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今月の人事・労務トレンドVol.9 コロナ禍で注目されるワーケーションとは

2020.09.09

 企業において在宅勤務やモバイルワークなどの働き方が推進されていることに伴い、「ワーケーション」という新たな働き方が注目されている。ワーケーションとはどのような働き方で、従業員や企業にとってどのような利点があるのだろうか。

 今回は、ワーケーションの概要とコロナ禍で注目される理由、ワーケーションを取り入れることによって従業員や企業にどのようなメリットと課題が発生するかを解説する。内容とポイントを押さえ、新たな働き方であるワーケーションの活用に役立ててほしい。

目次

●ワーケーションとは
●ワーケーションがコロナ禍で注目される理由
●ワーケーションのメリット
●ワーケーションの課題
●まとめ

ワーケーションとは

「ワーケーション」は「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」をかけ合わせた造語で、休暇を利用し旅先で仕事を行うことを指す。ここでは、ワーケーションの活用方法や期待される効果について解説する。

ワーケーションの活用方法
 ワーケーションは、リゾート地や地方など、通常のオフィスとは異なる場所で働きながら休暇取得を行う仕組みだ。対象や滞在期間、仕事と休暇のどちらをメインで行うかで次の3つの型に分けられる。

・休暇活用型(個人対象):旅行先で休暇の合間に数時間または数日働くこと
・テレワーク型(個人対象):リゾート地やサテライトオフィスなどで連日勤務すること
・オフサイト会議・研修型(法人・グループ対象):リゾート地などでミーティングや研修を実施すること

例として、個人を対象とした休暇活用型のワーケーションでは、平日は滞在先のサテライトオフィスやホテル内で個人業務やWeb会議などを行い、休日は家族や友人と観光地を巡るといったことが可能になる。

ワーケーションで地域活性化
 ワーケーションには、地域活性化の効果が期待されている。ワーケーションを通じて、地方や地方の人々に関わる「関係人口」や「交流人口」の増加、地域創生、地方移住の促進に繋げる狙いだ。

 2019年11月には「ワーケーション自治体協議会(WAJ)」が設立され、90以上の自治体が参加して情報交換などの連携を強化している。参加自治体の取り組みには、廃校になった校舎や古民家をオフィスに改装して首都圏の企業を誘致している例や、オフィスの屋上に海が見えるテラスを設けた例などがある。

ワーケーションがコロナ禍で注目される理由

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、ワーケーションが注目されている。注目される理由にはどのようなものがあるのだろうか。ここでは、コロナ禍でワーケーションが注目されている理由を解説する。

働く場所という概念の変化
 まず、新型コロナウイルスの影響で生活や環境が一変したことにより、場所に対する概念も変化したことが挙げられる。感染拡大を防止するために多くの企業でテレワークの導入が急速に進み、オフィスに出社せずとも業務を行うことができるようになった。それにより本来通勤時間にあてる時間の有効活用化、リラックスした環境下における作業効率の向上などによって「働く場所=オフィス」という概念が解消されつつあり、多様な働き方を受容する動きが見られている。

 また、密閉・密集・密接を避けやすいという観点から、都市部より地方で業務を行いたいという理由でワーケーションを利用する人もいる。

地域復興への期待
 コロナ禍で国内外の来客が激減した観光業、宿泊業では、ワーケーションの推進による観光ビジネスの活性化に期待を寄せている。旅行会社やホテル、旅館の一部では、国内旅行の新形態としてワーケーションプランが販売されている。

 地方のサテライトオフィスなどでテレワークを行うことにより、都市部から地方への人や仕事の流れを創出する「ふるさとテレワーク」、移住交流促進事業などの推進も相まって、地方創生の動きが一層高まっていると言えるだろう。

政府の後押し
 2020年5月、内閣府は新型コロナウイルス感染症におけるさまざまな活動・取り組みへの支援として、地方創生臨時交付金の活用事例集に「ワーケーション等支援事業」「サテライトオフィスの開設等支援事業」を挙げている。

