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従業員エンゲージメントを向上させる鍵はなにか?従業員数が多い企業では、働き方改革で定番の施策でもエンゲージメントに繋がり辛いことが判明

2019.12.02

 株式会社リンクアンドモチベーション(本社:東京都中央区)の研究機関モチベーションエンジニアリング研究所は「従業員数と従業員エンゲージメントの関係」に関する調査実施し、その結果を公開した。

 これにより、従業員数が多い企業に必要とされる取り組みが明らかになった。従業員エンゲージメントを高める際の参考にしてほしい。

■調査背景

 中小ベンチャー企業と大企業では組織運営の在り方が異なってくる。このことは、これまで経験則で語られてきたが、定量的にその差分を示したものはなかった。

 今回は、従業員数と従業員エンゲージメントの関係を定量的に分析し、従業員数によって異なる組織運営の在り方を考察する。

■従業員数が多いほど、従業員エンゲージメントは低くなりやすい

■従業員数が多いほど、従業員エンゲージメントは低くなりやすい

従業員数とES・ERの関係
従業員数が1~100人、101~300人、301~1000人、1001人~の企業に分類し、各企業のES、ERの関係を(表1)、(グラフ1)に示す。この結果から、従業員数が多いほど、従業員エンゲージメントは低くなりやすいことがわかる。特に、ERがA~AAAの企業の比率は、従業員数が多いほど低くなっていることが明らかだ。

■ミドルマネジャーが部下の意欲や個性を引き出すことが重要になる

■ミドルマネジャーが部下の意欲や個性を引き出すことが重要になる

従業員数が多いほどESとの相関が高くなるエンゲージメントファクター
 エンゲージメントファクター16領域のうち、従業員数ごとの、ESと相関が高い10位を(表2)に示す。従業員数が多いほど、直属上司の部下に対する「情報収集」とESとの相関は高くなる一方で、「情報提供」は相関が低くなる。「情報収集」には、部下の業務状況や個性、意思の把握などが項目として設定されている。「情報提供」には、部下に顧客ニーズや部署の目標、役割分担を伝えることなどが項目として設定されている。
 
 この結果より、相対的に従業員数が多いほど、ミドルマネジャーが部下の意欲や個性を引き出すことが重要になると言える。

■「全社的な連帯感」「メンバーの目標達成意欲」「戦略目標への納得感」従業員の統合に向けた働きかけ

■「全社的な連帯感」「メンバーの目標達成意欲」「戦略目標への納得感」従業員の統合に向けた働きかけ

<従業員数別>ESと相関が高い10項目
 エンゲージメントファクター16領域に紐づく64項目のうち、従業員数ごとの、ESと相関が高い10項目を(表3)に示す。
 
 従業員数に関係なく、「全社的な連帯感」「メンバーの目標達成意欲」「戦略目標への納得感」はESと高い相関を示している。この結果から、従業員数に関係なく、従業員エンゲージメント向上には、従業員を統合するための働きかけが重要になると考えられる。

■「休日や就業時間」の満足度を高めても、従業員エンゲージメントはあまり高まらない

■「休日や就業時間」の満足度を高めても、従業員エンゲージメントはあまり高まらない

<従業員数別>ESと相関が低い10項目
同様に、従業員数ごとの、ESと相関が低い10項目を(表4)に示す。
 
 従業員数に関係なく、「業界内での影響力」「財務状態の健全性」「話題性や知名度」「研修制度の充実度」「IT環境の充実度」「休日や就業時間」はESと低い相関を示している。中でも、働き方改革において重要な要素と考えられている「休日や就業時間」は、従業員数が多いほど相関はやや高まってはいるが、従業員エンゲージメント向上にはあまり寄与しないと言える。

■現場責任者のコメント

 株式会社リンクアンドモチベーション 取締役 川内 正直氏は下記のようにコメントしている。

 昨今の働き方改革の流れを受け従業員エンゲージメントへの注目は増すばかりだが、どのようにして従業員エンゲージメントは高まっていくのだろうか。
 今回のレポートではミドルマネジャーの重要性が示唆された。しかし、ミドルマネジャーだけが重要であるわけではない。私たちは従業員エンゲージメントを考える際、組織を要素還元できない「協働システム」と捉えており、問題は「人」ではなく「間」に起こると考えている。マネジャーのリーダーシップだけではなく、メンバーのフォロワーシップの双方が重なり合うことこそが、従業員エンゲージメントを高めるためには重要だ。

 規模が大きくなると関係性が複雑になり多様な主観が存在する。しかし、変化をするためには小さな一つの変化を全体で認識することから始まる小さな変化を積み重ねていくことで、臨界点を越え、組織が変わり、従業員エンゲージメントは高まるのだと実感している。

■まとめ

 今回の調査結果から、従業員数が多い企業ほど、従業員エンゲージメントが低い傾向にあり、特に高ES企業の割合は、従業員数が多いほど目に見えて低くなっていることが明らかになった。従業員規模の拡大と共に、個人が埋没していき危機感を抱く従業員もおり、これには一人ひとりの個性と向き合い、意欲を引き出すミドルマネジャーがの存在が必要とされそうだ。

 また、規模に関係なく従業員エンゲージメントを高めるためには全社的な統合が重要と言える。従業員規模の拡大に伴って生まれる「複雑性」や「多様性」を取り込みつつ、全体方針と統合させるミドルマネジャーの重要性を改めて考える必要があるだろう。

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