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労働条件通知書の概要や雇用契約書との違いは?記載事項や運用方法も解説

2019.10.08

従業員を雇用する際に、必ず交付しなければならないのが労働条件通知書です。交付時期や記載事項などには様々な決まりがあるので、法令にもとづいて適切に運用するために、基本的な仕組みを理解しつつ注意点も把握しておくことが大切です。本記事では労働条件通知書の概要や記載しなければならない事項、運用する上での注意点などを詳しく解説します。

労働条件通知書の基礎知識

まずは、労働条件通知書の概要や労働契約書・雇用契約書、就業規則との違いなど基本的な内容について紹介します。

労働条件通知書の概要

労働条件通知書というのは、その名の通り労働条件を記載した文書のことです。労働者と労働契約を締結する際に交付されるもので、法令により労働条件通知書に記載しなければならない事項が幅広く定められています。その中には、契約期間や賃金、就業場所、業務内容、就業時間など様々な記載事項が含まれています。労働者にとって給与や残業代、有給制度などは生活に大きく関わるものなので、労働条件が原因であとから労使間でトラブルになることもあるでしょう。しかし、労働条件通知書によって労働条件を明確にしておけば、未然にトラブルを防ぐこともできるので、会社にとっても労働者にとっても、労働条件通知書はなくてはならない重要なものなのです。

労働条件通知書は、労働契約を結ぶ全ての労働者に交付しなければならないと決められています。正社員かどうかに限らず、有期契約社員やパートタイマーなども対象になっているので注意しましょう。また、パートタイマーなどの短時間労働者に対しては、個別に明示しなければならない事項もあります。雇用形態に合わせて、定められた事項を加えた労働条件通知書を作成してください。従来は紙面での交付しか認められていませんでしたが、2019年4月からはFAXや電子メールでの交付も可能になりました。

その他の契約書・就業規則との違い

雇用契約書や労働契約書、就業規則など労働条件通知書と似たものがあります。しかし、それぞれ役割や法的根拠は異なるので、しっかり違いを理解しておかなければなりません。まず雇用契約書は、民法の規定にもとづいた契約書で、報酬や労働について取り決められた内容を書面にしたものです。労働条件通知書は企業から一方的に通知されるものですが、雇用契約書は会社と労働者の双方が合意を得るための文書になります。また雇用契約書は必ずしも書面にする義務はありません。

労働契約書は労働契約法にもとづいて作成される、労使間で契約をした内容を記した契約書です。こちらも雇用契約書と同様、会社と労働者双方で取り決めるもので、必ずしも書面にする必要はありません。労働条件通知書とは適用される法律が違うのでしっかり理解しておきましょう。就業規則というのは、従業員全員が守らなければならないルール、待遇などについての決まりです。労働条件通知書は個別の労働者に適用されるものなので、就業規則とは適用範囲が異なります。

労働条件通知書に記載すべき事項とは

労働条件通知書には、必ず記載しなければならない事項がいくつかあります。この事項を記入せず労働条件通知書を作成してしまうと、労働者との間でトラブルになったり、ペナルティを受けてしまったりすることもあるので注意が必要です。ここからは、記載すべき事項について詳しく紹介していくので、記入漏れがないようにしっかりチェックしてください。

必ず明示すべき事項

労働条件通知書は、労働基準法施行規則第5条によって明示しなければならない項目が定められています。その中でも特に重要になるのが、「絶対的明示事項」です。ここで定められている項目は、全ての労働者に対して書面で明示しなければなりません。そのため、労働条件通知書を作る際は、どういったことが絶対的明示事項に指定されているのかをしっかり把握しておきましょう。基本的な事項としては、就業場所、労働契約の期間、従事する業務内容、といった項目があります。

労働環境に関する事項も、絶対的明示事項に指定されています。始業時刻・終業時刻、休憩時間、所定外労働の有無、休日、休暇といった項目です。所定外労働の有無は残業があるかどうかを記載する項目で、会社で定めた労働時間を超えて働く可能性がある場合は「あり」と記載しましょう。終業時刻・終業時刻が決まっている場合はそのまま記載すればよいですが、シフト制などで具体的な時間が決まっていない場合はルールを記載すれば問題ありません。賃金の決定や支払い、計算、締め切りや支払い時期などの賃金に関する事項もあります。この項目では月給や日給、時給などの計算方法や支払い方法なども記載しなければなりません。

必ずしも明示する必要がない事項

労働条件通知書には、必ずしも明示する必要がない事項もあります。「相対的明示事項」と言われるもので、その制度がない場合には明示する必要はありません。しかし、制度がある場合は伝える必要があるので注意しましょう。有期契約の場合は、契約更新についての決まりを明示する必要があります。「自動更新」「更新する場合がある」「更新はしない」など明確な決まりを記載しましょう。パートやアルバイトなど短時間労働者の場合は、昇給や退職金、賞与の有無などについて明示しなければなりません。また、相談窓口があるかないかも相対的明示事項になるので記載しておきましょう。

派遣社員の場合は、派遣労働者本人の賃金、所属する会社の派遣料金の平均額などを明示する必要があります。他にも退職手当制度があるかどうか、臨時の賃金・賞与、就業訓練など様々な相対的明示事項があるので必ずチェックしておきましょう。労働条件通知書に記載しなければならない事項、電子メールやFAXでもよい事項があるため個別に確認が必要です。

労働条件通知書の運用上の注意点

労働条件通知書を運用する時、まず注意したいのが労働条件通知書の交付についてです。労働条件通知書を労働者に交付する時期は労働基準法で決められています。「労働契約の締結に際し」と定められているので、本来は内定時点で交付すべきものです。しかし、内定から入社するまでに期間が長いケースなど、内定時点で労働条件通知書を交付するのが難しいこともあるでしょう。その時は、通知書で厳密に条件を決めておくと、後から微調整が起こる可能性もあります。実務上は、内定者に即交付が難しいことを伝えておくとよいです。その上で、内定時ではなく入社日までに交付する、または仮交付しておくといった方法があります。このように、原則として内定時に交付する必要がある労働条件通知書ですが、いくつか対処法があるので知っておくとよいです。

労働条件通知書の記載事項は、全労働者に明示しなければなりません。もし労働者に明示漏れがあると、行政処分や罰金を支払わなければならない場合があるので注意してください。労働条件を明示しなかった時は、労働法第120条にて30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。労働条件通知書を労働者に渡さなかった、口頭でしか伝えていなかったなど、労働条件の明示義務を怠った場合はペナルティを受けます。ペナルティを受けないためにも、労働条件通知書を作成・運用する際はルールをしっかり把握しておくことが大切です。

労働条件通知書は記載事項に注意しながら適切に運用しよう

労働条件通知書は労働条件を記載した文書で、給与や残業代、就業時間など労働者にとって生活に大きく関わる記載項目が多数あります。そのため、しっかり明示しておくことで労働者の安心にもつながり、条件面で発生するトラブルを防ぐこともできます。明示しなければならない事項に漏れがあると、トラブルのもとになり罰金を受けるケースもあるので、必ずルールを守って運用するようにしましょう。