 また、2020年4月には環境省が国立・国定公園、国民保養温泉地における誘客やワーケーションの推進を支援することを発表している。政府によるワーケーションの推進によって、ワーケーションが広く周知されることとなった。

参考:内閣府地方創生推進室「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の活用事例集」
参考:環境省「国立・国定公園、温泉地でのワーケーションの推進」

ワーケーションのメリット

 ワーケーションにはどのような利点があるのだろうか。ここでは、企業や従業員におけるワーケーションのメリットを紹介する。

柔軟な働き方の実現
 ワーケーションという場所に捉われない働き方によって、従業員が柔軟な働き方を実現できるというメリットがある。シェアオフィスを展開するデベロッパーや、ホテルなどを運営する企業などにとってはワーケーションを利用した事業拡大のチャンスになり、従業員にとっては有給休暇の確実な取得や都市部と地方の両方に拠点を持って仕事をする「二地域居住」の実現に繋がるだろう。

企業の魅力アップ
 ワーケーションは休暇を利用しながら業務を行うため、「自由度の高い働き方を選択できる」「有給休暇が取得しやすい」といった企業のイメージアップ効果がある。自社の魅力を向上させられれば、求める人材の確保や定着に繋がるだろう。また、従業員にとっても満足度やモチベーションの向上になり、企業全体の生産性の向上が期待できると言える。

リフレッシュ・リラクゼーション効果
 リゾート地などで業務を行うワーケーションには、リフレッシュ効果やリラクゼーション効果があると言われている。業務以外の時間で自然療法を行ったり、観光地めぐりや農作業、キャンプなどのアクティビティなど好きなことに没頭したりすることで、従業員のウエルネスが向上できるだろう。また、作業環境を変えることでクリエイティブな発想が生まれやすくなるなどの効果も期待されている。

ワーケーションの課題

 メリットがある一方で、ワーケーションには解決すべき課題があるのも実情だ。ここでは、企業や従業員にとっての課題点を紹介する。

労務管理体制の確立
 仕事と休暇を両立するワーケーションのデメリットとして、以下のように労務管理が難しいことが挙げられる。

・就業時間や休憩時間の対象、取り扱い
・時間外労働の取り扱い
・労働災害、通勤災害の対象範囲
・交通費、滞在費、通信費の取り扱い

労災保険法では、通勤の逸脱・中断については例外を除いて労災の対象外となる。また、交通費や滞在費などについては、従業員がどの程度負担するのかを明確にしておかないとトラブルに発展する可能性がある。そのため、これらの項目の扱いや、それぞれのケースでどのような対応を行うかを現行法とすり合わせながら検討、ガイドライン化し、制度を利用する従業員に十分に理解してもらう必要があるだろう。

ワークライフバランスやコミュニケーション支援
 ワーケーションでは、仕事と休暇の区別がつきにくい側面があり、本来休暇にあてるべき時間を仕事に費やし、ワークライフバランスが乱れる可能性がある。また、オフィスに比べコミュニケーションの頻度が低下しがちなことから、孤独感や孤立感を感じることもあるようだ。メンタルの不調は疾患に繋がるリスクもはらんでいるため、コミュニケーション課題をどのように解決していくかを検討することも重要だ。

滞在中の交通インフラの整備
 テレワークがメインとなるワーケーションでは、通信インフラの整備やセキュリティの確保が必須となる。それらが確立されていない地域では生産率が低下するだけでなく、必要な業務を行えない可能性がある。また、マイカーを持たないワーカーが地方でワーケーションを行う場合、滞在期間によっては移動手段をどう確保するかも課題となっている。移動手段の確保やサービスの充実、モビリティの向上が企業と地方それぞれに求められている。

まとめ

 ワーケーションには作業環境の整備や労務管理方法などの課題がある一方で、柔軟な働き方の実現や企業の魅力アップ、地方創生などのメリットもある。ニューノーマル時代の新しい働き方が模索されている昨今、オフィスはどうあるべきかが問われているのかもしれない。社内体制や個々の従業員のニーズを把握した上で、ワーケーションの適切な運用を検討してみてはいかがだろうか。

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