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若手社員の約半数が転職を検討・活動中。社員定着のカギは「目標にしたい人がいるか」

2019.10.24

 一般社団法人日本能率協会は、全国の入社半年・2年目を迎えた若手社員400人を対象に、職場や仕事内容に対する考え、現状への満足度を探ることを目的に意識調査を実施した。

 若手社員の約半数が転職を検討・活動している中で、社員定着のカギは何なのだろうか。

■現在および将来の転職を検討または活動している人は48.8%

■現在および将来の転職を検討または活動している人は48.8%

 「転職に対する考え方」を聞いたところ、「転職することを検討しているが、特に行動していない」が33.5%と最も多く、「転職することを検討し、近いうちに転職活動を始める予定である」(12.3%)、「現在、転職活動をしている」(3.0%)をあわせると、若手社員の約半数(48.8%)が転職を検討・活動中という結果が見られた。

 「転職はせず、今の会社に定年まで勤めるつもりである」は21.8%、「今のところ、転職することは考えていない」は29.5%だった。(図表1)

 転職サイトに登録しているかどうかを質問したところ、「登録している」が46.8%にのぼった。(図表2)

 転職に対する意向別に見ると、「転職はせず、今の会社に定年まで勤めるつもりである」と回答した人の60.9%が「登録している」と回答している。(図表3)

 現状、転職をするつもりは無いにしても、本当に現在の会社で良いのかどうか、他社とも比較しながら情報を取ろうとしている姿勢がうかがえる。

■職場に「目標にしたい人がいるか」が、若手社員定着のカギ。

■職場に「目標にしたい人がいるか」が、若手社員定着のカギ。

 入社当時と比べて、仕事を行う上での「能力・スキルがどう変わったか」を質問したところ、「上がった」「少し上がった」の合計が65.0%、「下がった」「少し下がった」の合計が11.3%となった。(図表6)

 「上がった」(「少し」も含む。以下同様)と「下がった」に分けて、「仕事への満足度」との関係を見たところ、「上がった」人は「満足」の合計が73.8%であるのに対し、「下がった」人は「不満」の合計が44.4%となった。(図表7)

 同様に「転職に対する考え方」との関係を見ると、「上がった」人が転職するつもりはないとする割合が高く、「下がった」人では転職を検討している割合が高いという結果が見られた。(図表8)

■「会社のビジョン・戦略と自分の仕事のつながり」を感じている社員の人が、会社への満足度が高い

■「会社のビジョン・戦略と自分の仕事のつながり」を感じている社員の人が、会社への満足度が高い

 「会社のビジョンや戦略と自分の仕事内容は、つながっていると感じるか」について質問したところ、「感じる」「少し感じる」の合計が64.8%、「感じない」「あまり感じない」の合計が12.7%となった。(図表9)

 「感じる」(「少し」も含む。以下同様)と「感じない」に分けて、「会社のビジョン・戦略と自分の仕事のつながり」と「会社組織への満足度」の関係を見たところ、「感じる」と答えた人は「満足」の合計が78.4%であるのに対し、「感じない」と答えた人は「不満」の合計が65.0%となった。(図表10)

 また、同様に「転職に対する考え方」との関係を見ると、「感じる」人が転職するつもりはないとする割合が高く、「感じない」人では転職を検討している割合が高いという結果が見られた。(図表11)

■現在の職場内に、63.5%の人は、目指したい上司がいる

■現在の職場内に、63.5%の人は、目指したい上司がいる

 現在の職場内に、「目指したい上司、目標としたい人がいるか」を質問したところ、「いる」が63.5%、「いない」が36.5%となった。(図表12)

 「目標にしたい人の有無」と「能力・スキルの変化」「会社のビジョン・戦略と自分の仕事のつながり」との関係を見ると、目標にしたい人が「いる」方が、能力・スキルが「上がった」、つながりを「感じる」とする比率が高いという結果となった。(図表13、図表14)

 職場に「目標としたい人がいるか」が、「能力・スキルアップ」や「会社のビジョン・戦略とのつながり感」、ひいては、仕事や会社組織への満足、会社への定着に結びついていることが確認できた。

 

 

■若手社員の育成体制づくり

 一般社団法人日本能率協会 KAIKA研究所 所長 近田 高志氏は以下の通りコメントしている。

 今回の調査は、入社半年・二年目の若手社員を対象として、能力・スキルアップや、仕事や会社組織への満足度、あるいは将来の転職意向など、現在の心境や入社時点からの変化について質問した。

 若手社員の約半数が転職サイトに登録し、転職を検討ないし活動中にあるという結果は、今や、当然のことと受け止めるべきでだろう。新しい技術やビジネスモデルが出現し、世の中の変化のスピードが一層加速するとともに、人生100年時代とも言われる中にあって、会社に自分のキャリアを委ねるという考え方は、若手社員からすると、むしろリスクがあると言える。

 もはや、若手社員の辞書には「下積み」や「滅私奉公」といった文字は存在しない。上司や先輩社員には、そうした前提に立って、若手社員と向き合うことが求められているのではないだろうか。

 また、今回の調査では、職場に目標にしたい人がいる若手社員の人が、能力・スキルアップできており、会社のビジョンや戦略と自分の仕事がつながっていると感じ、そして、その結果、仕事や会社組織への満足度に結び付き、定着に影響しているということを、あらためて、確認することができた。

 昨今、上司と部下のコミュニケーションに関連して、年に2~3回程度の形式的な目標管理面談を見直して、より頻繁に1対1で対話を重ねる「1on1(ワン・オン・ワン)ミーティング」が注目されているが、上司・先輩社員には、対話を通じて、若手社員の成長や動機付けを図っていくことが一層重要となっている。

 また、管理職の人々とっても、業績達成とともに人材育成が重要な役割であるということを再確認して、職場をあげた若手社員の育成体制づくりを進めることが不可欠となる。

■まとめ

 今回の調査で、若手社員の約半数が転職を検討、または活動していることがわかった。

 若手社員定着のためには、上司や先輩社員を目標にして自身がスキルアップできる環境や、会社のビジョンに共感できることが求められているようだ。