ERP(統合業務システム)とは?その概念と導入のメリットを解説

企業内の業務やデータを統合することで業務の効率化を目指す「ERP」。担当者の中には、「ERPの詳細やメリットを知りたい」「ERPシステムの導入を検討したい」と考える方もいるのではないだろうか。
今回は、ERPの意味や仕組み、種類や導入の方法、ERPシステムを導入することで得られるメリットを紹介する。各ポイントをおさえ、自社の企業資源管理の参考にしてほしい。
目次
●ERPとは?
●ERPシステムの概要
●ERPを導入するメリット
●まとめ
ERPとは?
ERP(総合業務システム)とは、企業内の基幹業務を一元化して有効活用しようとする考え方、もしくはそれを実現するためのシステムを指す。
ERPは「Enterprise Resources Planning」の頭文字をとったもので、直訳すると「企業資源計画」という意味になる。「在庫状況管理」「残高照合」などの情報をもとにシステムで生産計画を管理する「MRP(Material Requirements Planning=資材所要量計画)」から派生した言葉だ。
ERPの概念が生まれる以前の企業では、各部署・部門が独自にシステム開発を行うのが主流であった。そのため、部署をまたいで業務を行う際には「データの共有・連携に時間がかかる」「二重のデータ入力が必要となる」「データに不整合が生じる」などの課題が生じていた。
そこで、MRPの生産管理における「資材」を、「企業資源」である「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」に拡大し、個別に機能していたシステムを企業全体で1つのシステムに統合しようとする概念が1990年代に登場。それがERPの由来と言われている。現在では、ERPを実現させるためのシステムそのものを指すことが多い。
ERPシステムの概要
次に、ERPシステムの主な機能や、種類を見ていこう。
<ERPの仕組み>
ERPシステムは、異なる部署や部門で使用するデータを共有のデータベースに格納し、それぞれが必要とする情報を同じソースから取り出す仕組みになっている。他部署で生成されたデータを引き出し、参照したり自動的に別のシステムに転記したりすることが可能だ。
その他、連結決算の導入や国際会計基準の変更、税制改正などに一律対応できるサービスも多い。
<主な機能>
ERPシステムは、主に以下の基幹業務とそれに伴うデータを統合することで情報の一元化を図っている。提供している会社によって特化している機能が異なるため、導入する際は自社にあった製品を選択することが重要だ。
・会計管理
・販売管理
・在庫・購買管理
・生産管理
・人事・給与管理
これらの他、「営業管理」など独自の管理機能を備えたシステムも存在する。
<ERPシステムの種類>
ERPシステムは、システムをどこに構築するかによって「オンプレミス型」と「クラウド型」の2種類に分けられる。
「オンプレミス型」とは、自社のサーバー上にシステムを構築して利用するもの。自社の環境にシステムを構築するため、カスタマイズや既存システムとの連携が容易であることが特徴だ。クラウド型システムより前に開発されたこともあり、現在でも多くの企業がオンプレミス型のERPを利用している。
「クラウド型」はインターネット上にシステムを構築したもの。ソフトウェアをインターネットを経由して利用する「サービス」として活用するため、自社でサーバーを保持する必要がなく、初期費用・ランニングコストを削減できることが特徴だ。オンプレミス型より安価であるため、大企業だけでなく中小企業の導入も増えている。
<ERPシステム導入の方法>
ERPシステムを構築していく方法には、「パッケージ型」と「フルスクラッチ型」の2通りがある。
「パッケージ型」は、必要とされるであろう機能をあらかじめ備えている形のERPシステムだ。初期設定を行った後、すぐに稼働させることが可能なため、導入までの期間とコストを抑えられる。ただし、パッケージの仕様が自社の業務と完全に一致しているとは限らないため、カスタマイズが必要な場合もあることに注意が必要だ。
「フルスクラッチ型」とは、ゼロから全てを構築していく受託開発型のERPシステムのこと。要件定義、設計、開発を経て稼働へ進むため、導入期間やコストがかかることが想定される。一方、自社に合わせたシステムを構築できるため、独自の慣習があるなど、パッケージ型のソフトウェアで対応できないなどの場合には安心して利用できる。
<基幹システムとの違い>
EPRと基幹システムとの違いは、複数のシステムが統合されているか否かだ。基幹システムとは企業の主要業務を遂行するために用いられるシステムで、それぞれが独立している。
一方、ERPはそれらの基幹システムを統合したもので、基幹システム同士や一部の情報系システムとも連携できることが特徴だ。そのため、「統合基幹業務システム」と呼ばれることもある。
ERPを導入するメリット
ERPを導入することによって、企業にはどのような効果があるのだろうか。ここでは、EPRを導入するメリットを紹介する。
企業全体の業務効率が向上する
EPRの最大のメリットは、システム間のデータ連携強化により、企業全体の業務効率が向上することだ。共有データベースで情報を管理することによって「二重入力・重複処理の防止」「部署間の申請・承認作業のカット」が実現するため、不要な工数やコミュニケーションを削減させることが可能となる。
経営状況をリアルタイムで把握できる
データを一元管理することで、経営状況をリアルタイムで把握できることもERPのメリットだ。企業全体の最新の情報を共有・利用できるため、データに基づいた経営分析や経営戦略の構築がしやすくなり、最適な経営判断を行えると言えるだろう。
ガバナンスが強化される
ガバナンスとは、企業の内部統制・管理体制のこと。ERPによって情報を一元化することは、社内業務の可視化、透明化にも繋がるだろう。ERPではシステムへのアクセス権限の管理や記録もできるため、情報操作・隠蔽などの不正・法令違反の防止だけでなく、業務の属人化を防ぐといった効果も期待されている。
まとめ
ERPシステムで企業内の業務や情報を一元化することによって、業務効率の向上や経営状況の可視化などのメリットがある。システムの種類や導入の方法、特化した機能は提供する会社によって異なるため、導入する際は自社の業務内容や必要となる機能にあわせてサービスを比較検討するとよいだろう。