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これからは従業員より主業員?企業と個人の働きがいについて【第10回GOOD ACTION アワード】

2024.04.01
広瀬敬代

2024年3月5日、職場を盛り上げるイキイキとした取り組みに光を当てる、株式会社リクルート『リクナビNEXT』主催の第10回「GOOD ACTION アワード」を受賞した企業の取り組みが発表された。記念すべき第10回は、3社が「入賞」、4社が「Cheer up賞」を受賞。過去最高応募数となった中から選ばれた企業・団体が紹介された。

働く個人と企業のフラットな関係性を築くアクションを応援

『リクナビNEXT』が主催する「GOOD ACTION アワード」とは、働き方の多様化が求められる現代において、従業員一人ひとりがイキイキと働くための職場の取り組みや個人に光を当てるプロジェクトだ。今回は2023年7月25日~9月12日まで、国内で企業活動を行う企業や団体を対象に募集。最終審査では、1つの取り組みに対して1~3時間ほど、直面していた課題や取り組みに込めた想いについて直接ヒアリングを行い、審査員全員による議論を経て受賞の取り組みを決定した。

10回目となる今回は、深刻な人手不足に悩む業界で、職場環境向上や労働時間削減、評価制度や育成方法などについて大胆な改革をし、多様化の時代をけん引するような成果を生み出した3社が「入賞」。また、職場への広がりを期待する、働く人にとってエールになるような取り組みを行っている4社を「Cheer up賞」として表彰した。

審査員のひとり、株式会社リクルート リクナビNEXT編集長の藤井薫氏は、「北海道から九州まで多くの応募があった。昨今は“人的資本経営”という言葉がよく聞かれるが、人は投資をする対象であり、大きな花を咲かせるためには経営と現場が一体となって進んでいくことが重要だと思う。働く人がイキイキする職場がなければ意味がない。今回はそんな具体例を紹介するので、ぜひこれらから学びを得て自身の職場でも生かしてほしい」と話した。

受賞企業

受賞7社は以下の通り。

●入賞
社会福祉法人 山ゆり会(茨城県)
「子どもは預けたいけど、働きたくない」と言われた保育園。余裕を持った人員配置やICT化で保育士の働きやすさを実現し、「遠くても、通いたい保育園」へ。

株式会社 中川(和歌山県)
実働5時間の林業を実現。企業としての成長を手放す姿勢に共感し、全国から人材が集う。

邦美丸(岡山県)
漁師の常識を覆す「完全受注漁」で半分の労働時間で売上倍増。家族に幸せをもたらした。

●Cheer up賞
アルティウスリンク株式会社(東京都)
障がい者スタッフが、障がい者新人スタッフを育成する「チューター制度」の導入で、人に教える喜びや自身の成長を実感できる職場へ。

三井住友海上火災保険株式会社(東京都)
育休取得の罪悪感を払拭。育休を取った社員の同僚に最大10万円を支給する「お祝い金制度」で、みんなで支え合える職場へ。

筒井工業 株式会社(愛知県)
離職率95%から奇跡の大変身!信頼関係を土台にした「働き方改革」と人財を生かす「働きがい改革」を促進。

山陰パナソニック株式会社(島根県)
1年目社員が「青春18きっぷ」を握りしめてひとり旅へ! 挑戦する若手の姿を組織風土改革へつながっている。

入賞企業3社のコメント

入賞した3社のコメントを紹介する。

左:社会福祉法人山ゆり会 松山圭一郎氏、右:アキレス美知子氏(審査員)

「保育業界は少子化の波が最初に直撃する業界。待機児童問題が解消されたとたんに定員割れという現状に直視している。さらに、保育士不足も深刻。その中で、余裕を持った人員配置と連絡帳のアプリ化などのICT化の実現、1on1による保育士のキャリアデザイン支援を私たちは10年かけて働く環境の改善に取り組んできた。それによって、人材定着だけでなく一度離れていた人たちが戻ってきてくれている。このような取り組みが保育業界にとって知恵になれば大変うれしい」(社会福祉法人山ゆり会 松山圭一郎氏)

