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会社を守るために! BCP対策の重要性と対策方法について解説

2020.04.02

 会社の人事や総務など管理部門の人は、BCP対策という言葉を聞いたことがあるだろうか。

 BCP対策とは、緊急時に会社をさまざまなリスクから守るための重要なものだ。この記事では、BCP対策の基本的な知識やメリット、実際の対策方法を解説していく。具体的な策定の手順なども解説しているため、すぐにでも会社内でBCP対策を始めることもできる。

BCP対策とは

 BCPとは、Business Continuity Plan(事業継続計画)の頭文字を取った言葉で、どのようなトラブルが発生した場合でも企業活動が継続できる計画である。テロや自然災害、システム障害などの緊急事態が起こった際、経営面を考えると事業を中断し続けることはできないため、重要な業務だけでも速やかに復旧できる用意をしておかなければならない。緊急時でも利用できる限られた資源を活用し、特に優先すべき事業のみを少しでも早く復旧させ継続するためにもBCP対策は必要だ。

 また、BCPと似た言葉にBCM(Business continuity Management)がある。これは経営手段の1つで、BCPのための計画策定や準備、運用・訓練・見直しといった包括的な概念を指す。

BCP対策が注目される理由

BCP対策が注目される理由

 BCP対策が注目されるようになった背景の1つには、自然災害の発生により事業者が大きく影響を受けていることが挙げられる。

 日本では地震や台風などの自然災害により、多くの企業が多大な損失を被ってきた。事業が継続できずに経営破綻に陥ったケースも少なくない。具体的な被害としては、2018年に発生した「西日本豪雨」「台風19~21号」「北海道胆振東部地震」などの自然災害により中小企業の受けた被害総額は、5,000億円近くにのぼることが中小企業庁の調査でわかった。

 また、さまざまな研究機関が将来的に東日本大震災と同等以上の地震(首都直下地震や南海トラフ地震など)が起こると想定している。このような災害に見舞われた際、事業を継続させるためにもBCP対策は重要だ。

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BCP対策のメリット

 BCP対策には大きく分けて3つのメリットがある。具体的にどのようなものがあるのか、以下の段落で解説する。

企業の存続

 BCP対策の大きなメリットの1つは、緊急事態の際に企業の倒産や事業縮小といったリスクを抑えられることだ。規模の小さな中小企業であれば、多くの社員を抱える大企業よりも被害は少ないと考える経営者もいるが、中小企業は資本の少なさゆえに緊急時は大きな影響を受ける恐れがある。そのため、大企業と同様に中小企業もBCP対策を十分に行っておくことが重要だ。

 事前に対策を打っておけば、復旧までの時間を短縮し、経営面での損失を少しでも抑えて企業の存続を守ることができる。

経営戦略に有効

 緊急時に優先的に復旧させる事業を考えるBCP対策は経営戦略にも有効に働く。BCP対策を検討する際、すぐにでも復旧すべき事業や業務の優先順位を考えていく段階で、自社の根幹にある事業や業務が可視化される。事業ごとの売り上げ比や発生するコストに対するリターンの大きさなどを定性的・定量的に細かく分析していくことで、自社の強みや伸びてきた事業などを明らかにすることが可能だ。

 BCP対策について考える過程で、自社の強みや弱みを明らかにすることは、今後の経営戦略の見直しや立案などに有効的に働く。

企業の信頼度を上げる

 緊急時の備えや対策をしっかりしている企業は、取引先からの信頼度やイメージアップにつながっていく。災害やテロなどの緊急事態による影響は自社だけのものではない。取引先にも影響が出る可能性は十分にある。そのため、発注先や仕入先が緊急時でも安定して経営できるかどうかというポイントは、ビジネスにおいて重要だ。

 BCPへの注目が集まったことにより、BCP対策を行っていることが、ビジネスパートナーとして契約を結ぶ条件となっているケースもある。取引先からの信頼を得て、緊急時でも安定した経営を続けるためにもBCP対策は必要だ。

