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みなし残業の導入方法とメリット・デメリット

2020.06.09

 みなし残業を導入する場合には、コンプライアンス違反にならないように注意しなければならない。しかし、具体的どのように導入すれば違反せずにすむのかがわからない人は多くいる。そこでみなし残業の導入の仕方を詳しく解説していく。

 さらに、みなし残業を導入することによって発生するメリットとデメリットについても解説するので参考にしてほしい。

みなし残業とは

 みなし残業とは、給料の中に最初から一定額の残業代を含ませる制度のことである。みなし残業とは通称であり、法律上ではみなし労働時間制、または固定残業代制と呼ばれる。

 例えば月20時間の残業をみなし残業にする場合には、その旨が雇用契約書に記載されている。月20時間までは、その分の残業代が給料に加算されているため、残業代がつくことがないのが特徴だ。その月の残業がどんなに少なくても、みなし残業分の残業代が減ることはない。月20時間以上の残業を行った場合には、超過分の残業代をプラスして支払ってもらうことが可能だ。

みなし残業の種類

 みなし残業は、労働基準法の第38条に基づいて3つの種類がある。専門業務型裁量労働制・企画業務型裁量労働制・事業場外労働の3つだ。それぞれの種類について詳しく説明していく。

専門業務型裁量労働制

 みなし残業の中でも、専門業務型裁量労働制は高度な専門性や裁量性を持つ職業を想定して定められているのが特徴だ。一般的に労働時間は会社や経営陣が決定するものだが、専門業務型裁量労働制は会社ではなく労働者自身が労働時間を決定した方が効率的だとされる職業において適用される。

 対象となる職種は、厚生労働大臣から指定されている。指定される職種は、弁護士・公認会計士・テレビやラジオといった放送番組などのプロデューサー・記者や編集者・コピーライター・研究職や情報処理システム関連職・デザイナー・インテリアコーディネーター・中小企業診断士・建築士などの19種類だ。

 これらの職種は、仕事の内容から見て労働者自身が労働時間の配分などを行った方が良いとされている。

企画業務型裁量労働制

 企画業務型裁量労働制は、労働者自身が労働時間を管理を行う必要性がある場合に適用される。認められる主な理由としては専門業務型裁量労働制とほぼ同じだ。専門業務型裁量労働制との違いは、対象業務が異なるという点である。企画業務型裁量労働制の対象業務は、事業運営のための企画や立案、調査・分析などがある。対象業務については労働基準法で指針が述べられている。

 あくまでも、労働時間の配分などを労働者自身にゆだねることで、成果を上げることが期待できたり業務の効率が向上したりする場合に適用が認められることになる。

事業場外労働

 事業場外労働は、労働者が事業場以外での業務につく場合に適用されるのが特徴だ。社外での業務が多い営業や旅行会社の添乗員など、会社が労働者の労働時間を正確に把握することが困難な場合に利用されることが多い。通常の業務形態では就業時間の始まりと終わりが設定されているが、これに当てはめることが難しい場合にみなし労働とすることで、労働者が変則的な労働時間であっても対応することが可能になる。会社から労働者に指示を出したり労働時間を十分に管理することができない場合でも、事業場外労働を適用すると一定の時間労働したものとみなして管理することができるという利点をもっている。

みなし残業の適用条件

 みなし残業の種類は紹介した専門業務型裁量労働制・企画業務型裁量労働制・事業場外労働の3つだが、これらに該当しない場合でもみなし残業を導入することができるケースもある。

 みなし残業を適用するための条件は、大きく分けて2つあり、1つ目は労働者の同意を得ること。ただ同意を得るだけではなく、みなし残業を導入していることを書面によって周知した上で同意を得なければならない。

