福利厚生とは?就労環境の整備のための福利厚生の種類と導入方法
コロナ禍により、政府がリモートワークの推進が唱えるようになって1年近くがたった。大手企業やIT企業を中心にリモートワーク導入率は急激に上昇し、現場業務が不可欠な職種以外では確実にスタンダードな勤務形態として定着し始めている。
一方、突然のリモートワーク導入で制度の整備が追いつかず導入後に問題が噴出するケースも多い。とりわけ見落としがちなのが福利厚生だ。出社がしにくい環境下で一部機能しない項目もあり、就業環境を見直しが必要になっている。本記事では、福利厚生の定義・種類から、新しい働き方に合った福利厚生の導入方法について解説していく。
福利厚生の定義と役割
福利厚生の見直しを行うにあたり、まずは福利厚生の定義と役割からおさらいしておこう。
給与以外の報酬・サービス
福利厚生とは、企業が従業員またはその家族に提供する給与以外の報酬・サービス全般を指す。
社会保険や労働保険といった法定福利厚生の他に、各企業にてさまざまな福利厚生を導入している。福利厚生の役割としては以下の2つが挙げられる。
働きやすい就業環境の整備
福利厚生が果たす役割の1つが働きやすい就業環境の整備だ。リモートワーク導入に関する福利厚生もこちらに入る。他にも育児や介護に関する福利厚生や、食堂やカフェの設置、研修や資格取得など、福利厚生は従業員が能力を発揮しやすい環境づくりに役立てられている。
働きやすい生活環境の整備
もう1つの福利厚生の役割は働きやすい生活環境の整備だ。代表的なものとしては、健康診断や社員寮、保養所、財政貯蓄などが挙げられる。
従業員だけでなく家族も対象とするケースも多く、長く働いてもらいやすい魅力的な職場づくりの視点で導入される福利厚生がこちらに該当する。上記の就業環境の整備よりも長期的な従業員への投資とも言えるだろう。
福利厚生の対象者
福利厚生の整備にあたって、注意をしておきたいのがその対象者だ。
福利厚生の対象となるのは全従業員で、2020年のパートタイム・有期雇用労働法の施行によって、正規雇用労働者とパートタイム・有期雇用労働者の間の不合理な待遇差が禁止されていることを頭に入れておこう。
福利厚生の導入の主なメリット
従業員の視点からすれば福利厚生はあるにこしたことはないが、企業にとってはどんなメリットがあるのだろうか。しっかり抑えた上で制度設計を進めて欲しい。
生産性の向上
1つ目のメリットは生産性の向上だ。研修・資格取得など、能力向上に直結する内容だけでなく、仕事に集中しやすい環境づくりや従業員のモチベーションアップを通じて間接的に生産性の向上につながることもある。
労働力人口の減少や長時間労働の是正によって、生産性の向上が不可欠となっている今、企業側の積極的な施策として福利厚生が活用されている。
離職率の低下
2つ目のメリットは離職率の低下だ。労働力人口の減少で採用コストがどんどん上昇していく中、いかに今いる従業員に長く活躍してもらえる環境をつくるかは大きな経営課題とも言える。
家族を対象とした福利厚生を含め、業績に影響しないような福利厚生が多いのはこのためだ。今いる従業員に満足してもらえれば、余計な採用・育成コストをかけることはない。
福利厚生の分類と経費計上の可否
バックオフィス業務に携わる方に知識として覚えておいて欲しいのが、以下の2つの分類と計上時の注意点だ。「福利厚生費」として計上できれば節税対策にもつながるため頭に入れおこう。
法定福利厚生
福利厚生の中でも、法律で義務付けられているものを「法定福利厚生」と呼ぶ。
いわゆる社会保険(健康保険・雇用保険・介護保険・労災保険・厚生年金保険)の5つに加え、子ども・子育て拠出金が該当する。
これらの費用は、法定福利費として処理ができる。
法定外福利厚生
「法定外福利厚生」は、上の項目以外の、法律とは関係なく企業が独自で設けた福利厚生を指す。
