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2022年1月に改正される電子帳簿保存法とは?概要と改正内容のポイント

2021.12.17
オフィスのミカタ編集部

2022年1月、ペーパーレス化の促進を目的とした「改正電子帳簿保存法」が施行される。日々の業務におけるさまざまな資料を電子データとして保存することで、紙の資料の削減とともに、業務プロセスの効率化も図れると期待されている。

本改正では電子取引における電子データ保存の義務化が予定されていたが、猶予期間を設けることにより、2022年1月から2年間は紙での保存も容認される見込みだ(2021年12月6日時点の情報)。

本記事では、電子帳簿保存法の概要や対象となる書類、電子データの保存方法などを見ていく。2022年1月以降の改正内容や注意点も解説しているので、自社の「書類のデジタル化」の推進に役立ててほしい。

目次

●電子帳簿保存法とは
●電子帳簿保存法の対象となる書類
●電子帳簿保存法で認められている保存方法
●2022年1月以降の改正内容のポイント
●法改正後の注意点
●まとめ

電子帳簿保存法とは

「電子帳簿保存法」とは、帳簿や決算書、請求書などの国税関係帳簿や書類を、一定の条件を満たせば電子化して保存することを認める法律だ。1998年の施行以来、時代の変化に応じて法改正が行われている。まずは、近年の法改正の内容や、2022年度改正の背景と目的について見ていく。

近年の法改正の内容
国税関係帳簿や書類は、本来「紙での保存が原則」だ。しかし、保存にかかるコストや事務的負担を軽減するため、特例として電子帳簿保存法によって電子データでの保存が認められている。

近年の法改正の内容は、以下の通り。

●2015年:電子署名の義務化廃止、金額の上限撤廃
●2016年:スキャナ保存要件の緩和
●2020年10月:電子決済の利用明細データも証憑(しょうひょう)として認める

2022年度改正の背景と目的
現在は帳票類のデータ化やスキャナ保存、電子取引に取り組む企業も増え、電子帳簿保存法は経理業務上欠かせない法制度となっている。一方で、「国税関係書類は紙で保存する」という企業も少なくない。今回の改正は、そのような企業のルールに一石を投じるものであり、「経済社会のデジタル化を踏まえた、経理の電子化による生産性・記録水準の向上」を目的に施行される。

電子帳簿保存法の対象となる書類

電子帳簿保存法で電子保存できる書類は、「国税関係帳簿書類」とされる。具体的な種類は、次の表の通りだ。

 

電子保存の対象とならない書類もあるため注意が必要だ。例として、手書きで作成した「主要簿」「請求書」「補助簿」などは、紙の原本のまま保存する必要があるため、電子帳簿保存法の対象外となる。

電子帳簿保存法で認められている保存方法

電子帳簿保存法にもとづいて電子データを保存するには、「電磁的記録での保存」「紙データのスキャナ保存」「電子取引データの保存」の3つの方法がある。それぞれのポイントを解説する。

電磁的記録での保存
「電磁的記録での保存」とは、パソコンを使って作成したデータを媒体に保存する方法。DVDやハードディスクなどのメディアでの保管だけでなく、クラウドサービスを利用してサーバーに保管したデータも含まれる。クラウドサービスを利用すれば、データの保存はもちろん、関係部署とのデータ共有もスムーズに行えるのが特徴だ。

紙データのスキャナ保存
「紙データのスキャナ保存」とは、取引した紙の書類をスキャンまたはスマートフォンで撮影することで電子データに変換し、電子文書として保存すること。電子データに変換する際の改ざん防止の観点から、「システム要件」や「日数制限」が定められている。

また、「訂正・削除履歴が残るシステムに保存する」「保存対象のファイルにタイムスタンプを付与する」など、一定の要件を満たすことでエビデンスとして認められる。タイムスタンプとは、ある時刻にその電子データが存在していたこと、それ以降改ざんされていないことを証明する技術のことだ。保存までの期間は、「最長で約70日(2カ月とおおむね7営業日)以内」と定められている点も注意したい。