 次に、みなし残業の固定残業代を明記する。給料にいくらの残業代が含まれ、何時間のみなし残業代にあたるのかという点を明確にすることが条件だ。

みなし残業を導入するメリット・デメリット

 みなし残業を導入する際には、いくつかのメリットとデメリットが存在する。みなし残業のメリットとデメリットについて、それぞれ詳しく紹介する。

メリット

 みなし残業を導入するメリットは、企業と労働者の立場によっても異なる。企業がみなし残業を導入すると、給料に残業代がすでに含まれているので給料の管理や残業代の計算が楽になる点がメリットである。通常は、毎月労働者に対してそれぞれ何時間残業をして残業代がどれくらいかかったのかということを把握して、残業代を支払うことになる。残業代の計算は時間がかかるため、みなし残業によって簡単になれば、その分業務の効率を向上させることも期待できる。

 これに対して、労働者にとってのメリットは残業時間に左右されて給料が減ることがないという点である。残業時間が少ないと給料が減ってしまうことになるが、みなし残業が導入されていれば一定の給料以下になることがない。定められた時間を超過した分の残業についても、残業代が支払われるので安心である。

デメリット

 みなし残業を導入する企業側のデメリットとして大きいのが、残業時間が少なかったとしても毎月一定額の残業代を支払わなくてはいけない。月々の残業時間は就業規則で定められているため、それを下回る残業時間の場合には余分に残業代を支払うことになりロスとなってしまう。また逆に残業時間が多すぎた場合にも、規定の残業時間を超えた分の残業代をプラスで支払わなければならなくなるため負担が増えることがある。

 また裁判や労働審判でみなし残業ではない、不当であるとされることがあるため、みなし残業の運用が不適切にならないように注意しなくてはならない。

 労働者側のデメリットとしては、すでに給料に残業代が含まれているため、その分の残業をあてにした仕事量にされることがある。さらに残業が当たり前といった状況にもなりやすい。定められた残業時間内での残業であれば残業代がつくことはなく、残業時間が深夜になったとしても深夜手当はつかず、休日出勤で残業をこなしても、その分の手当もつくこともないのがデメリットだ。

残業代の請求の仕方

 企業側と労働者の両者にメリットの考えられるみなし残業だが、残業代が正当に支払われないなどのトラブルも少なくない。違法なみなし残業を行っている場合には、残業代の請求が可能である。残業代を請求する方法について詳しく紹介する。

残業代の請求手順

 残業代に対して未払い分がある場合には、次のような手順で請求することが可能だ。まずは、どのくらいの残業を実際に行ったのかを証明するための証拠を集める。

 具体的にはタイムカードや勤務時間表のコピーなどが証拠として有効である。次に証拠に基づいて、残業代がいくら不足しているのかを計算して把握しておく。給料や労働時間に関する書類として、雇用契約書や就業規則、賃金規則も事前に用意して、確認しておくことが必要だ。残業代の請求方法は次の段階で紹介する。

残業代の請求方法

 会社に対して残業代を請求するためには、会社側に内容証明郵便を送付するのがポイントだ。内容証明郵便は、通知内容を郵便局が証明してくれる郵便であり。これを利用して未払い賃金請求の時効を停止することが可能である。未払い賃金請求の時効は2年と労働基準法で定められているが、内容証明郵便で請求書を送付すれば半年間時効の進行を止めておける。これにより請求交渉の間に時効を迎えてしまうことを防ぎ、交渉段階に立つことが可能だ。内容証明を送っても交渉が進まない、または解決が困難な場合には、労働基準監督署に通報してトラブル解決を試みるのが一般的である。

 それ以外にも、労働審判や訴訟を起こし問題解決に当たるケースも見られる。

みなし残業を合法的に運用しよう

 みなし残業の運用方法は理解していただけただろうか。みなし残業には3つの種類があり、それぞれ適用される職種などが異なっている。みなし残業は、うまく活用すれば企業側にも労働者にもメリットのある制度である。

 ただし、適切にみなし残業が運用されなければ労働者の不満や反感は高まり、訴訟などのトラブルに発展することもあるので注意が必要だ。

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