法定外福利厚生にかかった費用を福利厚生費として処理するには、以下の条件を満たしている必要がある。
・全従業員が対象であること
・社会通念上、常識と考えられる費用であること
・現物支給でないこと
すべてを福利厚生費として計上できるわけではないことを覚えておこう。
法定外福利厚生の分類と例
続いて、多くの企業で導入されている法定外福利厚生の例を具体的に見ていこう。
◆ 住宅
(例)社宅・社員寮、住宅ローン補助、住宅手当・家賃補助など
◆ 健康・医療
(例)健康診断、人間ドック、ジムやスポーツ関連の補助、カウンセラーの設置など
◆ 育児・介護
(例)法定以上の育児・介護休業、託児所・保育所の設置、ベビーシッター料補助など
◆ 休暇
(例)法定以上の有給休暇、リフレッシュ休暇、誕生日休暇、生理休暇など
◆ 慶弔・災害
(例)結婚祝い金、出産祝い金、弔慰金、災害見舞金、遺族年金など
◆ 職場環境
(例)テレワークの導入、食堂・カフェの設置、シエスタ制度、マッサージ利用など
◆ 財産形成
(例)持株制度、確定拠出年金制度、確定給付企業年金制度、財政貯蓄制度など
◆ 自己啓発
(例)資格取得支援、外部セミナー参加補助、e-ラーニング導入、書籍購入費補助など
◆ レクリエーション
(例)社員旅行、ランチや飲み会の費用補助、保養所利用の費用補助、部活・サークル費補助など
福利厚生のアウトソーシングの検討
福利厚生の充実を図る上で役立てたいのが福利厚生のアウトソーシングサービスだ。多様なメニューを最低限のコストで利用できるため、中小企業でも導入しやすいのが魅力となっている。
アウトソーシングサービスには、カフェテリアプランとパッケージサービスの大きく2つのプランが用意されている。2つの違いについて説明していこう。
カフェテリアプランの導入
カフェテリアプランは、企業がカスタマイズしたメニューの中から従業員が与えられた一定額の補助金(ポイント)の範囲内で自由に選択できる提供形態。
自社で独自に導入している制度も含めてプラン設計ができ、企業側でカスタマイズできる点がメリットだ。そのため、他社との差別化を図ることもできる。
パッケージサービスの導入
もう1つがパッケージサービスの導入だ。定額制で従業員1人当たりの利用料を払えば、多様なサービスをまとめて導入することができる。導入・運用の手間がかからないだけでなく、スケールメリットによって、各種サービスを格安で利用できる点も魅力だ。
福利厚生制度導入の注意点
最後に、福利厚生制度の導入・見直しを進める上での注意点を記しておく。
制度の目的の徹底周知
注意点の1つ目は、制度の目的の周知徹底だ。中には純粋に慰労のために導入するケースもあるだろうが、多くの場合は積極的に従業員に利用して欲しい理由があるはずだ。
例えば「外部の刺激を受けることで、業務につながる経験・知識を得て欲しい」、「従業員同士の交流を図ることで、チームワークを醸成したい」など、利用する従業員にも目的を理解してもらうことで、導入の効果を最大化しよう。
制度の定期的な見直し
注意点の2つ目は制度の定期的な見直しだ。一度導入すると引っ込めにくいという心情もあるだろうが、会社にとってはコストがかかっていることも忘れてはいけない。
そもそも利用されているのか、導入によってプラスの効果は発揮しているのかを見直し、制度の内容や運用の方法の変更を検討することも必要だ。
まとめ
テレワークの導入などによって就業環境が変化する中、企業にとっては福利厚生を見直すタイミングにもなっている。
福利厚生は人事戦略にも影響する一方でコストがかかるものでもあるため、大きな決断が必要になるだろう。制度の見直しにあたっては、福利厚生に関する正しい理解と従業員のニーズを踏まえた上で適切な意思決定を行って欲しい。
自社で運用まで完結させるのが難しい場合はアウトソーシングサービスを活用する手もある。興味を持たれた方は気軽に問い合わせてみよう。