電子取引データの保存
「電子取引」とは、取引情報のやり取りをインターネットなどの電磁的方式で行う取引のこと。メールの添付ファイルを含めた電子メールによる取引や、ネットワーク経由でビジネス文書をやり取りするEDI取引などがこれに当たる。電磁記録の保存義務の対象となるのは、契約書や見積書、発注書、請求書、領収書、送り状など、電子取引によってやり取りをしたすべての取引情報だ。

電子データで受領する書類や電子明細については、利用者がデータを改ざんできないクラウドサービスを利用していれば、タイムスタンプ不要で保存できる。タイムスタンプを付与する場合、付与までの期間は、スキャナ保存と同様に「約70日(2カ月とおおむね7営業日)以内」と定められている。

2022年1月以降の改正内容のポイント

ここからは、今回の改正内容のポイントを見ていこう。

事前承認制度の廃止
税務署長の事前承認制度が廃止され、申請書の提出が不要に。事務手続きの負担軽減、導入フローの簡素化により、自社の都合のよいタイミングで電子帳簿保存を開始できるようになる。

優良保存認定制度の新設
優良保存認定制度の新設により、改正前の制度で電子帳簿の条件を満たすものは、適正な納税に役立つとして「優良な電子帳簿」という類型に格上げされる。優良な電子帳簿には、「帳簿の訂正・削除履歴が必要」「相互関連性の確保」など、改正前と同様の厳しいシステム要件がある。「優良な電子帳簿」と「その他の電子帳簿」の区分の違いは次の表の通りだ。

 

「優良な電子帳簿」の要件を満たす場合、過少申告加算税に軽減措置が適用
先述した「優良な電子帳簿」の要件を充足して保存を行い、あらかじめ税務署に届出を行っていれば、申告漏れがあった場合に課される過少申告加算税が5%に軽減される。

検索機能の要件が緩和
検索機能の要件が緩和された。詳細は次の通り。

●検索要件は「日付、金額、取引先」に限定
●優良な電子帳簿について、税務調査の質問検査権にもとづくデータのダウンロードの求めに応じる場合には、「日付・金額の範囲指定」「2つ以上の項目の組み合わせ」による検索は不要

参考/関連記事:『国税庁「電子帳簿保存法が改正されました」』

法改正後の注意点

最後に、法改正後に経理担当者が注意すべきポイントを見ていこう。

紙での一元管理が難しくなる
これまで電子データで受け取った書類は、「電子データでの保存」または「紙での保存」のどちらも容認されていた。例として、電子データで受け取った請求書を紙に印刷して、郵送やFAXなどの紙で受け取った請求書とともに一元管理することも可能だった。

ところが今回の改正では、電子データで受領した請求書を紙に印刷して保存することは認められていない。「電子取引データの保存」のみが容認されるため、電子データを印刷して紙の請求書とまとめて一元管理することは難しくなる。今後は、紙の書類を電子データにして一元管理することが推奨されていくだろう。

不正行為のペナルティ
書類のデジタル化への要件緩和と同時に、適正な保存を担保するための制度として、新たにペナルティが導入される。スキャナ保存や電子取引の記録を正確に行わず、隠ぺいや改ざんした事実がある場合には、その事実に関する申告漏れなどに課される重加算税が10%加重されるため、注意が必要だ。

まとめ

ペーパーレス化の促進を目的とした「改正電子帳簿保存法」が、2022年1月に施行される。電子データでの保存に関する要件が緩和されるとともに、規制や罰則が強化されるため、改正内容をしっかり把握したうえで経理業務を進めることが重要だ。本記事で紹介した電子データの保存方法や改正内容のポイント、改正後の注意点を確認し、経理業務の効率化に取り組んでみてほしい。

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