男性の育休、社内のキャリアにマイナスの影響が出るのか?男性の育児休暇取得に関する調査結果

国内外で企業の人材育成を支援するサイコム・ブレインズ株式会社 (東京都千代田区) は、男性の育休取得に関する調査を実施。社会人332人(男性179人、女性149人、無回答4人)が回答した。
育休取得によるマイナスの影響を少なからず懸念している男性もいるようだ。
■育休を取得することで、キャリアにマイナスの影響が出ることを懸念する男性もいる

「男性がどの程度の期間育休を取得すると、社内のキャリアにマイナスの影響が出ると思うか」を聞いた。
最も多かった回答は「期間の長短にかかわらずマイナスの影響は出ない」で20%。一方で、「1か月」「3か月」「1年」が各15%ずつという結果だった。
■女性の方が男性よりも、育休取得によるキャリアへのマイナスの影響が少ないと感じている

男性と同様、「女性がどの程度の期間育休を取得すると、社内のキャリアにマイナスの影響が出ると思うか」を調査した。
女性の場合、「マイナスの影響は出ない」が32%で最多。次いで、「2年」が23%、「1年」が16%という結果だった。
男性と女性では、キャリアにマイナスの影響を及ぼさずに育児休暇を取ることができると認識している期間には、大きな差があることが浮き彫りとなった。
■男性の職位によっても、キャリアにマイナスの影響があると考える育休の取得期間が異なる

育休取得による影響を、男性の職位別に集計した。職位別の集計結果は以下の通り。
①【社長・CEO、取締役、部長、課長レベル】
最も多かった回答は「3か月」で22%。次いで「1年」が21%。
②【係長・主任レベル】
最も多かった回答は「マイナスの影響は出ない」で23%。次いで、「1か月」「1年」がそれぞれ15%。
③【一般社員レベル】
最も多かった回答は「マイナスの影響は出ない」で23%、次いで「1か月」が21%。
■コメントを紹介
調査で寄せられた、コメントを紹介する。
①【社長・CEO、取締役、部長、課長レベル】の男性からのコメント
「3か月」と回答した理由として「3か月を超えて休むと評価の対象外となる」など評価システムにまつわる意見と共に、「業務は四半期単位で企画される」「(3か月以上の不在に対し)体制を考えないといけない」など、職場の業務企画や態勢に言及する意見が目立った。
「その他」と回答した理由としては、「影響が出るか出ないかは期間の問題はなく、組織風土の問題」「成果主義に立つことによりキャリア上のマイナス要素はなくなると思う」との趣旨のコメントが複数あった。
②女性の育休取得についてのコメント
最も多かった「マイナスの影響は出ない」との理由としては、「復帰してからどれくらい貢献できるか、貢献できる場所が会社として提供できるかがポイント」「復職後の働き方の方が重要」という意見が出た。一方で、「当社では女性には期待しない、期待されていない現状がある」などといった意見も目立った。
■男性の育休取得が珍しくなくなるためには、組織に変化を起こす必要がある
アンケート結果について、サイコム・ブレインズ株式会社でダイバーシティ研修を担当している太田氏は、以下のような考察を行っている。
「本来であれば、キャリアに悪影響を与えず休業できると認識している期間が男女で違うのは合理的ではありません。違う理由として考えられるのは、育児は女性が担当すべきという根強い性別役割認識、もう一つは残念ながら、女性には重要な職務が与えられないケースがまだまだ多いということでしょう。
気になるのは、いわゆる管理職層以上の回答者がキャリアにマイナスになる期間と考えているのが「3か月」と、他の層より短いことです。本来,組織レベルでの業務企画、態勢などは個人のキャリアに直接的に影響するものではありません。管理職の考えがネガティブイメージとして組織風土に影響を与えると、パタハラが起こりかねません。
男性の育児休業取得者が珍しくなくなるよう、現場で積極的に支援することで、組織に変化を起こすことが大切です」
■まとめ
女性よりも男性の方が、育休取得によるキャリアへのマイナスの影響を懸念していることがわかった。また、男性の職位によっても差が出る結果となった。
男性の育休義務化への議論が盛り上がりを見せる昨今。男性の育休取得によってマイナスの影響が出ないよう、企業側は体制の見直しや新たな取り組みが求められるだろう。