BCP対策の手順

 ここからはBCP対策の手順を紹介する。

リスクの洗い出し

リスクの洗い出し

 手順の1つ目は企業にとってのリスクの洗い出しだ。緊急時には、自然災害や事故、オペレーション、情報セキュリティ、労働安全衛生などさまざまなリスクがある。さらに、法務や不正・内部統制リスクのほか、政治・経済、人事・労務といったリスクも発生する。リスクにはいくつも種類があるため、洗い出すときは漏れなく考えられることを書き出すことが重要だ。

 また、洗い出したリスクを限られた資源とコストで全て対処するのは難しいため、事業を継続させるために対処すべきリスクがどれかを検討する必要がある。リスクが発生する頻度や、企業に与える損失の大きさを考えることで、対処すべきリスクに優先順位が付けられる。

優先事業と目標水準の設定

 大規模な津波や地震が発生した緊急時は、全ての事業・業務を平常時と同じように継続させ会社を経営することは困難だ。限られた資源や人員を効果的に活用するために、優先事業と最低限守るべき水準を事前に決めておく必要がある。

 この2つを決定する際は、経営者の主観的な判断ではなく、さまざまな観点で判断することが大切だ。優先事業に関しては、会社が受ける影響の度合い(売上や利益、顧客数など)に応じて多角的に判断する。守るべき水準というのは、経営上許容できる損失のラインを超えないように、復旧に必要な日数を決めることだ。

実際に策定

 最後は実際に策定を行う。

 具体的には、これまでに決めた重要事業をどのようにして復旧・継続させるかという戦略を定める。戦略を定める際は、事業復旧のための事前対策と、リソースが確保できないときの代替物の確保方法の2つを軸に決めることが大切だ。

 戦略の具体例としては、被害の少ないところで事業を進められるよう拠点を複数持つ、事業や業務のアウトソーシングなどが挙げられる。費用対効果を考えたうえで戦略を練らなければ効果を発揮しない恐れがあるので注意が必要だ。

 また、戦略を練っても実際に発動するタイミングを誤っては、リスクを招く恐れがある。そのため、BCPの発動基準や発動後の社内体制をどうするか、などについても具体的に決めることが重要だ。

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BCP対策のポイント

 以下の段落では、実際にBCP対策を行うためのポイントを3つ解説する。

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中核事業に絞る

 BCP対策の対象は、会社の収益を多く占める、シェア率が高いといった条件に当てはまる中核事業に絞ることがポイントだ。策定範囲を絞ることで、復旧の効率を上げ、復旧後の収益を安定させることにつながる。範囲が広すぎると資源や人員を拡散させて配置する必要があり、復旧までに時間がかかる恐れもあるため注意しなければならない。

行動プランは具体的に

行動プランは具体的に

 緊急時に発動するBCPの内容が抽象的すぎた場合、社員は現場でどう動けばいいのかわからなくなってしまう。ケース別の行動指針や緊急時のチーム編成、チームリーダー、復旧フェーズに応じた動き方など具体的に細かく決めておくことがポイントだ。

社員の訓練をしっかりと

 BCPを策定し説明しただけでは、社員は緊急時に動けない恐れがある。場合によっては、BCP発動後も混乱が抑えられず、うまく機能しないケースも少なくない。全社員が理解できるためのBCPに関する教育と、事前に決めた内容をスムーズに実行できるよう訓練することがポイントだ。

 また、BCP対策の内容を文書化して、社内のサーバーなどへ保存し誰でもアクセスできる状態にしておくといった方法で、社員が閲覧しやすい環境づくりも必要になる。

これから重要になるBCP対策!

 BCP対策の重要性やその具体的な方法などは理解できただろうか。災害の多い日本の企業では、緊急時の損失を最小限に抑えるためにもBCP対策は不可欠なものだ。

 特に、中小企業は倒産のリスクもあるため、最悪のケースも想定しながらBCP対策を練らなければならない。多様なリスクから会社を守り、安定して経営していくためにも、しっかりとしたBCP対策を行う必要がある。

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