人事異動の効率化を推進するシステムの選び方とおすすめシステムを紹介
企業が人的資源を活用し、組織力の向上を図る上で欠かせない人事異動。しかし担当者にとっては、異動案の作成や部門間調整、事務処理など、頭を悩ませることの多い業務と言えるだろう。そこでこの記事では、人事異動の効率化に有用なシステムの選び方やおすすめのシステムを紹介する。
企業成長に欠かせない人事異動の目的
まずは人事異動の目的から見ていこう。その必要性や重要性を理解した上で業務にあたってほしい。
事業戦略の実現に向けた人事異動
市場や経営環境の変化に対応していくには、組織の新設や統廃合、拡大・縮小は避けられない。それに応じて、人員を配置し直す必要が出てくる。
人材育成やタレントマネジメントの一環
企業によっては、定期的なジョブローテーションでジェネラルスキルを磨いてもらう育成方針を採るところもあるだろう。さまざまな部署で経験を積むことで、全社的な広い視点を身につけることができるためだ。
事業発展を進める上で組織の健全性を保つ
もし人事異動が行われず、固定化されたメンバーで長く業務にあたっていると、慣れや馴れ合いが生じるケースも少なくない。こうした組織ではイノベーションは起きにくく、不正のリスクも高まる。人事異動は組織に新しい風を吹き込み、澱みを解消する働きも持っているのだ。
人事異動に関する業務で注意すべきこと
人事異動は離職につながるケースも少なくない。以下の点に注意をしながら慎重に進めよう。
現場との意識乖離がないよう十分なヒアリングを行う
部門の責任者にヒアリングを行い、どのような人材が必要なのかを十分に聞き取った上で配置案を考えるようにしよう。事業目標を達成するために必要な人的リソースを配分することが重要だ。
人事異動の理由やタイミング、期待する役割などを十分に説明する
異動の対象者には、異動の理由や期待する役割、なぜ今なのかを丁寧に説明することが求められる。その納得感次第でモチベーションも大きく左右されるだろう。
公平性に配慮する
特定の人材や部署に異動が集中すると、不満の原因にもなりかねないため注意が必要だ。また、異動によって対象者が金銭的な不利益を被ることがないよう、転居費の補助や地域手当などの処遇面の配慮もあると良いだろう。
以下の記事ではバックオフィス業務に携わる人が、人事異動においてストレスに感じることを調査した結果を発表している。自社の人事異動業務を改善する際に参考にしてほしい。
大企業のバックオフィス勤務者約8割が3月〜4月の組織改編・人事異動で「ストレス」を実感
頭に入れておきたい人事異動に関する法律
人事異動によって労使間トラブルを招かないよう、担当者は以下の法律を頭に入れておこう。
労働契約法第8条
労働契約法第8条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
会社は雇用契約や就業規則を根拠として、従業員に対する人事権を有するとはいえ、どんな人事異動でも命じられるというわけではない。例えば、雇用契約書や労働条件通知書で職種や勤務地が限定されている場合、それに反する配置転換や転勤を命じることは許されない。労働条件を変更する場合には、双方の合意が必要だ。
労働契約法第3条
労働契約法第3条3 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
労働契約法第3条5 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。
例えば、育児や介護などの事情を抱える従業員に無理を強いるような人事異動を行えば、労使間トラブルにもなりかねず、法令に違反するケースも出てくる。
小見出し 男女雇用機会均等法第6条
男女雇用機会均等法第6条 事業主は、次に掲げる事項について、労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない。
1 労働者の配置、昇進、降格及び教育訓練
3 労働者の職種及び雇用形態の変更
4 退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新
育児・介護休業法第26条
育児・介護休業法第26条 事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。
このように人事異動は、個々の従業員の事情や雇用条件も考慮する必要があるため、異動案の作成は複雑になりやすい。人材管理システムには人事異動のシミュレーションを行えるものがあり、異動後のイメージを掴みやすい。また、主観にとらわれないデータ重視の人事異動が行えるのも魅力だ。ここからは人材管理システムの選び方やおすすめのシステムを紹介していこう。
人事異動を含む人材管理システムの選定ポイント
人材管理システムは、採用、配置、評価といった人事業務をサポートしてくれるシステムだ。種類が豊富で、機能や特徴も多様なため、ここでは自社に適したシステムを選ぶコツを紹介する。
自社が求める機能に強みを持つシステムを選ぶ
人材管理システムはカバーしている範囲が広いため、具体的にどんな課題を解決したいのかを明確にした上で選定するようにしよう。「人事異動のシミュレーションを簡単に行えるようにしたい」「人事データを一元管理して、各種データの処理を効率化したい」など、目的に合わせて必要な機能を洗い出そう。
データの一元管理・連携機能の有無
人事異動や組織改変を行えば、勤怠管理や給与管理のシステムから業務システムまで、さまざまなシステムのデータを更新する必要が出てくる。システム内でどこまで一元管理ができ、外部システムとの連携はどこまで可能なのかを把握しよう。一元管理やデータ連携ができる範囲が広いほど、業務の効率化が進むだろう。
ランニングコストを含めたコストを見通すこと
人材管理システムは、長期にわたって継続的に使うシステムとなる。イニシャルコストとランニングコスト、導入や運用にかかる社内の人的コストを含めて見通しを立てた上で導入したい。
サポート体制もチェック
業務効率化のために導入したはずがシステムの扱いに時間を取られてしまうのでは本末転倒だ。困った時にメールやチャットなどで簡単にサポートが得られる体制かどうかも確認しておこう。
効率的な人事異動をサポートするシステム
ここからは、効率的な人事異動をサポートしてくれるおすすめのシステムを4つ紹介する。
HRBrain
人材・労務管理から組織診断まで人事業務のあらゆる課題を解決する「HRBrain」。スキルや異動希望など、人員配置に必要なデータを一元管理できるほか、クラウド上でシミュレーションも実行が可能だ。
https://www.hrbrain.jp/
タレントパレット
成長企業から大企業まで幅広く利用されている「タレントパレット」。設定した人材要件をもとにAIが自動配置を作成し、組織と人材のマッチ度を提案。また、ドラッグ&ドロップで異動シミュレーションができ、全体を俯瞰しながら調整を行うことができる。
https://www.talent-palette.com/
ジンジャー人事労務
社内のあらゆる人事情報を一元管理し、人事・労務業務のペーパーレス化を実現する「ジンジャー人事労務」。組織改変時も、個別又はCSVで異動対応を行うことができ、異動予定者を一覧で確認することも可能だ。
https://hcm-jinjer.com/jinji/
カオナビ
戦略的人事を実現するタレントマネジメントシステムとして人気の「カオナビ」。ドラッグ&ドロップで配置シミュレーションができ、人件費やスキル値を確認しながら調整を行うことができる。
https://www.kaonavi.jp/
まとめ
複雑な人事異動業務の効率化を図りながら、適正な人材配置を行いたいなら、人材管理システムは心強い味方だ。今回紹介した選び方のポイントやおすすめのシステムを参考に自社に適したシステムを導入して、戦略人事の実現につなげてほしい。










