート・ H ・ローゼンが提唱したものだ。ちなみに、この著書の中では、健康経営を実践した企業が紹介されており、企業として健康に力を入れることが、どういった効果を生むのかを詳しく述べている。

健康経営は企業全体に重要な要素

 健康経営は、従業員だけではなく、企業全体として取り組む必要性がある。企業全体として、取り組むことにより、従業員のストレスを軽減し、業務の偏りの解消なども行うことが可能だ。

 例えば、時間外労働が慢性化している環境下では、従業員のモチベーションは低くなり、生産性は著しく低下する。また、心身の不調によって重大なミスにつながる可能性もあるが、健康経営を取り入れることによって大きく改善する可能性があると言える。

 また、社会的にも労働力の偏りと生産性の低下が問題となっている。仮に利益などが十分なものだと見えたとしてもその数字を支えているのは、従業員であり、利益主義では従業員の状態を顧みることすら難しい環境があると言えるだろう。

 その場合は健康経営を取り入れることから始めてみよう。

 健康経営を行うこと自体は、そう難しくはない。働き方改革などによって企業全体のあり方や制度を見直す必要があることから、以下の手順に沿って導入することを検討してみよう。

1.健康経営を始めることを従業員等に十分に告知する
2.新しい制度や担当部署を作り、組織を十分なものにする。
3.現状を確認する。
 例:健康状態や従業員のストレスチェックなど。労働時間の管理も行う。
4.現状の問題点を改善するための計画を作成し、実行する。

 3と4を繰り返し、従業員が抱いている課題と、経営陣が抱いている課題の相互理解を行いつつ、1つずつ課題を解決していくことが重要だ。

健康経営の取り組みと事例

 健康経営に対する取り組みは、企業によって様々なバリエーションがある。どれも健康経営に必要な要素の一部だ。

例えば、
・残業時間の短縮
・イベントの開催
・研修の定期的な実施
・睡眠時間の管理
・新しい部署や組織の設立
などは実際に行われており、業績の向上だけでなく社員のコミュニケーションの改善などの効果も見込めるだろう。

 では、健康経営を取り入れている企業の具体例を見ていこう。

■ 花王株式会社
日本の大手化学メーカーである花王も、2008年から健康経営に取り組んでいる。

 例えば、健康増進や生活習慣病などに関しては、セミナーや体力測定、健診結果からの再検査の徹底などを行っている。また、ストレス等に関しても社内カウンセラーへの相談やメンタルヘルス研修などを実施している。

 また、社員の健康状態を比較分析するためのデータベースを作成し、システムとして導入しているだけでなく、専門職である産業看護職に対する研修なども定期的に行っている。

■ 株式会社ローソン
言わずと知れた日本の3大コンビニチェーンの1つ。ローソンでは、男性社員の育児休暇や健康管理に関する自発的な事柄に対して、ポイント与える”ローソンヘルスケアポイント”などの施策を実施している。

 また、自分の健康診断の結果に対して従業員が課題を設定するなどの取り組みもあり、健康診断を受診しないことに対するペナルティなども設けており、企業として健康経営を意識した制度を作っていることが明らかだ。

まとめ

 健康経営は、従業員だけが意識して取り組むだけではなく、企業全体として取り組む必要があるものだ。その上で、勤務体系や制度などの抜本的な改革が必要となることも多い。

 しかし、改革に伴う労力に対して、健康経営を行うメリットが非常に大きい。そのため、健康経営は、従業員のやりがいや満足度を上げるためにも有効な手段だと言えるだろう。

 その上で、企業体としてどのような取り組みが可能であり、従業員がどのような課題を抱いているのかをよく把握する必要がある。健康経営を行ううえでも企業と従業員の間で相互理解が必要な点を忘れないで欲しい。