AWSがクラウド移行を支援するサービスの最新版を発表 公共機関向けのクラウド移行支援パッケージも新たに提供開始
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(以下 AWSジャパン)は7月5日、「AWS ITXパッケージ ファミリー」最新版に関する記者説明会を開催。同ファミリーの既存サービスである「ITX for Cloud Native」と「ITX for MCP Partner」をアップデートしたほか、公共機関向けのクラウド移行支援パッケージ「ITX for PS」を新たに発表した。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 執行役員 パブリックセクター技術統括本部長 瀧澤与一氏
クラウド移行支援パッケージ「ITX」の最新版を提供開始
企業がクラウド移行に取り組む動機は「俊敏性やスタッフ生産性向上」「セキュリティと運用改善」「グローバル展開/M&A対応」「コスト削減」などさまざまだ。とりわけ、近年は生成AIの活用が企業の喫緊の課題になっているが、生成AIの活用に取り組む上で「データ基盤の整備」「生成AIの活用に必要なスキルやノウハウの不足」がしばしばボトルネックになっている。
こうした現状を受けて、AWSジャパンは「ITトランスフォーメーションパッケージ(ITX)」の最新版を2024年6月20日にリリースした。最新版のITXは、AWSの専門性とソリューション、AWSパートナーネットワークを最大限活用することで、「クラウド移行」「データ活用」「生成AI導入」の3つの側面から、企業や公共機関のITトランスフォーメーションをワンストップで支援することを目指している。
ITXを構成する5つのプログラム
AWSジャパンは、2021年にAWSへの大規模なシステムの移行を実現し、顧客のデジタルトランスフォーメーションをサポートする 「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ(ITX)」をリリース。2022年には内容を強化・拡大した「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ2.0(ITX2.0)」、2023年にはITXパッケージ2.0をより包括的に進化させた「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ 2023 ファミリー(ITX 2023)」をリリースし、サービス内容を進化・拡充させてきた。
2024年6月20日にリリースされた最新の「ITトランスフォーメーションパッケージ(ITX)」は、次の5つのプログラムから成っている。
① ITX for Cloud First
クラウド移行プロジェクトの確実・迅速な遂行を支援
② ITX for Cloud Native
生成AIの土台となるデータ活用支援を追加
➂ ITX for MCP Partner
MCP(Migration Competency Partner)の付加価値を活かしたプログラム群を提供
④ ITX Lite
中小規模の事業者を対象とした支援プログラム
⑤ ITX for PS
公共機関の⼤規模なクラウド移⾏を包括的に⽀援
サービス拡充でクラウドネイティブな移行をより強力に支援
「ITトランスフォーメーションパッケージ」のうち「ITX for Cloud Native」は、「検討」「評価」「準備」「移行」の4つのフェーズでクラウドネイティブな技術を活用した移行を支援するプログラムだ。そして今回、新たなサービスとして「評価」のフェーズに「データプラットフォーム検討支援」、「準備」のフェーズに「生成AI活用ワークショップ」が追加された。
・データプラットフォーム検討支援
AWSの専門チームが顧客の現行データ基盤を分析し、モダナイゼーションのポイントや、To-Beアーキテクチャ案を提示。現行データ基盤の成熟度を把握することで、今後の戦略策定に活用できるほか、現行基盤の単純移行にとどまらない、クラウドならではの機能強化のヒントが得られる。
・生成AI活用ワークショップ
アジャイル型のインタラクティブな体験型ワークショップ。実践を通してAI/ML(人工知能と機械学習)、生成AIのスキルを身に付けながら、AIやMLを活用していかにビジネス価値向上を実現できるのか、いかに組織を強化できるのかを6週間かけて検討する。
公共機関向けのクラウド移行支援パッケージも誕生
デジタル庁が「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利⽤に係る基本⽅針」を策定するなど、公共領域においてもIT移行のニーズが急速に高まっている中、今回新たにリリースされたのがAWS ITトランスフォーメーションパッケージの公共版「ITX for PS」だ。
「ITX for PS」では、クラウド移行のプロセスを日本の公共機関に合った形に整備し直し、「評価」「移行計画・立案」「移行・運用」の各フェーズに必要なプログラムを提供することで、官公庁・教育・医療といった公共機関の⼤規模なクラウド移⾏を包括的に⽀援する。具体的には、従来のITXを拡張する形で、「システムのモダン化⽀援」「公共専⾨分野⽀援」「システムをモダン化する際に鍵となるデータ・⽣成AIの活⽤⽀援」などを提供する。
・システムのモダン化⽀援
モダン化による費用対効果の検証や実現性の検証を豊富なアセスメントにより支援するほか、プロトタイプの作成や体験型ワークショップの提供、コスト最適化のための支援も行う。
・公共専⾨分野⽀援
公共領域特有の専門知識、技術知識を持ったスペシャリストが、公共分野向けの設計用テンプレートや、公共における各種ガイドラインへの対応用アセットを活用しながら課題解決を支援。
・システムをモダン化する際に鍵となるデータ・⽣成AIの活⽤⽀援
現行のデータ基盤を分析し、モダナイゼーションのポイントやTo-Beアーキテクチャ案を提示する「データ基盤モダン化支援」、公共分野における生成AIの代表的なユースケースの実装支援テンプレートによる「生成AI活用検討支援」を提供する。
日本は諸外国に比べIT化やクラウド移行が遅れていると言われるが、その要因の一つが、必要な知識・スキルを持った人材やノウハウの不足だ。民間・公共を問わず、その領域のスペシャリストがクラウド移行をきめ細かく支援するITXは、こうしたボトルネックを解消し、ITトランスフォーメーションを成功させたい組織にとって、強い味方になりそうだ。