左:株式会社中川 中川雅也氏、右:守島基博氏(審査員)

「林業はネガティブな情報が多い業界だが、可能性、伸びしろはかなりある。目線を変えて全国各地で林業は面白い、楽しいという思いを増やすことで、子どもたちに今の自然を当たり前のように残せる経済を作りたい」(株式会社中川 中川雅也氏)

左:邦美丸 富永邦彦氏、右:藤井薫氏(審査員)

「受注漁が始まる前は、1日15時間労働も当たり前で家族との時間が取れなかった。そのため、子どもが描くパパの似顔絵には必ず眉間にしわが描かれることに。ただこの取り組みを始めてから、パパの似顔絵から眉間のしわがなくなっていた。子どももちゃんと見ているのだと気づかされた。今後は、漁協単位で受注を行い、町単位になり、いずれは市場単位で受注を行いたい。そうすれば全国の多くの関係者が救われると信じている」(邦美丸 富永邦彦氏)

これからは「主業員」と「企業」の声を大事にすること

これからは「主業員」と「企業」の声を大事にすること
株式会社リクルート「リクナビNEXT」編集長 藤井薫氏

最後に今回のGOOD ACTION アワードを振り返り、藤井編集長は、「働く個人が思いをもって声をあげる、経営者自身がその声を聞きながら進めていくという“声”が大きなキーワードとなった」と話す。取り組みのきっかけには、このままだと生活が壊れてしまうという悲痛な声もあった。個人が生活を犠牲にしないような生き方、働き方をもう一度取り戻すためにアクションを起こしたことが受賞のポイントだったという。企業側も、経営者が、個人の声に寄り添ったことで、成果が生まれているのが今回の共通項であったともいう。

藤井編集長は、審査を終えて 「ゆるい職場、制度が良くて働きやすいだけではいけない。働きがいがないといけない。ブラックではなくて、ホワイトすぎてもいけなくて、レインボーカラーのような、本来何をやりたいのかという声の奥にあるものを聞くことが必要」とあらためて感じたと話す。

守島基博氏は「何をやりたいのか、どう成長したいのかということに対して、経営者側も個人もきちんと直視して改革していこうという寄り添い方が大きかったと感じた。特に、株式会社中川さんのように、環境やエコ、未来のお客様や働き手にも配慮して、そこまでを含めて“働き方改革”だという認識が、これからを変えていくのだと強く感じた」と話す。

アキレス美知子氏は「これからは、もっと1人ひとりにいかに向き合うかが重要。仕事は50%でいいという価値観もある。多様な価値観がもっと表面にあらわれてくるのではないかと思う。経営側は大変かもしれないが、しっかりと対応できると素晴らしい組織ができあがっていくと思う。一生懸命頑張って結果が出た時は、ワクワクするもの。自分のやりたいことを追求でき、それをさりげなくサポートする環境があることが、イキイキした職場につながるのだと思う」と語った。

今、世界的な潮流で人的資本経営が注目されている。人をコストではなく資本と捉えて投資するという考え方だ。藤井編集長は今後の働き方について思いを語った。

「無形資産である、個人の才能に投資し、一人ひとりの才能が開花することで、職場がイキイキし、会社も持続的に繁栄する在り方が注目されている。そのため、これからの時代は、『従業員』ではなく、『主業員』になることが重要だ。従うのではなく、主体的に関わる人になるために、認識を変えていかなければいけない。最終的には働いている人の集合体である職場がイキイキとしなければ、本質的な人的資本経営ではないため、人がイキイキとする、人に投資するような社会になってほしいと思う。その本質と共に歩んできたのがGOOD ACTION アワードの歴史。これからの10年も、そのような職場がイキイキとする取り組みを応援していきたい」